近年、パーティーやイベントの会場で、1人で参加し1人で帰る女性をますます多く見かけるようになった。アメリカでライターとして活動している私は、街中でよく見るこの光景に、何か社会が変わりつつある予兆が詰まっているのではないかと、ずっと興味をもっていた。そして、美しく知性豊かでユーモアのある独身女性たちにインタビューをしながら、会話が必然的に政治からパートナーシップの話に移ったとき、彼女たちが皆、似たような意見を持っていることに気付いた。独身女性たちの多くは、やむを得ずフリーという立場に立たされているのではなく、そもそも相手を探していないという。
2025年6月、私はインスタグラムに1つの質問を投稿した。「この夏を1人で過ごす予定の女性はいる?」。すると、驚いたことに大量のDMが一瞬にして殺到した。そこで私は、世界中の女性たちと会話をしていくなかで「なぜ、独身を選ぶにいたったのか」という質問を問いかけた。そしてその結果、これは単なる一部の女性たちの間に起きた一時的な現象ではなく、変わりゆく社会の中で起きた1つのムーブメントであることが見えてきた。
世代間にみえた、大転換のタイミング
アメリカや世界における人々の問題意識や意見、傾向に関する調査を行うピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2023年に行った調査によると、50歳未満のアメリカ人女性の約半数が「充実した人生に、結婚は不可欠ではない」と答えている。
これは、それ以前の世代と比べると非常に大きな心境の変化だ。1960年には成人の約3分の2が結婚していた。しかし現在では、その数は半数にも満たない。そして、既婚者が減少するこの傾向は衰える気配を見せない。米モルガン・スタンレーは、2030年までに25歳〜44歳の女性の45%が独身になると予測している。つまり、過去の同等の調査結果と比較してみたとき、過去と現在の世代間に大きな転換点が見えてきたわけだ。これを単に”人類の危機”だと感じるのであれば、それはあなたが現代社会を注意深く見ていない証かもしれない。
人間関係療法士でポッドキャスト『Reimagining Love』のホスト、アレクサンドラ・ソロモン博士は「最も深い関係性が築かれる時というのは、誰かとのパートーナーシップの中で生まれるものではなく、パートナーシップ不在の時、つまり自己と完全に向き合っている時に築かれているのです」と明かす。「女性が不安や恐れを感じながらではなく、明確な意思から独身を選ぶ時、彼女たちはまったくもって孤立していません。むしろ統合しているのです。彼女たちは『他者が私を定義づけないとしたら、私とは誰なのか?』と問うているのです」。
私が話を聞いた女性たちは、年齢も人生における段階もまったく異なる人物たちだ。誰かと交際することから身を引いている理由も、最後の交際から何カ月・何年経ったかも、さまざまだった。だが、それによって得た「恩恵」として彼女たちがあげたものは、面白いことにほとんど違いがなかった。それは、自分という存在が明確になった喜び、そして平和で自由な毎日だという。
独身女性たちが明かす声
マイアミ在住のボイストレーナーで43歳のマーゴはこう述べる。「婚約中、決断は小さなものから大きなものまで、すべて”交渉”が必要だった。何を食べるか、どこへ旅行するか、Netflixで何を見るかもね。婚約を破棄するまで、私は自分がどれだけ多くのことを諦めていたかに気づかなかったけど、フリーになって徐々に、自分の自立性を取り戻していった。今は、何をするにも誰の許可もいらない生活。こんな自由な毎日に心から酔いしれてしまう」。
私たちは物心ついた時から、独身女性には何かが欠けているという物語を植え付けられてきた。だが、もし真実が逆なのだとしたら、どうだろう? 永遠の愛を求めて、果てしなくデートアプリをスワイプして運命の相手をジャッジする文化の中で、地に足を付けて現実と自分自身をしっかりと見つめているのは、むしろ自ら独身を選ぶ女性たちのほうかもしれない。 私たちは長いこと「結婚すれば、すべてを手に入れられる」と教えられてきたが、その「すべて」が何を意味するのかは決して問われなかった。ロマンティックな関係がデフォルトの中心にあった。「すべて」とは本当にすべてであって、いい意味で何もかもを手に出来るという意味とは程遠い現実が、そこには待っていたはずだ。
私たちは物心ついた時から、独身女性には何かが欠けているという物語を植え付けられてきた。でも、もし真実が逆なのだとしたら?
ファッションモデルから栄養士に転身した37歳のアリッサは、マッチングアプリから離れて3年が経つという。「独身者は選択肢がないと思われがち。でも実際、独身の私には驚くほどたくさんの選択肢があります。パートナーがいないことに関していえば、ただ単に、私が1人でいることから得られる喜びと張り合えるほどの人と出会っていないだけです」と彼女。その声に悲痛なニュアンスは一切なく、シンプルで明確だった。「そうはいっても本当は悲しいんでしょう、と思われがちですが、本当に今が1番人生で幸せ。キャリア、友人、自分のリズム、すべてがある。それらを全部手放すなんてあり得ません」。
自分が独身でいる理由には、正直であっていい
自分の内なるリズムを見つけ、受け入れるためには、独身でいる理由に正直になるよう、ソロモン博士は促す。「回避と選択には明確な違いがあります」と彼女。「その区別は、人間関係における自己認識です。デートを断るのは、自分が怖がっているから? それとも今はデートしたくないから?」。
私が話した女性の中には、破局や裏切りの結果、独身を選んだ人もいた。ほかには、つながりが消費のように感じられるデジタル時代に疲れ切ってしまったという人も。長年交際していたパートナーと破局したばかりで、また新たにデートを試みることへの感情的な疲労感から、独身を選んでいるという声もあった。
いかに困難な状況であっても、彼女たちは皆、自分自身のために孤独を選択したといえる。「痛みから生まれた選択が、同時に深く力強いものになることもあります」とソロモン博士。「独身を選ぶ理由は、成長するにつれて変化していくもの。痛みに対抗するための防御として独身を選んだ女性に”恥ずかしい”と感じて欲しくはありません。それは困難なことをより困難にしますから。今の痛みを正直に認めながら、成長と癒しに全力を注ぐ、それはとても素晴らしい選択肢です」。
メキシコ、トゥルム在住の作家で52歳のジェシカは、その理念を完璧に体現している。「私の最後の交際は2020年。破局後の私は、過去をすべて掘り起こして整理し、自分に正直になって、私を不健全な関係に留まらせていたパターンを振り返ってみることにしました。なぜ常に“恋愛関係にいないと不完全だ”と感じていたのか、そこから理解してみようと思ったのです。その結果、辛い破局を経験したことで、人生で初めて、”パートナーシップがない私も、完全体の私”と感じられるようになりました」と語った。
とはいえ、社会のお節介は簡単には終わらない。家族がそろったクリスマスや年末年始に感じる冷たい視線。見知らぬ人からの、余計なお世話ともいえるアドバイス。どこかから運命の王子さまが現れて”再生ボタン”を押してくれるその時まで、女性の人生は一時停止、もしくは”休憩中”扱いされてしまうかのような、社会の思い込み。
「私たち女性の価値は、恋愛関係のステータスと直接結びついているという社会の風潮は根強いです」と、テキサス州オースティン在住のソフトウェアデザイナーで28歳のライラは言う。「焦ってばかりのパートナー探しをやめて、その代わり自分自身の目的を見つけることを決意した結果、私の生活は大幅に改善しました。自分の会社を起こして収入を得るところまできて、大好きな友人との思い出に投資し、夢のような日々を送っています。古いマニュアルが『もうあなたもいい歳の女性なんだから、そろそろ、それらを手放すタイミングよ』と教えてくれているのだとしても、私には”いいえ、結構です”といった感じね」。
自分の目的を重視する新たな価値観
私が話をした女性の多くは、ロマンティックな関係を持つことに今もオープンだ。けれど、それが自分を小さく縮めることを意味するなら、欲しくない。そんなところだろう。パートナーシップのために自分の平和を犠牲にする必要なんてない、というのが彼女たちの考えだ。
これらの会話で最も印象に残ったのは、彼女たちがロマンティックな関係におけるパートナーの不在よりも、自分自身のために掲げる目的の存在を明確にしている点だった。自立や、充実感、彼女たちは明確にその目標に向かって自分磨きをしているように見えた。そして、外部からの承認に依存しない成熟した精神面を感じた。それはある意味、既婚者か独身であるかは関係ないようにも思う。女性たちは今、自分の人生とレガシーを築くため、時代の新たな転換点に立っている。そして今日、未来へ繋がる未知の扉をたたいているのかもしれない。
※この記事はoprahdailyからの翻訳をもとに、日本版『ハーパーズ バザー』が編集して掲載しています。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
<BAZAAR>
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