米独身女性の住宅購入

全米リアルター協会(NAR)によると、アメリカでは独身女性が住宅購入で男性を上回っている。

2024年、独身女性は住宅購入者全体の20%を占めた一方で、独身男性は8%だった。

Business Insiderでは、パートナーや配偶者なしで、自分で自分の家を購入した3人の独身女性に話を聞いた。
カーラ・コブレイロさん(33)は大学を出てから10年近く、自分の家を買うためにコツコツと貯金をしながら、両親と一緒に暮らしてきた。

「ハウスプア(家にお金をかけ過ぎて生活が苦しい状態)にもなりたくなかったし、経済的に苦労したくなかったんです」と広報の仕事をしているコブレイロさんはBusiness Insiderに語った。

「給料の高い仕事に就き、頭金をしっかり貯めて、緊急時の備えをしっかり作ってから… ここぞというタイミングを待っていたんです」

2022年、コブレイロさんはフロリダ州マイアミ郊外のダウンタウン・ドラルに広さ900平方フィート(約84平方メートル)のマンションを約40万ドル(約6270万円)で購入した。31歳、独身だった。

「当時はパートナーもいませんでしたが、それが買わない理由にはならないと思いました。前へ進むことにしたんです」

交際相手がいないことや結婚していないことを理由に、富を築き、アメリカン・ドリームを実現するための重要な節目の1つと考えられてきた”マイホームの購入”をあきらめない独身女性は、コブレイロさんだけではない。

全米リアルター協会(NAR)のデータ分析によると、1981年にデータを追跡し始めて以来、住宅購入において独身女性は一貫して独身男性を上回っている。

持ち家に自立を見出す独身女性

では、なぜ独身女性の方が統計的に、独身男性よりも住宅を購入する確率が高いのだろうか?

NARの会員・消費者調査の責任者であるブランディ・スノーデン(Brandi Snowden)氏は、これはライフスタイルの選択と女性特有の社会的役割によるところが大きいとBusiness Insiderに語った。

多くの独身女性が住宅を購入するのは、自立を望んだり、離婚を経験したり、子育てを担っているからだとスノーデン氏は説明した。

NARによると、独身女性の住宅購入者は一般的に独身男性よりも年齢が高く、女性の平均年齢(中央値)が60歳であるのに対し、男性は58歳だ。

「こうした購入者たちは離婚したばかりだったり、自分のためだけでなく子どもや両親のために住宅を購入することもある」とスノーデン氏は言う。

わたしにあるのは「自分とこの住宅ローンだけ」

配偶者なしでの住宅購入には、DINKs(共働き、子なし)世帯ではないため手狭なマンションに落ち着くといった、それなりの困難があるとコブレイロさんは話している。

連邦準備理事会(FRB)の家計金融調査(Survey of Consumer Finances)のデータによると、DINKsの純資産の中央値は20万ドル(約3130万円)を超えている。この経済的優位性のおかげで、彼らは余裕をもって住宅を購入したり、ボートや高級車といった贅沢品に可処分所得を費やすことができる。

ただ、女性の経済的、社会的自立が進む時代にあって、共働き世帯に経済的なメリットがあっても、自立した生活を選択する女性は少なくない。

コブレイロさんは30年のローンを組んでいて、毎月の返済額は2500ドル(約39万円)、さらにHOA費用(日本の分譲マンションにおける管理費や修繕積立金に類するもの)として1000ドル(約15万7000円)を支払っている。その全てがコブレイロさんの肩にかかっている。

「快適に暮らしていますが、解雇されたり、足を骨折したり、緊急事態に直面しても自分のことは自分でやらなければなりません」 とコブレイロさんは語った。

「友人にはいつも、わたしにあるのは『自分とこの住宅ローンだけよ』と言っているんです」

それでもコブレイロさんは、”1人で家を持つことのメリット”が”交際相手と一緒に購入するのを待つことのリスク”を上回ると考えている。

「恋人や結婚を待たずに家を買って良かったと思っています」とコブレイロさんは言う。

「将来を約束していない相手と家を持つのは、特にあとで別れた時に厄介なことになります。婚前契約のようなものもありません。売却をめぐって意見が合わなければ、面倒なことになりかねません」

婚前契約がなければ、共同所有もないと考える女性も

ニューヨーク在住のジェシカ・チェストラーさん(33)も、コブレイロさんと同じような考え方を持っている。

2022年、不動産会社ダグラス・エリマン(Douglas Elliman)のエージェントで、ビジネスオーナーでもあるチェストラーさんはウィリアムズバーグにある、寝室が3つあるマンションを325万ドル(約5億1000万円)で購入した。

家を持つことは自分の将来への投資であり、自分が”この人”と心を決めていない相手と一緒にそのリスクを背負いたくはないとチェストラーさんはBusiness Insiderに語った。

チェストラーさんは2022年、ウィリアムズバーグにあるこのマンションをひとりで購入した。

「誰かと一緒に家を購入する場合… 特に結婚していない場合は、考慮すべきことが明らかに多くなります」とチェストラーさんは言う。

「常に不安があります。別れたらどうなるのか、どうやって資産を分けるのか… 」

部屋のリノベーションもしたチェストラーさんは、ひとりで住宅を所有する最大のメリットは自分自身を頼りに、自分らしく生きる自由が得られることだと話している。

「わたしは自分のことだけ考えれば良かったんです」

「他の人の意見を気にする必要はありませんでした。 わたしはこのマンションが気に入っていたし、自分のお金のことも分かっていたし、うまくやっていける自信もありました。わたしにとって、その快適さがとても重要だったんです」

“王子様”はいらない

住宅を購入する独身女性の中には、交際相手がいても”指輪”を待たずに”住宅”で資産形成を始める人もいる。

不動産会社のエージェントであるエリエル・フォン・シェートさん(30)は、2月にアリゾナ州メサにある広さ2280平方フィート(約210平方メートル)のタウンハウスを連帯保証人なしで36万5000ドル(約5720万円)で購入した。

フォン・シェートさんには長く関係の続いている交際相手がいるものの、経済的な将来は自分でコントロールしたいと考えていた。

「多くの女性がわたしと同じように感じているのだと思います。自分の目標を達成するために、どうして誰かが助けてくれるのを待たなければならないのか、と」とフォン・シェートさんはBusiness Insiderに語った。

“自分ひとりで家を買う”というフォン・シェートさんの決断は、長い目で見れば報われるかもしれない。フォン・シェートさんが暮らしている建物の別の部屋は41万ドル(約6420万円)で売りに出されている。もしその価格で売れれば、フォン・シェートさんの家は1年で約3万5000ドル(約548万円)値上がりしたことになる。

エリエル・フォン・シェートさんは2月にタウンハウスを購入した。

「数年後にここを売却するかもしれないし、別の物件を買ってここを賃貸に出すかもしれません」とフォン・シェートさんは話した。

「わたしの長期的な目標は不動産ポートフォリオを構築し、残余利益を得ることで、自分は正しい道を歩んでいると感じています」

今のところ、フォン・シェートさんと交際相手はルームメイトのように暮らしていて、光熱費や住宅ローンといった生活にかかる費用を折半している。

これは互いにとってメリットのある状況だという。

「彼は特に気にしていないと思います。もう家主からあれはいい、これはダメと指図されることもありませんから」

<BUSINESS INSIDER>
アメリカでは住宅を購入する独身女性の割合が増加、独身男性を上回る —— 決断の理由を経験者に聞いた

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です