独身の養子縁組

「非婚(=結婚しない生き方)」を選んだ韓国の編集者ペク・ジソンさんは、2人の子どもと養子縁組をして家族になりました。独身のジソンさんが子どもを迎えるためにしなければいけなかったこととは。ジソンさん著『結婚も出産もせず親になりました』より紹介します。

長女を迎えるまでに必要だったこと

長女との養子縁組を希望してから数カ月間、何度も面談を受けた。身分証や家族関係を証明する書類をはじめ、犯罪経歴証明書、薬物依存症やアルコール依存症の検査を含む健康診断書、資産の内訳を証明する書類も提出した。

独身者は養育のための経済力があるかどうかが重要だといわれ、固定資産証明書や金融機関の残高証明書はもちろん、年金や保険の加入状況に関する書類、住宅請約総合貯蓄(韓国で新築分譲マンションを購入する際に必要な積立預金)の証明書まで洗いざらい提出した。その数年前に、ソウル大学近くのワンルームマンションを購入していたことは有利に働いた。会社でスピード出世して、年齢のわりに職級が高いという点も評価されたようだ。

なぜ結婚していないのか、男性嫌悪や男性蔑視はないかといった心理検査を受け、家族面談も2度ほど行われた。

両親には絶対に反対されるとわかっていたから、手続きがすべて終わるまで知らせなかった。姉は時間的に難しかったので、兄と妹が面談に来てくれた。兄はわたしのことを「子どもの頃から責任感が強くて信頼できる」と言い、妹は「自分も積極的に子育てに参加する」と言って、養子縁組の成立に大きな力添えをしてくれた。

養子を迎えるつもりだと明かす前から、きょうだいはきっとわたしを応援してくれるだろうと信じていた。心あたたかく、偏見や先入観を持たない彼らは、養子に迎える子どもに愛情をたっぷり注いでくれるだろうと思っていたし、実際そのとおりだった。

わたしのことをよく知っていて、社会的、経済的に安定した地位にある人の推薦書も必要だったので、前職と現職の同僚に依頼した。心のこもった彼らの推薦書が大きな力になった。とても感謝している。

数カ月にわたる書類審査と心理検査、家族面談、そして養親になるための研修を経て、わたしはついに長女を引き取ることができた。その後も、子どもの状態や家庭環境をチェックするために養子縁組機関の職員が何度も家にやってきた。そのたびにバタバタと家を片づけることになり、かなり緊張もしたけれど、養子の子どもが引き続き見守られているということに心強さを感じた。

子どもたちの「生みの親」

韓国において独身者が養子縁組できるようになったことを、わたしは2008年頃にネットで知った。韓国の保健福祉部は国内養子縁組を活性化させるために、2006年末に養親の資格条件から〝婚姻中であること〞という内容を削除した。

現行の「養子縁組特例法」施行規則には、養親の年齢について「25歳以上で、養子となる者との年齢差が60歳以内であること」という規定があるだけで、独身者に関する規定はない。ただし養子縁組機関のホームページには、養親が独身者の場合は「35歳以上で、養子縁組対象児との年齢差が50歳以下であれば、養子縁組が可能」と記載されている。

「養子縁組特例法」には「養親となる者は、一定の経済的水準、児童の福利に反しない職業を持ち、犯罪歴および薬物依存症の既往歴がないことなどの要件に符合しなければならず、家庭裁判所は養親となる人の養子縁組の動機と養育能力、その他の事情を総合的に考慮して養子縁組の可否を決める」という規定もある。養子縁組機関の社会福祉士は、「独身者が養子縁組を希望するときは、夫婦の場合より厳格に審査をする」と言っていた。

養子縁組機関は、娘たちの実親に「非婚者が養親になってもいいかどうか」を確認した。生みの父母がこれに同意したので、わたしは2人を養子に迎えることができた。

<東洋経済ONLINE>
独身で養子を迎えた彼女「親には言わなかった」訳

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