2040年は1/3が独身

近年日本では、生き方の多種多様化が広がりつつあり、生涯独身で「おひとりさま」として生きていく選択をする人も少なくありません。

このように現代の日本では「結婚すること、家族をもつこと=理想の生き方」と考える人が減少傾向にあり、高齢の未婚率も増加しつつあります。

本記事では2023年8月1日に公表された資料をもとに、増え続ける「おひとりさま」の実情や、将来のおひとりさま世帯の割合について解説していきます。

現代の「おひとりさま世帯」がどのくらい貯蓄を保有しているのかも解説しているので、あわせて参考にしてください。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

おひとりさまの実情。未婚者が考える独身の利点とは?

厚生労働省の発表した「令和5年版厚生労働白書」によると、男女ともに未婚率が、どの年齢階層においても上昇していることがわかります(グラフ1参照)。

【グラフ1】

出所:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」

とくに20歳代後半から30歳代後半においては、20〜30%も未婚率が上昇しており、「若いうちに結婚をしたい」と考える若年層が減っていることがうかがえます。

なお、結婚意思に関しては、「いずれ結婚するつもり」と考える未婚者割合が1990年代半ばでは男性が約85%程度、女性が約90%程度でした。

しかし、2021年のデータでは男性が81.4%、女性が84.3%と、結婚意思のない人が増えつつあることがわかります。

また、厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」の未婚者が考える独身生活の利点に関する調査データでは、「行動や生き方が自由」が男女ともに最多となりました。

さらに「家族を養う責任がなく、気楽」「住宅や環境の選択の幅が広い」といった回答が多いことから、ライフプランを考えるうえで、パートナーと過ごすよりもおひとりさまを選択する人が多いようにうかがえます。

おひとりさまの「結婚・家族」に対する考えが変化?

近年日本では、未婚者の割合が増加傾向にありますが、未婚者の結婚や家族に関する考え方にも変化が見られています。

厚生労働省の「令和5年版厚生労働白書」の未婚者の結婚や家族に関する調査データによると、「生涯を独身で過ごすというのは、 望ましい生き方ではない」という考えを支持する割合は、1992年は男性が65.3%、女性が57.6%でした。

しかし、2021年には、男女ともに上記の考えを支持する割合が減少しており、男性が51.1%、女性が39.3%となっています。

同様に「結婚したら子どもは持つべきだ」という考えを支持する割合も、1992年には男性が87.5%、女性で85.4%であったのに対して、2021年には男性で55.0%、女性で36.6%と大幅に低下しているのが見て取れます(グラフ2参照)。

【グラフ2】

出所:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」

男女ともに考えに大きな変化が見られますが、特に女性の「結婚・家族」に関する概念に変化が見られています。

上記の背景として、女性の社会進出が進んだことで自立する女性が増え、「結婚をして子どもを育てる」といった従来のライフプランに変化が見られるようになったのだとうかがえます。

生涯未婚のおひとりさまが増えている

ここまで、近年の男女の未婚率や、未婚者の価値観などについて解説してきましたが、未婚者の中には「一生結婚するつもりはない」と考える人も2000年代に入って増加傾向をみせています。

厚生労働省の「令和5年版厚生労働白書」によると、「一生結婚するつもりはない」と答えた未婚者は男性で17.3%、女性で14.6%となり、結婚意思がない人が増加傾向にあることがわかります(グラフ3参照)。

【グラフ3】

出所:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」

実際に、生涯独身を貫く「おひとりさま世帯」は増加しつつあり、50歳時の未婚割合は大幅に上昇しています。

【グラフ4】

出所:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」

男女ともにシニア世代の未婚率の割合が右肩上がりとなっていることから、今後もおひとりさま世帯の増加が見込まれます。

厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」の同調査では、2040年には50歳時の未婚割合は男性で29.5%、女性で18.7%になると予想しており、約3〜5人に1人が未婚のまま老後を迎える可能性があります。

おひとりさまの貯蓄事情は?

老後もおひとりさまとして生活するとなると、生活面や金銭面において自分一人で対応しなければいけないため「老後が不安」と感じる独身者も多いでしょう。

では、おひとりさま世帯の貯蓄事情はどのようになっているのでしょうか。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」によると、単身世帯の平均貯蓄額は下記のようになりました。

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに筆者作成

平均値は「全てのデータを足したあとにデータ数で割った値」となっており、極端に貯蓄額が多い人がいた場合は、平均値がその金額に寄ってしまう傾向にあります。

一方で中央値は、対象となるデータを小さい順に並べ中央にある値で、より実態に近いとされており、一般的な貯蓄額の実態を知りたい方は、中央値を参考にすることをおすすめします。

年代別に中央値をみてみると、50歳代までは平均貯蓄額が100万円以下となっており、60歳代においても300万円となっています。

また、金融資産を保有していない「金融資産非保有者」の割合が約3〜4割であることから、老後に向けた貯蓄が十分にできていない人が多いとうかがえます。

人によってライフプランや生活水準は異なりますが、現代の年金受給額だけで老後を過ごしていくのはハードルが高いと言われています。

また、高齢になると日々の生活消費支出だけでなく、病気やケガといった突然の支出も予想されます。

そうなった場合に、おひとりさまの場合は通院や買い物などを、タクシーや宅配サービスといったものに頼る必要があるため、よりお金がかかるでしょう。

「老後は一人で悠々自適な生活がしたい」と考えている方は、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自身の受け取れる年金受給額を把握し、足りない分が補填できるように今から準備をしておくことをおすすめします。

今のうちから老後の準備をしておこう

本記事では、増え続ける「おひとりさま」の実情や、将来のおひとりさま世帯の割合について解説していきました。

近年、おひとりさまとして過ごす未婚者が増加傾向にあり、日本人の「結婚・家族」に関する価値観が変化しつつあります。

男女ともに働きやすい社会に近づいている現代では自立する人が多く、結婚以外に生きがいや価値を見出す人が増えてきているのでしょう。

一方で、老後もおひとりさまとして過ごす場合は、金銭面や生活面で不安を抱える人も少なくありません。

おひとりさまとして老後を過ごすとなると、全て自分で行動・選択しなければいけなくなるため、まずは「年金受給額の確認」や「老後に不足する資金の準備」などをして、今から老後に備えておけると良いでしょう。

<LIMO>
2040年には3人に1人が「おひとりさま」として老後を過ごす?未婚者の割合・貯蓄事情も

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