老人ホームという選択

一人暮らしで、老後の面倒を見てくれる身内がいない場合、セカンドライフをどうするかは早めに考えておく必要があります。自宅に住み続けるとなれば、体の自由がきかなくなったとき、生活と介護のサービスを受けることになりますが、完璧な状態の支援はかなり難しくなります。安心して暮らすには老人ホームなどの施設に入居するのが望ましいでしょう。セカンドライフの考え方を、老人ホーム選びのコンシェルジュが回答します。※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。

今は元気ですが老いに不安を感じています。安心できる終活のアドバイスをお願いします。

【質 問】

独身、両親と兄姉は他界しています。姪甥に迷惑をかけず、いずれは心穏やかに老人ホームで暮らしたいと考えています。自宅マンションは売却するべきか、いつ頃、どんなホームに入居すれば安心できるでしょうか。(70代/男性)

【回 答】

子どものいない高齢者の老後は甥や姪がみるケースが多いのですが、迷惑をかけたくないと考えるなら元気なうちに老人ホームに入居するのがおすすめです。最期のときまで、すべてを任せられるホームはたくさんあります。自宅の売却は入居後に考えるほうが得策です。

元気な人が悠々自適に暮らせる老人ホーム

質問者様は今のところ持病はないということで、老人ホームへの入居はまだ先と考えているようです。しかし、自分好みのホームを選ぶなら元気なうちに入居先を決めましょう。重い疾患を抱えたり、ケガで歩けなくなったりすると、介護度の高い人の受け入れをしてくれる限られた高齢者施設を選ばざるを得なくなります。

健康な人が入居できる自立型ホームであれば、さまざまなサービスのついた高級マンションで暮らす感覚です。外出は自由(ホームによっては許可制の場合あり)ですから、現役で仕事をしながら入居することも可能です。

館内に理美容院、クリニック、カフェ、売店、温泉、スポーツジムなど、生活に必要な設備が準備されているところも多く、日常生活に困ることはありません。

介護度が高くなっても、看護が必要になっても安心

介護が必要になると退去しなければいけない自立型ホームもありますが、入居費用が高額な高級老人ホームの多くは最期の時まですべてを任せられる仕組みがつくられています。介護度が高くなったら介護型居室に移ることができたり、総合病院や近隣のクリニックと連携していたりと、いざというときの安心感は高くなります。

身寄りがない人の場合は、逝去後の葬儀や退去手続き、財産分与についても任せられる人を選定しておく必要があります。私物の片づけのために、遠い親戚が呼び出されて困惑するケースも時々見られます。逝去後のこまごました手続きまで、面倒を見てくれる老人ホームもあります。何をどこまでお願いしたいか希望を伝えて、可能かどうかを契約前に確認しておきましょう。

仲間がいるから不安を解消できる

「自分は一人で大丈夫」と自信を持っていた人が、体の衰えを感じ始めた途端に弱気になるというのはよくあること。恥ずかしく思わないでください。独居の高齢者の孤独死や、元気に見えていた有名人が突然命を落としたというようなニュースを聞くとなおさらです。不安から鬱、そして認知症へと移行してしまう人もいます。

その点、老人ホームであれば常に人のぬくもりを感じながら生活ができます。気の合う仲間とサークル活動を楽しんだり、ラウンジやカフェでおしゃべりしたり、季節ごとの行事を楽しんだりしていると、脳も活性化して認知症の予防にもなると言われています。

体調に大きな変化が現れたときも、自宅とは違い不安は少ないはずです。人工透析などの治療が始まる、酸素吸入をしなければならない、車いすの生活になった場合、自宅にいると大騒ぎになりますが、介護や看護が充実しているホームに入居していれば、万全なサポート体制でスムーズに支えてもらえます。

自宅を手放すタイミングは入居後半年を目安に

子どものいない人の場合、老人ホームに入居する時点で自宅は処分したいと望むケースが多くなります。資産は現金で残して相続しやすくするとか、全額寄付にと考える人もいます。考え方は間違っていないのですが、老人ホーム選びのプロからすると早まらないでほしいというのが本音です。

早急に売却しなければという思いが強いと、安価でも売れれば良いと考えてしまいがちですが、たとえ資金に余裕あったとしても、無駄にするのは考えものです。老人ホームに入居していても旅行に行ったり、外食をしたり、おしゃれをするなど、豊かな生活にはお金がかかります。それに、今後、何歳まで生き続けるかわかりません。病気で高度な治療を受けるかもしれません。いざというときの資金は残しておいて損はないのです。

また、老人ホームが自分に合うか合わないかは、入居後すぐにわかる人もいれば、慣れてきた3ヵ月目くらいで「ここは自分の好みとは違った」と気づく人もいます。帰る家がなければ諦めるしかないと我慢を続けなければなりませんが、戻る自宅があれば一時的に家に戻り、冷静になって考え直すことができます。どうしても終の棲家として納得できなければ、別のホームを探し直せばよいのです。3ヵ月を超えてから売却の準備を進め、入居後半年で売却が決まるのが理想です。

<幻冬舎ゴールドオンライン>
70代の独身男性「この先、ひとりで老いるのが不安…」元気なうちに老人ホームという選択はありか?

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です