‘22年に内閣府が発表した「少子化社会対策白書」によると、50歳時点で一度も結婚をしたことがない女性の割合=生涯未婚率は17.8%。もはや「結婚適齢期は25歳」という認識は、とうの昔に時代錯誤に。多様な生き方が尊重される今、近著に『ひとりで老いるということ』(SBクリエイティブ)もある作家・松原惇子さん(76)に「おひとりさま」の実情について聞きました。
一人で生きるいちばんいい面は、自由であることだと思います。私も「一人の人生を極めて楽しもう!」と自由にやってきました。
独身を貫くと決めている人もいますが、私は独身にこだわるというより、幸せになりたかった。夢や幸せを追い求めたかっただけなんです。それで、アパレル会社を立ち上げたり、アメリカに留学したり、いろいろなことに挑戦しては、どこか中途半端で諦めてしまうことばかり。35歳を過ぎて、いよいよ「何もない」現実に目を向けることに……。
これといった仕事を見つけられずお金もない、特別な才能はないけど会社に縛られたくもない。相手に合わせられないから結婚せず、家族もいない。自分がものすごく浮いた存在に感じました。
にっちもさっちもいかなくなった38歳のとき、友人の助言を受け親に援助してもらい家を購入。仕事もはっきりしていないのに家を買うなんて……完全なる敗北を認めるしかないという感覚です。ただ、この直後に、一人で生きることの大変さや、お金、老後の不安を書いた『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビューできました。書くことが忙しくなり、いつの間にか自立できてしまったのです。
50歳で「おひとりさま」の老後を応援するNPO法人「SSS(スリーエス)ネットワーク」も立ち上げました。「このまま一人を貫いて幸せに生きる」と確信を持って進んできましたが、それが崩れる。このときは「老い」をわかっていなかったのです。
「老いていくこと」は体感しないとわからない
50代は体力も活力もあり、世間的にもまだまだ現役なので怖いものなしです。友人たちと集まっても「一人でよかったよね」「最高」なんて盛り上がる。一方で、結婚している友人の子どもが大きくなって、家族を持つ喜びのようなものが見えてきて、自分には何かが欠けていると感じるようにもなりました。60代になると、少しずつ仕事が減ってきます。すると、支えてくれるものがないことに初めて気づく。まるで隙間風が通るように、たった一人のさみしさを体感しました。
さらに70代は70代の体になります。見かけは関係ないので、「いつまでも若いですね」なんていう慰めもまったく耳に入りません。自分の体に「老い」を見つけて、年をとったと実感するたびに、さみしさを感じていく。「本当のさみしさ」は老いてからくるんです。
だから若い人たちに言いたいのは、そのままで十分にすてきなんだから、もっと自信を持ってやりたいことをやったらいいってことですね。自分なりの目標を持って楽しむことも大事。それが自分を支えてくれる活力につながります。
そしてもうひとつ大切なのが、今のうちからパートナー候補を見つけておくことです。結婚や恋愛をしなくてもいいから、いい距離感で過ごせるような、人と人として付き合えるような関係がいい。私も60代くらいから探しておけばよかったなって思っています。
周囲を見ると、いい関係を築いている人たちは、学生時代や昔の職場で知り合ったとか、長く付き合っていることが多いです。結婚していても独り身になることがありますし、好みも変わるかもしれません。誰がパートナー候補になるかわからないものですよ。
ただ、やっぱり自立していることは大事。そうでないと、どこかで相手に頼りすぎてしまう。相手と同じように自分も食べられるっていうことが、いいお付き合いのポイントになると思います。
「好き」を見つければ何歳になっても幸せ
これまで生きてきてわかったのは、何を選ぼうが“もやもや”するのが人生ということ。一人でも、結婚していても「これでいいのかしら」と思うことがあるんです。それで、結婚して一人を手放しても、離婚して結婚を手放しても、結局もやもやする。人生には選択がつきもので、私はいまも自分の人生をどう締めくくるか迷っているところです。ただ、どんな選択をするにしても、目標やパートナー、なんでもいいので、好きなことが見つかっている人は何歳になっても幸せだと思います。
一人でいることの自由には、楽しさや気楽さとともに、孤独やさみしさも含まれています。この自由をまるっと愛していくしかなくて、持て余してしまうなら一人でいないほうがいい。一人の人は一人なんだから、その自由を思い切り満喫するしかありません!