日本の少子化問題に関連する4つの「ペナルティー」は、急速に進んでしまった「少子化」の複数の背景と、個々人や社会が直面している問題を浮き彫りにしていると思います。「50代・独身・子供なし」の視点でそれぞれを考察してみます。
1.チャイルドペナルティー
子どもを持つことで生じる経済的・時間的負担、キャリアへの影響などを指している「チャイルドペナルティー」。
現代社会では、子育てにかかる費用の増大やサポート不足が問題となっており、特に女性が「母親」としての役割を期待される場合、仕事との両立が困難になるケースが多いようです。実際組織にいた頃、同僚として、また管理職としてさまざまなパターンに直面してきました。産・育休を経て復帰してきても、前のように働けないことにジレンマを感じて退職するパターン。保育園の抽選がままならず、予定復帰のめどが立たないまま育休期間が過ぎてしまった…など。これは、働きながら子育てがしやすい環境整備がまだまだ足りていないことを示しています。
2.キャリアペナルティー
出産・育児でキャリアが中断したり、仕事の選択肢が狭まったりする問題です。
社会全体で柔軟な働き方やキャリア形成の多様性が推進されているとはいえ、現場ではまだ十分ではなく、子どもを持つことで昇進の機会を失う人も多いのが現実。管理職だった女性が産休を経た後は、本人が望む・望まないについて会社側から触れられることもなく、管理職への復帰も果たせない女性がいました。独身でキャリアを積んできた立場から見ると、これは非常に不公平に感じますし、改善が必要なポイントです。
3.ソーシャルペナルティー
独身や子どもを持たない選択に対する社会的な偏見やプレッシャー。
個人の選択や事情に対する理解が進んできたとはいえ、「結婚して子どもを持つのが当たり前」とする価値観が根深い社会では肩身が狭く感じることもあります。特に地方にはその傾向が強いようです。私自身も独身者として、組織に所属していた30-40代は妙なプレッシャーを経験することが幾度となくありました。他者の生き方を尊重する社会の変化が急務だと感じます。
4.アイデンティティーペナルティー
子どもを持つ・持たないことで自己アイデンティティが揺らぐ問題。
「母親である自分」や「子どもがいない自分」という社会的な立位置が、自分自身をどう見るかに大きく影響するのは事実です。特に日本に住む女性の場合、社会が求める役割や理想像と自分の現実との間で抱える並々なコンプレックスがあることが多いでしょう。私自身も、恋愛もうまくいかない、結婚もできない自分に対するコンプレックスがある一人であり、この問題の重さを痛感します。
これらのペナルティーは、多様な生き方が認められる社会を目指す上で取り組むべき課題だと感じます。少子化対策は単に子どもを増やすことを目指すだけでなく、個人が自分らしい生き方を選択できる社会の実現と深く結びついているはずです。
とくに当事者である女性一人ひとりが正直な気持ちで声を上げること。そしてそれを拾っていける社会になることが、社会全体の意識改革につながっていくー。そんな希望を抱いています。
<Terrace>
「50代・独身・子どもなし」が見た少子化社会の4つの壁