「公務員と結婚しなさい」「医師か弁護士と結婚しなさい」「年収1000万円以上の人と結婚しなさい」。もし母親に、こんな「呪いの言葉」をかけられたら……。『あなたにかけられた「呪い」のとき方』の著者で、スピリチュアル好きからの圧倒的支持をほこる八木龍平氏が、他人にかけられた「不信の呪い」を解く「呪い返し」の方法を伝授する。
「結婚しなさい」は「呪い」か?「助言」か?
母親が娘に対して「結婚しなさい」と迫ったとします。このとき、誰と結婚すべきか、迫る言葉にはいくつものパターンが考えられます。
呪いかそうでないかを見分けるために、「○○と結婚しなさい」をいくつか並べてみましょう。いずれも、私が実際に聞いたことのある例です。
「公務員と結婚しなさい」
「やさしい人と結婚しなさい」
「本当に好きな人と結婚しなさい」
「医師か弁護士と結婚しなさい」
「年収1000万円以上の人と結婚しなさい」
さて、どれが呪いの言葉で、どれが呪いではない助言でしょうか。
純粋な助言の見分け方
まず、次の2つは、呪いの言葉ではありません。純粋な助言です。
「やさしい人と結婚しなさい」
「本当に好きな人と結婚しなさい」
次の3つは、呪いの言葉です。もちろん、いずれも建前は“娘のためを思って”言っています。
「公務員と結婚しなさい」
「医師か弁護士と結婚しなさい」
「年収1000万円以上の人と結婚しなさい」
この2つのパターン、一体何が違うのでしょうか?
呪いじゃない助言は「主観的で精神的な条件」です。
呪いの言葉は「客観的で物理的な条件」です。
呪いじゃない純粋な助言は、あなたへの信頼が基本にあります。
「やさしい人」「本当に好きな人」かどうかは、あなたの主観が判断すること。
あなたが「やさしいな」「好きだな」と思う人と結婚してってことですから、あなたの主観で決めていいと言っていますよね。
そして、「やさしさ」や「好き」というのは、精神的なものです。
つまり、あなたの心や感性をもっと働かせようと促しているわけですから、「縛り付ける」の逆。あなたへの信頼がある言葉は、あなたの心や感性を解放しようとします。
あなたを縛る「不信の呪い」とは?
では、「客観的で物理的な条件」は、どうでしょうか。
「公務員」「医師か弁護士」「年収1000万円以上の人」かどうかは、「赤の他人」でも判断できます(まあ、確実に判断するなら、探偵に依頼しての身元調査が必要かもしれません)。
職業や年収は、客観的・物理的な条件ですから、結婚相手を選ぶ際に、子供の主観は完全無視している、ということ。
もし親御さんが身元調査をするような場合は、わが子の主観を信用していないだけでなく、結婚相手候補の方のことも、全く信用していません。相手の人柄やお互いの愛情など、精神的な部分をすべて無視です。
これは、人への不信が根本にある呪いのパターンです。
人への不信があるから、まず客観的・物理的な条件ありき、になるわけです。
「(職業・年収)と結婚しなさい」には、「人を信じるな」「あなたを信用していない」というメッセージが隠れているわけですね。
「私はあなたのことを信じていない」
「あなた自身の心や感性を信じるな」
「世の中の人間みんな信じるな」と。
そんな不信の世界にあなたを縛り付ける、「不信の呪い」です。
これは裏を返すと、呪いのメッセージを発信した人自身が、誰も信じていない、不信の世界の住人なわけです。ここから、次の公式が成り立ちます。
「呪う人」=「呪われている人」
不信の呪いにかかっていたら、誰と結婚しようと幸せにはなれないし、世の中に幸せな人は存在しないし、そもそも幸せの存在そのものを認めないくらいに無意識に思っているでしょう。
ちなみに「早く結婚しなさい」も、時間という客観的・物理的な条件で縛ろうとしていますから、これもやはり「不信の呪い」に含まれます。
「不信の呪い」を呪い返す方法
「不信の呪い」をかけられると、心がギュッと縮みます。心が何かできつく縛り付けられたような感覚になります。
この「不信の呪い」の呪い返しの方法をご紹介しましょう。それは、
「今、私が感じている感覚は、私の感覚ではない」
と心の中で宣言することです。
こんなプロセスで、呪い返しをしてみましょう。
「公務員と結婚しなさい」
↓(呪い返し!)↓
「……」
(苦しくて心がギュッと締め付けられる……。なるほど、今、自分が感じている感覚・感情が、この人の感覚・感情かあ)
(この感覚・感情は私のものではありません。キャンセル、キャンセル)
実際、これはあなたの感覚とは違います。「不信の呪い」をかけてくる人は、そもそもその人自身が、「不信の呪い」にどっぷりかかっているのです。
この「不信の呪い」への免疫力は、人との信頼関係を構築することで高まります。自分への信頼、他人への信頼、どちらでも構いません。もちろん両方でもいいです。
「感謝」は呪いを防ぐ最高の免疫力
信頼関係を構築する基本は、「感謝すること」「感謝されること」です。
感謝の習慣が呪いを防ぐ理由については、人間の欲求に関する研究を知ると理解できます。
人の欲求には「不満を減らす欲求」と「満足を増やす欲求」の2種類あり、両者は関心の方向性が全く異なります。
アメリカの臨床心理学者ハーズバーグによると、仕事の満足は「能力を発揮する」「感謝される」など仕事内容そのものから生じるのに対し、仕事の不満の出どころは「給料」や「作業条件」など、仕事の環境にありました。
つまり「満足=幸せ」は精神的なことから、「不満=不幸」は物理的(肉体的)なものからくるわけですね。
「不満=不幸」を減らしたからといって、「満足=幸せ」とはなりません。また「不満=不幸」があまりに大きいと、「満足=幸せ」を追求できません。
先に紹介した呪いの例「(職業・年収)と結婚しなさい」は、「不満=不幸」に焦点を当てた発言でした。このことから、呪いの免疫力は、精神的に満足する経験を重ねるほど高くなることがわかります。根本的には、自分がどんどん幸せになればいいし、周りもどんどん幸せになる応援をすればいいってことですね。
感謝すること・されることは、「満足=幸せ」を高めます。自身の「満足=幸せ」を高め、周りの「満足=幸せ」も高めます。
ですから、「呪いを防ぐ基本」は、「ありがとう」。
感謝したり、感謝されたりするほど、呪いから遠ざかります。
「不信の呪い」にどっぷりかかっている人の呪いを解くのは困難です。だからこそ、自分が不信の呪いにかからないこと、そして他人に不信の呪いを広げないことが対策の基本になります。