社会的つながりが途絶えてしまい、貧困に陥り、“孤立”する高齢者が増えている。気楽な「おひとりさま」ブームも今は昔。本格的な超高齢社会を迎え、孤立に陥ってしまう高齢者をどう支えていけばよいのか。
「おひとりさま」という言葉が新語・流行語大賞の候補になったのは、2005年。ひとりの時間を楽しむポジティブなイメージがあった。しかし、おひとりさまは、将来的に、少し間違えば「孤立」する可能性もある。
当時、60歳だったおひとりさまは、77歳で後期高齢者の仲間入りをしている。
高齢者に限ったことではないが、20年の国勢調査によると、1人世帯が00年には1291万1千世帯で全世帯の27.6%であったが、20年になると2115万1千世帯で全世帯の38%に増加し、その傾向はさらに強まっている。
孤立とは人との接触がない、頼る人がいないことを言う。孤立すると、鬱になりやすく、病気になっても誰も助けに来てくれない。
東京都健康長寿医療センター研究所の野中久美子研究員によると、高齢期に孤立するのは圧倒的に男性が多い。
かつての日本は、配偶者が社会的つながりの基盤になっている場合が多かった。そのため、今のシニア男性は配偶者がいるかいないかで高齢期に孤立する可能性が変わってくるという。退職すると会社との関係性がなくなり、それまでの人間関係がなくなる。配偶者が亡くなりショックのあまり、新たな関係を持ちたくないと孤立する人も少なくない。未婚の男性は、もともと地域の輪に入っていない人も多く、高齢期になる前から孤立する可能性があるという。
今のシニア女性は子育てなどで普段から地域と関係性がある人が多いが、現役世代の女性は働いている人も多く、単身の女性も増えている。地域の関係が薄くなっているため、今後は孤立する人が増えると予測する。
孤立問題には、あらゆる組織の協力が必要だ。
「会社や家族など、社会のさまざまな関係を持たない、ないしは持てない人は経済的な基盤をつくることが難しいため、貧困状態になり、その結果、さらに孤立に陥ると考えています」
孤立問題などについて、「日本の貧困問題を社会的に解決する」というミッションのもと、貧困、孤立などの問題に取り組んできたNPO法人自立生活サポートセンター・もやいの理事長・大西連さんは言う。
「経済的な支援をすれば貧困問題を解決できるかというと、そんな単純な問題ではないのです。社会的つながりを解決しない限り、貧困はなくなりません」
そこに目を向けなければ何も解決しないと、大西さんは語気を強める。そのためにもやいは、居場所の確保や社会参加への機会の提供などを行っている。
もやいは01年、野宿やホームレスの人がアパートを借りる際、連帯保証人がいないと入居できないため、連帯保証人を引き受けることから活動がスタートした。
友人や家族がいたとしても、孤立するケースもあるという。金銭トラブルだ。
「友人からお金を貸してほしいと頼まれたが、どうすればよいかという相談は多くあります。いろいろな人に金銭の要求をして人間関係を壊し孤立していくのです」と大西さん。
その場合は生活保護を使うよう話してくださいとアドバイスする。
「自分は友人から金銭の支援が受けられないと諦めてもらうことです。その上で私たちのような支援団体のことを知らせ、自分には何もできないことを伝えてください」と話す。
生活保護がもっと普通に使えるなら不幸なことは減ると強調する。
「生活保護は権利であり、誰もが使う可能性があります。生活が安定してお金を稼げるようになったら、納税をして返せばいいのです」(大西さん)
とにかく生活基盤を安定させることが第一で、そのための社会の制度をつくるべきだという。
「困窮や孤立は今の社会の縮図のように感じます。社会全体で困窮や孤立など、この国の在り方を国をはじめみんなで考えないといけない時期に来ていると、つくづく思います」
近所に孤立している可能性がありそうな人を見かけ、声をかけてあげたほうがいいのか迷っている人もいるだろう。
<AERA dot.>
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