親の生活費

親から「年金だけでは生活が苦しい」といわれれば、多くの子どもはサポートしようとするだろう。しかし、実態は「聞いている話」と少々違っているケースもあるようだ。簡単ではない「肉親への支援」の実情を見ていく。

50代独身会社員の娘に「生活が大変」と泣きつく70代母

「必死で生活を切り詰めて、本当にばかみたい…」

そういって自嘲気味に笑うのは、都内の中小企業に勤務する佐藤陽子さん(仮名・51歳)だ。佐藤さんは新卒で大手メーカーに就職したが、20代後半でストレスで体を壊して退職。関西の実家に戻り、アルバイトをしながら療養していたが、弟の結婚と近居が決まったことで「非正規・独身の姉がいると、お嫁さんが居心地の悪い思いをする」という理由から、家を出るよう促された。

陽子さんは学生時代の知り合いを頼って上京し、紹介された中小企業に契約社員として就職。その後、何度かの転職を経て、いまの会社に落ち着いた。

「給料の手取りは32万円。住まいは郊外のアパートで、友人との外食も控えて節約していますが、このインフレのなか、正直、本当にギリギリです。なぜなら…」

陽子さんは5年近くにわたり、母・スミエさん(仮名・77歳)へ毎月5万円ほどの仕送りを続けてきたのである。

「父が亡くなって5年。専業主婦だった母の収入は、月14万円の年金だけ。会えば〈将来が心配〉〈生活が大変〉としか言わなくて…」

「父の相続時、母は自分の老後のために必要だと主張して、自宅と預貯金1,000万円を相続しました。私も弟も、それには不満はなかったんです」

陽子さんは、そばで面倒を見られない後ろめたさから、母親に求められるまま仕送りをすることに。弟も普通の会社員だが、お嫁さんの両親と同居することになり、頼れないのだという。

「私だって自分の将来も自分の老後資金は心配です。それでも、親のためと思って…」

「お義姉さんには本当によくしてもらって…」「え?」

ある土曜日の午後、陽子さんのスマホに弟のお嫁さんから電話があった。母親が自宅で転倒し、念のため入院することになったというのである。

「お医者さんがいうには大したことはないそうなのですが、少し痛みがあるということで、念のため2、3日入院することになりました」

「連絡くださってありがとう。私、手伝いに行かなくて大丈夫?」

陽子さんがお嫁さんに気を使うと、お嫁さんから意外な言葉が飛び出した。

「普段から、お義母さんとお義姉さんには本当によくしてもらって…。申し訳ありません。今度、きちんとお礼を…」

「…え?」

話を適当に合わせて聞いてみると、甥姪たちへの教育費のサポートという名目で、母親と陽子さんから毎月5万円の援助がされているというではないか。

「私が母親の生活費として振り込んだお金、全部弟の子どもたちに流れていたようなんです…」

母を問い詰めるとまさかの逆切れ、理由は…

陽子さんは、母親の退院を見計らって電話をかけ、聞いた話について問い詰めた。すると、最初は言い訳をしていた母親が逆切れ。

「要するに、同居しているお嫁さんのご両親に張り合うため、母親がお金を渡しているらしいんです。自分のお小遣いから出すのなら〈勝手にすれば?〉ですけど、〈生活が苦しい〉といって私から取り上げたお金を使うのは許せません…」

「私だって、自分の生活が精いっぱい。老後のお金も心配なのに…」

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、親に仕送りをしている世帯は全体の1.9%。2022年の総世帯数5,431万世帯のうち、約100万世帯が親に仕送りをしていることになる。

世帯主の年齢別では50代が最も多く3.4%。20代世帯は3.1%、30代世帯は2.6%、40代世帯は3.0%、60代でも2.4%が仕送りをしている。

仕送り額の平均は月8万円。分布を見ると「月2万~4万円未満」が29.9%で最多、「4万~6万円未満」が20.4%と続く。「月10万円以上」という世帯も18.8%あり、全国で20万世帯近くが親へ10万円以上を仕送りしているのだ。

一方で、同令和5年調査によれば、65歳以上の単身高齢者831万人のうち、年間所得100万円未満は17万人弱、150万円未満に広げると35万人弱。退職金や貯蓄によって差はあるものの、子からの仕送りに頼らざるを得ない高齢者も少なくない。

とはいえ、佐藤さんの場合は事情が違うだろう。

高齢者の孤独や生活困窮は社会的課題であり、「子が親を支えるべき」という考えは依然として根強い。しかし現実には、家計に余裕がある40~50代は少なく、支援したくてもできない家庭は多い。

「毎月5万円の捻出がどれほど大変だったか。母にはまったくわからなかったのでしょうね」

陽子さんは、翌月から仕送りをやめるという。

<THE GOLD ONLINE>
許せません…50代独身会社員女性、年金月額14万円・70代母に身を削って毎月5万円仕送りも、偶然知った「まさかの使い道」に絶句

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