再独身者が集うNPO

配偶者と突然死別したり、離婚を余儀なくされたりして孤独を感じる人たちがいる。そんな境遇の人たち同士が思いを共有し、趣味を楽しむ全国的にも珍しいNPO法人が広島市内にある。

4月12日午後5時。広島市中区の会議室で法人が開いた「死別の方の集い」。40~80代の男女約10人が順番に、配偶者と別れた経験や、NPOの会員になって仲間や趣味が見つかったエピソードを詳しく語り始めた。

参加した40代の女性は1年前に夫と死別し、娘と2人での生活に悩みを抱えていた。終了後「周りの友人に自分の気持ちを理解してもらうことは難しいが、似た経験をし、理解してもらえる人たちに出会えて良かった」と話した。

NPO法人を立ち上げたのは、広島市西区のタクシー運転手、山田行利さん(75)。山田さんは1999年に妻を肺がんで亡くし、当時中高生3人の子どもたちと残された。「子どもを育てないといけない重圧と、恐ろしいほどの孤立感に襲われた」と振り返る。

2020年の国勢調査によると、配偶者と死別した男性の数は179万5000人で人口全体の3・3%、離別した男性の数は251万2000人で全体の4・7%を占める。一方、配偶者と死別した女性の数は827万2000人で全体の14・4%。離別した女性の数は392万9000人で全体の6・8%いる。

山田さんは妻が亡くなって1年近くがたち、気持ちが落ち着き始めたころ「自分と同じように再び独り身になりさみしい思いをしている人たちはたくさんいるのではないか」と考え始めた。再独身者の集まりとの意味を込めて「リシングルファミリー広島」と名付けた団体を2000年に設立し、その後NPO法人格を取得した。

現在の会員は、広島県を中心に約300人。料理教室やカラオケ会、誕生日会など自分の興味や関心のある活動に自由に参加できる。

メンバーからは「参加して良かった」との喜びの声が聞かれる。5年前に肺がんで妻を亡くした東広島市の67歳男性は「これまで料理を作ることは一切なかったが、会の料理教室に通ううちに上達して楽しくなった」と笑顔を見せていた。

将来的には再独身者の人たちと一緒に住むコミュニティースペース付きのマンションを設置する構想なども考えている。山田さんは「会を通じて新たな出会いを見つけてもらい、1人になってからの人生も楽しいということを感じてほしい」と話した。【井村陸】

<毎日新聞>
死別、離婚……再独身者が集うNPO 「人生の楽しさ感じて」

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