未婚化の進行が止まらないが、対策を考える上で重要なのは、結婚しなく(できなく)なっているのはどういう人かを吟味することだ。
総務省の『就業構造基本調査』のデータを使って、学歴、職業、従業地位、年収といった観点でグループ分けし、既婚率を計算することができる。男性の結果を見ると、低学歴よりも高学歴、非正規雇用よりも正規雇用、年収が低い群よりも高い群で既婚率は高い。なおかつ、以前と比べて差が開いている。
結婚している(できている)人は、「選ばれし人」になっているかのようだ。藤田孝典氏の新書『貧困世代』の帯には「結婚・出産なんてぜいたくだ」と書かれている。2016年の刊行だが、現在では本当にそうなっているのかもしれない。
都市部の子育て世帯の年収を見ると驚かされる。<図1>は、東京都内23区のデータをグラフにしたものだ。
おおむね、下が細く上が厚い「逆ピラミッド型」だ。年収1000万以上が46.8%で、2000万円以上も8.0%いる。この分布から中央値を計算すると977万円で、東大生の家庭よりも高い。結婚・出産の階層的閉鎖性が強まっていることの表れだろう。
「東京23区では、夫婦共稼ぎだと年収1000万円は普通では」という声もあるかもしれない。だが、都内23区の既婚女性(25~54歳)の半数弱はパートないしは無業で、上記のグラフの中には夫のみ就業の一馬力家庭も少なくないとみられる。
既婚男性の年収も上がっていて、都内23区の既婚男性(25~34歳)の年収中央値は、2007年では493万円だったのが2022年では577万円となっている。結婚期の若者全体の年収が減っているのとは反対だ。
これは、子育て費用が高い都市部に限ったことではない。25~34歳の既婚男性有業者の年収中央値を都道府県別に出し、3段階に塗り分けた地図にすると<図2>のようになる。
若い既婚男性の年収中央値が400万円を超える県は、2007年では10県だったが2022年では33県となっている。東京と神奈川は500万円超えだ。若者全体が貧しくなっているのとは裏腹に、結婚できている人の年収は上がっている。繰り返すが、結婚・出産の階層的閉鎖性の表れだ。
こうみると、少子化対策の政策が子育て世帯への支援のみに偏るのは間違いだと分かる。持たざる者から持てる者へと、公金を配分することにもなる。若者全体を支援の対象にしないと、未婚化・少子化への歯止めはかかりそうにない。
その要となるのは、「手取り」を増やすことだ。若年世帯の稼ぎの3割が税金等で持っていかれ、その残りで奨学金を返し、重い消費税を上乗せして日々の買い物をしなければならない状況では、結婚など念頭に置けなくなる。また、学校の学費も下げるべきだろう。奨学金という足かせをはめられた若者を減らすことができる。
こども家庭庁は、「こどもがいる家庭」だけを見ているようではいけない。
<Newsweek>
未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持たざる者」の階層化