おひとりさまの三つの準備

2024年6月4日、厚生労働省から「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」が公表されました。

統計によると、15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計を示す「合計特殊出生率」は1.2をマーク。前年の1.26よりも減少し、出生率も低下しています。

国をあげて少子化対策に力を入れている様子は見受けられるものの、数値としては歯止めがかかっていないようにも見受けられる状況です。

厚生労働省「令和5年版 厚生労働白書 (令和4年度厚生労働行政年次報告)―つながり・支え合いのある地域共生社」によると、2020年における単独世帯数は約2115万世帯で、単独世帯の割合は世帯総数の約4割を占めています。

かつては『サザエさん』のような大家族や『クレヨンしんちゃん』のような夫婦と子ども世帯がスタンダードとされることもありました。

しかし、将来的には「単独世帯」が基準になる時代が訪れるかもしれません。こうした流れの中で、おひとりさまを対象にしたサービスが増えています。

たとえば、長楽館 (京都)はアフタヌーンティーのおひとりさまプラン「1名様からのアフタヌーンティー」を期間限定で開催。また、クラブツーリズムは「おひとり参加限定の旅」を特集としてまとめています。

多くのおひとりさま対象商品やサービスが増えてきている昨今、おひとりさまを対象にした支援や政策が追いついていないのが現状と考えられます。

本記事では、未婚率の推移やおひとりさまが将来のために考えておくべきことを見ていきましょう。

1.男女ともに上昇傾向にある「未婚率」推移をチェック

厚生労働省「令和5年版 厚生労働白書 (令和4年度厚生労働行政年次報告)―つながり・支え合いのある地域共生社」から、年齢階級別の未婚割合の推移をみてみます。

年齢階級別の未婚割合の推移。2枚目以降では、未婚者の生涯の結婚意思を掲載。

年齢階級別の未婚割合の推移

出所:厚生労働省「令和5年版 厚生労働白書 (令和4年度厚生労働行政年次報告)つながり・支え合いのある地域共生社会」
1.1 2020年:年齢階級別未婚率(男性)
20~24歳:95.7%25~29歳:76.4%
30~34歳:51.8%
35~39歳:38.5%
40~44歳:32.2%
45~49歳:29.9%
50~54歳:26.6%

1.2 2020年:年齢階級別未婚率(女性)
20~24歳:93.0%
25~29歳:65.8%
30~34歳:38.5%
35~39歳:26.2%
40~44歳:21.3%
45~49歳:19.2%
50~54歳:16.5%

晩婚化がすすんでいると同時に、未婚者の割合が増加していることがわかります。
1980年、25~29歳の未婚率は男性が半数程度、女性については20%台でした。

一方、2020年における同年代の未婚率は男性が76.4%、女性が65.8%。未婚者が多数派となっています。
また、近年においては男性は30歳代前半でも既婚者よりも未婚者の方が多く、50歳代前後でも3割ほどが未婚です。

女性については30歳代から40歳代に入るまでは未婚者が3〜4割近くいますが、50歳代前半の時点で未婚率は1割台。50歳代の未婚女性は少数派といえるでしょう。

アラフィフ世代が30歳代前後の頃には、おひとりさま女性を描いたドラマが放送されたり、酒井順子『負け犬の遠吠え』(2003)のタイトルに含まれた「負け犬」が出版翌年、流行語大賞のトップテンに選ばれたりなど、話題になることもありました。

しかし、近年の若者は結婚を重要視しない傾向があり、今後はさらにミドル層以上の未婚者が増えると予想できます。

次の章では、同資料から未婚者の生涯の結婚意思をチェックしていきましょう。

2.近年、結婚に対する意識が大きく変わったのは2015年頃

続いて、同調査より「未婚者の生涯の結婚意思」を参照していきましょう。

未婚者の生涯の結婚意思の推移

出所:厚生労働省「令和5年版 厚生労働白書 (令和4年度厚生労働行政年次報告)つながり・支え合いのある地域共生社会」
2.1 2020年:未婚者の生涯の結婚意思(男性)
いずれ結婚するつもり:81.4%
一生結婚するつもりはない:17.3%
※「不詳」回答を除く

2.2 2020年:未婚者の生涯の結婚意思(女性)
いずれ結婚するつもり:84.3%
一生結婚するつもりはない:14.6%
※「不詳」回答を除く

「いずれ結婚するつもり」と回答した人が男女ともにもっとも多い結果になりました。
一方「生涯結婚するつもりはない」と回答した人は男性が17.3%、女性が14.6%をマーク。いずれも1割台の割合となっています。

また、2015年を機に「いずれ結婚するつもり」と回答した人が減り、「生涯結婚するつもりはない」と回答した人が大きく増えています。

とはいえ、世間で結婚離れと言われているわりには「生涯結婚するつもりはない」と断言している人は少ないといえるかもしれません。

次の章では、おひとりさまが今こそ考えておくべきことを解説していきます。

3.おひとりさまが将来困らないために考えておくべき3つのこととは

おひとりさまは将来的に増えていくと見込まれていますが、単独世帯を対象にした制度はあまり検討されていないのが現状といえるでしょう。

また、おひとりさまは将来的に思わぬトラブルに直面することも懸念されます。

ここでは、おひとりさまが将来困らないために、考えておくべき3つのことを確認していきましょう。

3.1 「身元保証人」を誰に頼むか考えておく

厚生労働省は身元保証人がいないことだけを理由に入院・入所を拒否しないように通知を発出(2018年) し、身寄りがない人のための入院支援ガイドラインを作成(2019年) しました。

とはいえ、現状は入院や施設入所の際に身元保証人を求める病院や施設がほとんどで、かつ身元保証人がいないことを理由に断られたケースもあるようです。

総務省「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)-入院、入所の支援事例を中心として 〔調査結果の公表〕」は、身元保証人が用意できない場合の対応についての調査結果を公表しています。

身元保証人が用意できない場合の対応

出所:総務省「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)-入院、入所の支援事例を中心として 〔調査結果の公表〕」をもとに筆者が作成

身元保証人のいない人が入院・入所する際の厳しい現実がうかがえます。
「成年後見制度」や「身元保証会社」について調べておいたり、おひとりさまの友人間で助け合いを約束したりしておくことをおすすめします。

3.2 「任意後見制度」などを活用し、老後のことを決めておく

子どものいる人は、将来自分がどのような介護を受けたいのか伝えることも可能でしょう。

また、我が子が自分の性格や好みを把握してくれていれば、自分に合った介護サービスや施設を探してくれるかもしれません。

一方、おひとりさまの場合、老後はどのように暮らしたいかや、どういった施設に入居したいかなどを伝えておける人はなかなかいないかと思われます。

また、判断力が衰えた際には、財産や不動産の管理も問題になってくるでしょう。

大切なことを決められなくなる前に「任意後見制度」などを活用し、あらかじめ決めておくのがおすすめです。

この制度を活用すれば不動産や預貯金の管理を事前に決めたとおりに行ってもらえたり、介護サービスや施設入所の契約をスムーズに行えるようになったりします。

ただし、状況というものは変わるものなので、すべて決めたとおりになるという保証はありません。

3.3 なんらかのかたちで社会や人とつながるコミュニティをもつ

単身で暮らす高齢者は変化や異変に気づいてもらいにくいため、福祉サービスへのアクセスが遅れるケースもあります。

こうした事態を防ぐためにもデイサービスや訪問介護サービス、配食サービスを積極的に利用したり、習い事や地域コミュニティに参加したりすることをおすすめします。

週に何度か、1回につき数分でもかかわる人がいれば異変に気づいてもらいやすくなったり、場合によっては自宅まで様子を見に来てくれたりする可能性が高まると言えるでしょう。

4.まとめにかえて

おひとりさまの中には人間関係にとらわれず、自由気ままに生きたいと考える人は多いと見てとれます。

厚生労働省の調査結果では「行動や生き方が自由」が男女ともに多くの回答を集めました。また、同調査からは「家族を養う責任がなく、気楽」と考える人が年々増加傾向にあることが読み取れます。

とはいえ、何かあった際に頼りになるのが他者の存在。現代社会はおひとりさまでも十分に生きていけますが、単身世帯の高齢者や病気のおひとりさまには厳しい側面もあります。

さまざまなパターンを予想し、いくつかの対応策を決めておくことをおすすめします。

<LIMO>
未婚率は年々増加傾向に…今こそ考えておきたい「おひとりさま」の抱える問題点