独身・子供いない人の”老後”

結婚しても子どもをもたない夫婦、いわゆる「おふたりさま」が増えている。

共働きが多く経済的に豊か、仲よし夫婦が多いなどのメリットはあるものの、一方で「老後に頼れる子どもがいない」という不安や心配がある。

そんな「おふたりさまの老後」の盲点を明らかにし、不安や心配ごとをクリアしようと上梓されたのが『「おふたりさまの老後」は準備が10割』だ。

著者は「相続と供養に精通する終活の専門家」として多くの人の終活サポートを経験してきた松尾拓也氏。北海道で墓石店を営むかたわら、行政書士、ファイナンシャル・プランナー、家族信託専門士、相続診断士など、さまざまな資格をもつ。

その松尾氏が、高齢になり病院への入院、高齢者施設への入居時などに必要となる「身元保証人」について解説する。

認知症で困るのは「本人確認」が必要な手続き

「老後はお金さえあれば安心」

そう考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、じつはそういうわけにはいきません。
年をとれば病気になったり、自立した生活がままならなくなったりすることもあります。
病院に入院する、高齢者施設に入所するといった際には、「身元保証人」が必要になるのです。

身元保証人は、その人が本人であることや社会的に信頼がおける人物であることを保証し、何かあったときには本人の代わりに責任を負うという役目があります。

一般的に、高齢者の場合は本人の子どもが身元保証人になりますが、

・独身で子どもがいない人
・結婚しているが子どもがいない人
・子どもはいるが、疎遠であったり、海外住まいであったりして頼れない人

こういった人も増えています。
高齢になり身元保証人が必要なのに、頼れる身内がいない。そうなると、病院への入院や施設への入居時に困ったことになるのです。

ではいったい、どうすればいいのでしょうか?

身元保証人の役割は、具体的には次のようなものです。

【高齢者施設への入所の場合】
●入所時および退去時の書類に署名する
●月額の費用支払いを保証する
●介護サービスや物品購入に対する同意を行う
●緊急時の連絡を受ける
●退去時の費用精算、原状回復と残置物(残された家財道具や衣服等)の処分を行う
【病院への入院の場合】
●入院費の支払いを保証する
●緊急時の連絡を受ける
●本人の意思が確認できない場合、代わりに治療方針を決定する

このように、いざというときに対応できる本人以外による保証が求められるわけです。

「配偶者」は身元保証人になれる?

子どものいないおふたりさま夫婦の場合など、配偶者が身元保証人になることもできます。

しかし、施設や病院側に「身元保証人は本人と生計が異なること」などというルールがあれば、配偶者が身元保証人になることはできません。
また、夫婦そろって高齢であるため「別の方にお願いしてください」と言われてしまうケースもあります。

では、子どもや配偶者に頼れない場合、誰に頼めばいいのでしょう。
子どもがいない人の場合、次のようなケースが考えられます。

●家族・親族

兄弟姉妹、甥・姪やいとこなどの親族に身元保証人を頼むケースです。
ただし、関係性によっては頼みにくかったり、話がうまく進まなかったり、あるいは途中で関係性がこじれてしまったりするケースも見聞きします。
兄弟姉妹の場合はお互いに高齢であるため、配偶者と同様「別の方にお願いしてください」と言われるケースもあります。

●友人・知人

身元保証をお願いする家族や親族がいない場合、友人や知人に頼むケースもあります。
しかし、家賃などの支払いを保証し、いざというときの後始末までお願いすることになるので、他人にお願いするには気が引けるのではないでしょうか。
「サービス会社」や「士業事務所」という選択肢もある
家族・親族、友人などにも頼みにくいという場合は、「身元保証サービス」の利用が考えられます。

サービスを提供しているのは、次のような事業者です。

【身元保証サービス、死後事務サービスなどを行っている事業者の例】
①民間企業
②一般社団法人やNPO法人
③弁護士や司法書士、行政書士などの士業事務所

長生きする可能性や、自分が亡くなった後のことも含めてお願いするというサービスの性質上、やはり事業者の「信頼性」を重視することが大切といえるでしょう。

また、士業事務所の場合は、地域密着で元来遺言執行や死後事務などを取り扱っていた事務所が身元保証も行っているケースが多く、そういった意味では安心感があるのではないかと思います。

最近では銀行や郵便局、鉄道系や流通系の民間企業など、終活事業に力を注ぐ企業も増えてきました。
少子高齢化が進み、おひとりさま、おふたりさまで老後を迎える人が増えることが予想されます。

今後このようなサービスはますます充実していくことが考えられます。

「元気なうちに」準備をはじめることが大切

ちなみに、病院や施設で本人が死亡した際には、身柄を引き取るとともに未払い費用の精算を行います。
このため、家族や親族以外の事業者に身元保証をお願いする場合には、

●死後の事務委任について
●いざというときの医療行為についての希望

についても、別途準備をしておくことが望ましいです。
自分に必要なサービス、料金や条件など比べながら、元気なうちに検討をはじめることをおすすめします。
子どものいる人、いない人にかぎらず、老後を安心して暮らすためには「準備」がとても大切です。

老後の準備は「老後資金を貯める」だけではありません。
今回紹介した身元保証人や、もしものときの手続きなどまでイメージして、備えておくことを強くおすすめします。

<東洋経済ONLINE>
「独身・子供いない人の”老後”」何の準備が必要か

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