シングルハラスメント

近年は「パワハラ」や「セクハラ」だけではなく、「カスハラ」に「モラハラ」に「マタハラ」など、たくさんのハラスメントが話題になっている。そんななかで「シンハラ」をご存知だろうか? これはシングルハラスメントの略で、独身であることを理由に嫌味や暴言を吐かれたり、理不尽な扱いを受けたりすること。

「シングルハラスメント! まさに私は以前の職場でそれを受けていました!」と声を荒げて言うのは、沼田美穂さん(37歳・仮名)だ。いったい、何があったのか?

職場の扱いで独身と既婚者子持ちの不公平感が募る…

彼女は現在、IT系企業で派遣社員として働きながら、休日は推し活に費やし、充実した日々を過ごしている。しかし転職前の職場が「地獄だった」と眉間にしわを寄せる。

「そこは、とにかく女性の社員は“結婚していて子供がいる人”が優先される職場でした。まあ、子持ちの社員に優しい職場はそれはそれで良いのでしょうが、私を含めて未婚の女性にとっては地獄以外のなんでもなかった」

沼田さんは社員の休日出勤などを含めたシフト管理をしていたというが、「職場の空気的に、独身と既婚者子持ちで不公平感がすごい」と漏らす。

「私が推しのライブがあるから休もうとしたら、子持ちの子が『その日、私も子供と遊びに行く約束しちゃったから休みたい』というんです。

上司からありえないシンハラ発言

「子持ちの子は、子供の体調不良とかで早退・遅刻するのも日常茶飯事。それは仕方がないことだと思いますけど、遊びに行く約束ならば、こっちは年に1回しかない推しのライブに行きたい。それで今回は譲ってくださいとお願いして、渋々OKしてくれたのですが……」

翌日、上司に呼び出された沼田さんは、とんでもない発言を浴びせられたという。

「いきなり『君さぁ、結婚してる人が羨ましいのはわかるけど、休みくらい譲ってあげなさいよ。子供が可哀想でしょ』といわれたんです。いつも彼女たちの都合を聞いているし、年に1回くらい私を優先させてくれと伝えると『推し活とかくだらない。婚活しなさい』と返されました」

給料は同じなのに仕事量は1.5倍

そもそも沼田さんは結婚願望がなく、みずから独身の生き方を選んでいる。そのため、結婚していないことを突っ込まれるのも「癇に障る」と話す。

「上司たちは古い考えの人たちなので、女の幸せ=結婚・出産なんです。職場の先輩も実は妊活していたんですが、なかなか授からず、『君には母親の気持ちはわからないからね』と言われたことがきっかけで退社していきました。本当にひどいんです」

また沼田さんは給料面でも不満があったという。

「同期の既婚子持ちの女性と役職も給料も一緒。ただ、仕事量としては、私は彼女の1.5倍はこなしていると思います(苦笑)。でも会社的には、それが当たり前。彼女は産休も育休もフルに使って、なおかつ復職しても元のポジションに戻って減給もなし。逆に言えば、既婚の子持ち女性にはかなりいい職場でした」

沼田さんの月収は手取りで約35万円。給料の良さだけが励みだったが、ある上司の一言で限界を迎える。

★退職を決意「この会社ダメだわ」

「私だけではなく、部下の未婚女性にも風当たりが強かったのでフォローをしたら『お前らみんなお母さんから生まれてきたんだろう、お母さんを大事にしろよ!』と怒鳴られたんです。あ、もうこの会社ダメだわって思って。翌日、退職届を出しました」

ハラスメント発言を続けていた上司たちは、沼田さんの急な退職に大慌て。「なぜ急に?」「引き継ぎはどうするんだ?」「辞めないで」などとすり寄ってきたという。

「もう辞めると決めたらスッキリしちゃったので、今までの仕返しじゃないですけど、有休をすべて消化しました。私が辞めたら誰が子持ち既婚者のフォローをするのか知りませんが、少しは私の気持ちがわかってくれればいいなって」

あえて人間関係が希薄な職場に転職

転職後は休みが取りやすく、職場の人間関係が希薄なところがいいと派遣会社に登録した。

「給料が下がってしまいましたが、今までのスキルを買ってくれているし、何より1ヶ月前に言えば、絶対に休みが取れるので」

以前の職場からは、いまだに「戻ってきてほしい」という連絡がくるが「絶対に戻らない」と沼田さんは言う。

「私の場合は好きで独身を貫いていますが、もしも婚活を諦めた女性だったらキツいですよね。もっと発言には慎重になってもらいたいです」

<月刊SAP!>
給料は同じで業務量は1.5倍「独身と既婚者子持ちで不公平感がすごい」職場で上司の無神経な発言にア然

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