死ぬまでにやりたいことリスト

SNSで「#死ぬまでにやりたいこと」と入れると、様々なものが出てくる。
例えば、「セゾン暮らしの大研究」では、「死ぬまでにやりたい100のリスト」の具体的な作り方と、実際に作った方のリスト例も紹介している。

「好きな人に会って告白する」
「素敵な人に出会って結婚する」
「理想体重になる」
「葉のホワイトニングをする」
「株で年間100万の利益と得る」
「出世する」
「家族でハワイ旅行」
「オーロラを見に行く」
「バンジージャンプ」

具体的な「やりたいこと」がずらりと上がるが、「バンジージャンプ」は、他のサイトや個人のブログでも多く見られた。

今年9月に発売となった漫画『生きるのがしんどい女が「死ぬまでにやりたいことリスト」を消化していく話』(タワシ/KADOKAWA)の主人公 多和志田たわ子さんも、リストの頭に「スカイダイビング」と並べて、「バンジージャンプ」を挙げた一人である。

生きるのがしんどい女が「死ぬまでにやりたいことリスト」を消化していく話』(タワシ 著 / KADOKAWA)

35歳独身、ほぼ無職、友達ナシ、頼れる実家ナシ、働く気力ナシのイラストレーター(ほとんど仕事してないので、貯金を切り崩して生活している、とある)の多和志田たわ子さんは、実は「もう死にたい」という思いを抱えるひきこもりなのだが、生きづらさにあらがおうと、あえて「やりたいことリスト」を作る。
なぜ、ひきこもりながらも、チャレンジングなプランを実行しようと思ったのか。

「もうしにたい」自虐ネタに癒される

たわ子さんの口癖は「孟子が2体で孟子2体(もうしにたい)……」。
あまりにも暗いと感じるかもしれないが、SNSでは「リアルに考えたら結構辛いことなのに、ダジャレと可愛いキャラのおかげか癒される」「虚無な状態もゆるキャラなどでポップにかわいく描かれて、気楽に読める。それでいて体験する内容はハード。このギャップが面白い」と、自虐をくすりと笑えるネタに共感が集まる。

また漫画のあちこちに出てくる「今を大事にしよウサギ」「まぶしいたけ」「ねむタイツ」「やりたくナイルワニ」などのダジャレキャラは、タワシさんのツイッター(X)にも登場し、「生きていきまショートケーキ」や「一緒にがんばロールケーキ」などと、共感を寄せるフォロワーたちを励ます。

だが漫画の一番の魅力は、タイトルにある「死ぬまでにやりたいことリスト」だ。
「自分はウンコ以外何も生み出せない、1ミリも社会の役に立っていない、何もしたくないし、未来が見えない」と言っている人間が自らやりたいことをリストにし、実行してしまうのだ。

20代たわ子さんの「死ぬまでにやりたいこと」

実はたわ子さんは、天真爛漫だった20代の頃にも「死ぬまでにやりたいこと」を考えている。

・どっかの国に留学して、英語ペラペラになりたい
・どっかの国に住んで、なんかすごい経験をしたい
・世界一周して本を出版して印税生活をしたい

かなりアクティブである。
結局20代のタワシさんは、「めんどくさいから」「その気になれば行けるっしょ」と行動には起こさなかった。人間は、いつでもできる、いつでも行けると思う時には、かえってやらないものだ。

けれども35歳のたわ子さんは違った。
「永遠に寝ていたい」と後ろ向きになりそうな気持ちと闘いながら、ゆるキャラたちに背中を押され、やりたいことリストを作る。
最初にたわ子さんが書いたもの、それがこちらだ。

・スカイダイビング
・バンジージャンプ
・断食道場
・滝行
・世界一甘いお菓子を食べる
・激辛ラーメンを食べる
・家から海まで歩いてみる
・友達をつくる

スカイダイビングに滝行、海まで歩いてみる(たわ子さんの家は、まったく海沿いではない!)……
こんなにもアクティブなことを「やりたい」と書き出すタワシさんは、なぜ「孟子2体」に取りつかれてしまったのだろう。

著者のタワシさんにインタビューした。

孟子はいつから現れるようになったのか

――本書に何度も登場する「孟子が2体…」。これがタワシさんの前に現れるようになったのはいつ頃からのことでしょうか。
また、なにかきっかけはありましたか。

「『孟子二体』という気持ちはうっすらと20年くらい抱えていましたが、コロナ禍でどこにも行けない何もできない未来が不安という状態の時に強く現れるようになりました」

2021年10月に発表されたロイター通信によれば「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により不安障害とうつ病が特に女性と若年層の間で増加したことが、英医学誌ランセットに8日掲載された研究で分かった」とある。不安障害が7600万人、うつ病が5300万人それぞれ増加したのだという。
コロナ禍で不安を感じ、うつの症状が出たのは、実は特別なことではない。

――主人公 多和志田たわ子さんは、「働く気力もない」「何もしたくない」「未来が見えない」「もうしにたい」とネガティブなことばかり考えているように見えますが、漫画に登場するキャラクターはかわいかったり、ほのぼのしていたり、ギャグがきいていたりと、とてもポジティブなイメージです。
著者 タワシさんとたわ子さんは同一人物なのでしょうか?

「同じ部分もありますが違う部分もあるので、同一人物というよりは分身のような感じです」

漫画の主人公 多和志田たわ子さんは、著者のタワシさんの思いを表現してくれる分身であり、タワシさんが実際に体験したことを伝える伝達者でもあった。

コロナ禍でどこにも行けず、何もできないことに不安を抱え、死への誘惑にあらがうため「やりたいことリスト」を作ったタワシさんの心の声は、試し読み漫画でお伝えする。

<FRAU>
「もうしにたい」35歳独身、ほぼ無職、友達なしの女性が「死ぬまでにやりたいこと」

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