独身中年男性の不安

最近もまた「独身中年男性は狂う説」がネットをにぎわせていた。最初にブログでこういった内容を書いた男性は35歳、身長体重と合わせて年収500万、資産400万ほどと自らのスペックを紹介したのち、「正気と体力が残っているうちに書き記す」として、自分がいかにくたびれてきたか、趣味にも興味がわかなくなったと綴っている。

独身中年男性にのしかかる不安とプレッシャー

それを読むと、うつ症状が出ているのではないかと思われても不思議はない状態。実際、読んだ人たちも「早く心療内科に行ったほうがいい」とアドバイスを送っている。

一方で、そのブログを読んだ同世代の独身男性たちからは「わかる」という声が続出。「今は楽しい。でも将来が不安すぎる。このまま結婚もせず、特に親しい友人もいないまま老いていくのか」「その前に狂うわ」と絶望的な意見が並んだ。

2022年末あたりから、男女問わず「独身中年は気が狂う」話はときどき話題になっていた。ロスジェネ世代の姉が独身のまま実家で暮らし、ぬいぐるみを持って観光地に行っては一緒に写真をとっている。姉が狂いかけているようにしか見えない……といった話もあった。

「結婚して子どもをもって大人になれ」

それは確かに正論なのかもしれない。親になってこそ知る、人としての喜怒哀楽があるだろう。人はそうやって大人になってきたのかもしれない。

だが今の時代、結婚したって幸せになるとは限らない、いらぬ我慢をする必要もないという論もある。誰かのための人生ではないのだから、本人がよければそれでよしとする声も多い。

そしてなぜか、こういった批判は女性より男性が俎上にあがりがちだ。

冒頭に紹介したブログの男性も、誰かに言われたわけではないだろうが、自分自身が「男たるもの」というプレッシャーから抜けられないようだ。ことこまかに自分のエネルギー低下を嘆いている。婚活にも疲れ、今さらもっと稼ぎを大きくするのも無理。独身男性は社会的信用もない。だから人生から降りたい、こんなふうになるなよと結んでいる。

自らの価値を高め、這い上がった人生

人生、こんなはずじゃなかったということは多々ある。現実と今の自分とをどう折り合いつけて生きていくのかは誰にとっても大問題だ。

「それでも頑張っていれば、何かいいことがある。そう思いたいですよね」

タイガさん(40歳)はそう言う。彼は大卒後、大企業に就職したものの人間関係に疲れて3年で退職。その後は疲れた心を抱え、ときに心療内科に救いを求めながらアルバイトで食いつないでいた。同じような境遇の人とネットでつながり、励まし合って生きてきたという。30歳になったころ、ネットで親しくなった友人が、ある国家資格に合格、就職できたと声を弾ませて電話をかけてきた。

「妬みましたよ。自分だけ抜け駆けしやがってと(笑)。でも考えたら、彼はアルバイトをしながらコツコツ勉強していた。僕はバイトがきつい、心がついていかないと言いながら何もしなかった。結局、がんばった人が生き残るんだとよくわかりました。それで妬むのをやめて、僕も勉強を始めたんです。アルバイトではなく派遣社員となり、その後、契約社員となった。そしてコツコツがんばっていた勉強で会社に認められて、35歳でようやく正社員になりました。前の会社を辞めてから10年、家賃が払えないからシェアハウスに住んだこともあったし、そこでの人間関係に悩んだこともあった。でも正社員になって、さらにまじめに仕事をしていたら、上司が認めてくれるようになった。僕が人間関係の築き方が下手だとわかってもくれて、『きみのような人が、いざというとき頼りになるんだ』と言ってくれた。人間関係は下手でもいい、きみは実直で嘘をつかない。それが大事だ、と。うれしかったですねえ」

恋愛ベタでもあるので、いまだ結婚はしていないが、それについても特に焦ってはいないという。

「僕は出遅れちゃった人間なので、出遅れたままゆっくり生きていこうと思っています。結婚もできるならそれでよし、できなくても卑屈にはなるまい、と。もちろん、好きな人がいればアプローチするつもりではいます。僕は僕のままでいいんだと心から思えたことが大きな自信になりました」

誰か信頼できる人と巡り会えるかどうかは人生にとって大きい。彼は上司と巡り会って、生き直している感覚でいるようだ。

「小さなワンルームマンションに暮らしていますが、自分の働いたお金でひとりで生活できているのは本当にありがたい。贅沢はできないけど、たまには同僚とちょっと高級な焼き肉を食べたりもできる。今の職場は同世代の独身男性もいるし、既婚者もいます。それぞれにいいところもよくないところもある。あとは自分が何を選択するかですよね」

選択できる立場になったことがうれしいと彼は話す。彼とは断続的に15年ほど連絡をとりあっているのだが、苦労を重ねながらも努力を続けたこと自体がすごいことだとつくづく思う。おそらく将来への不安が高じて狂いそうになったこともあるかもしれない。だが彼はそれに打ち勝った。周りと比べてではなく、自らに勝ったのではないだろうか。

<All About>
30代で絶望する人も…「独身中年」男性にのしかかる不安と“男たるもの”というプレッシャー

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