結婚と出産に関する全国調査

少子化は、高齢化と並んで日本社会では重要な問題だ。政府はさまざまな少子化対策を実施しているものの、一向に歯止めがかかる様子はない。
それどころか、国立社会保障・人口問題研究所が2022年9月9日に発表した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」の結果を見ると、今後、少子化は一段と加速しそうだ。

「一生結婚するつもりはない」男性5.3ポイント、女性6.6ポイント上昇

出生動向基本調査は、18歳以上55歳未満の独身者と妻の年齢が55歳未満の夫婦を対象に5年に1度実施されている。今回の調査は、新型コロナウイルス感染拡大のために、当初の予定から1年延期されて実施された。独身者調査(18~34歳を対象)では7826人、夫婦調査では6834人(妻が回答)の回答を得た。

まず、目を引いたのは、独身者に対する結婚の意思だ。「いずれ結婚するつもり」か「一生結婚するつもりはない」のかの質問に対して、「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合は、男性では前回の85.7%から81.4%に、女性では89.3%から84.3%に低下した。男性で4.3ポイント、女性で5.0ポイント低下した=表1。

驚きだったのは、「一生結婚するつもりはない」との回答が男性で前回の12.0%から17.3%に5.3ポイント、女性で8.0%から14.6%に6.6ポイントも上昇したことだ=表2。

男女いずれの年齢でも、前回調査よりも「いずれ結婚するつもり」との割合が減少し、「一生結婚するつもりはない」との回答が増加しているが、特に男性の30~34歳では「一生結婚するつもりはない」との回答が前回の14.4%から27.2%に12.8ポイントも増加。女性でも30~34歳で13.1%から20.4%に7.3ポイント増加した。

未婚の女性に対して、今後の人生で結婚、出産・子育て、仕事をどのように組み合わせるかについて、理想と実際になりそうだとの予想を聞いた結果、「結婚せず、仕事を続ける」が理想で前回の5.8%から12.2%に6.4ポイントも増加し、現実になりそうな予想で21.0%から33.3%に12.3ポイントと大幅に増加した=表3。

ちなみに、「子どもを持ち、専業主婦となる」は理想が前回の18.2%から13.8%に減少、予想では7.5%から3.6%に減少した。また、「結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ」は理想が34.6%から26.1%に、予想が31.9%から22.7%に減少。その半面、「子どもを持つが、仕事も続ける」が理想で32.3%から34.0%に、予想では28.2%で横ばいとなった。

これを見ると、仕事を継続したいという理想があるものの、現実的には結婚や出産により仕事をやめると復帰することが難しいとの見方から、「結婚せずに仕事を続ける」との考えが増加しているように見える。

平均希望子ども数…男性1.82人、女性初めて2人を下回る1.79人

こうした考えが反映しているためか、未婚者に子どもは何人くらいほしいかを聞くと、結婚意思のある18~34歳の未婚男女の平均希望子ども数は、1982年以降おおむね低下傾向が続き、今回調査では男性で1.82人、女性では初めて2人を下回り1.79人となった=表4。

それでは、実際の夫婦には何人の子どもがいるのか。調査では、子どもを追加する予定がほぼない結婚持続期間15?19年の夫婦の平均出生子ども数を完結出生子ども数と定義し、集計した。

それによると、完結出生子ども数は、2002年までは2.2人前後で安定的に推移していたが、その後低下し、今回調査では1.90人となり最低値を更新した。
そして、実際の子どもの割合は、ゼロが前回調査の6.2%から7.7%に、1人が18.5%から19.7%に増加している=表5。

これらの結果を見ても、少子化はなお一層加速する可能性がある。今回の調査結果で未婚者の「一生結婚するつもりはない」の急増や、未婚女性の「結婚せず、仕事を続ける」の増加の背景には、新型コロナによる雇用環境の悪化が少なからず影響しているようだ。

個人が結婚に対して抱く感情はさまざまで、その理由もさまざまだろう。制度的に結婚を強制することもできない。それでも、少子化が危機的状況にある中で、結婚して子どもを産み・育てていける経済的・社会的な環境を作る努力は続けなければならない。

<J-CAST>
未婚者の「一生結婚するつもりない」「結婚せず、仕事続ける」増加の背景…雇用の悪化も影響か 少子化歯止めかからず…経済・社会環境の整備急務(鷲尾香一)

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です