64歳の男性が老後の資金に関して相談しているの事例が掲載されていたので紹介します。
■相談者
男性/無職/64歳
関東/持ち家(一戸建て)
一人暮らし
■相談内容
65歳からは年金10万円ですがあまりに少ないので、切り詰めても貯金をある程度切り崩すことになります。固定資産税、火災保険も年間6万5000円ずつかかります。長生きすることのリスクがあります。70代前半で死ななければならないかとも思っています。病気にもかかりやすくなって、その出費も増えるかもしれません。貯金を使い果たし、年金のみになった時が恐怖です。年金が少ないのは自業自得ですが、やむをえなかった面もあります(病気などで)。
自宅を維持して自宅で死にたいのですが、いよいよとなったらリバースモーゲージも考えるかもしれません。しかし、いろいろ制約があるらしいので、できれば使いたくありません。70代になったら年金のみで暮らさなければならなくなる可能性が高いです。それは果たして可能なのでしょうか。
■家計収支データ
※家計収支データ補足
(1)住宅について
修繕やリフォームが必要となる可能性はない。また、最終的に誰かに相続する予定なし。
(2)加入保険について
本人/医療保険(終身、入院5000円、がん特約50万円)=毎月の保険料1万1000円
(3)貯蓄の内訳について
普通預金400万円、定期預金1600万円。
(4)健康状態について
メンタルクリニックに病気で10年以上通っていて、現在も通院している。
(5)今後について
65歳以降、働くことは考えていない。
(6)家族について
いざという時に金銭的、人的に援助してくれる親類はいない。
■FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 貯蓄を取り崩しても100歳前後まで大丈夫
65歳から年金が10万円程度とのことで、少ないことを心配しているようですが、現在の家計支出を見ますと支出は月額8万6000円とのことなので、じゅうぶん年金収入の範囲で賄えます。固定資産税や火災保険などが年間6万5000円プラスしてかかるとしても、月々は年金の範囲でぎりぎり大丈夫です。万が一貯蓄を取り崩したとしても、そんなに大きな額を毎月必要とするわけではないので心配はいりません。
ドルフィンさんは現在2000万円の預貯金がありますが、たとえば毎月3万円ずつ取り崩した場合、2000万円の貯蓄は55年もちます。月に4万円でも113歳、5万円取り崩しても98歳まで貯蓄が底をつくことはありません。そう考えれば、そんなに心配する必要はないし、リバースモーゲージも考えなくて大丈夫です。
アドバイス2 医療費をどうしたいか考えておくと安心します
医療に関しては、これからどんな医療を受けたいか考えておいたほうがいいでしょう。病気などで治療を受ける時には「かかる医療費」と「かける医療費」があります。かかる医療費はどこへ行っても誰でも同じ治療を受けられる、いわゆる保険診療のことです。日本は国民皆保険制度があるので、どんな人も1~3割の自己負担で治療を受けられます。ドルフィンさんの場合、70歳から2割、75歳からは1割の負担になります。また、1カ月に多額の治療費がかかった時には高額療養費制度があるので、一定額以上の費用は健康保険で負担してもらえます。
一方の「かける医療費」は、たとえば保険のきかない特別な治療法だったり、病気になった時にその病気の名医に執刀してもらうなど保険の範囲を超えた治療を望む場合の医療費です。入院した場合の個室を希望するなど差額ベッド代などもかける医療費になります。いざという時にこだわりがあるのなら医療費の支出は別に考えておいたほうがいいでしょう。
病気がちなことが不安の一つのようなので、医療費にどのくらいかけるのかということを考えておけば、マイホームも持っているので住居費もかからないし、65歳以降働かなくても大丈夫でしょう。
保険に関しては月1万1000円も払うのちょっとはもったいないですね。終身払いになっているし、家計に占める割合もかなり大きいです。これを共済とか安いものに変更できるなら変更したほうがいいでしょう。
アドバイス3 経済的なことよりもメンタルを含めた健康に留意して
一人暮らしをされているので、何よりも怖いのが家に一人で引きこもってしまうことです。経済的な部分に関しては、今の生活を守っていれば大丈夫ですから、お金の心配よりも自分自身の健康のことに気を配ってください。ストレスをためこんだり、人とのかかわりがなくなることは健康によくありませんよ。ですから家に引きこもってしまわないように、何でも構わないので社会とのかかわりを持ったほうがいいでしょう。
毎月3万円取り崩したとしても足りなくなることはないのだから、年に1、2回でもいいので、旅行などに出かけてみるのもいいのではないでしょうか? 足腰が弱ってしまわないようにするためにも、外へ出ることは重要です。
また趣味をみつけてサークルに参加するなど人とかかわりを持つのもいい方法です。仕事はしないとのことですが、もし趣味のサークルに参加するなどが難しいなら、負担にならない程度でアルバイトをするのも一つの考えです。
シルバー人材センターなどで少しお金をもらいながらボランティアをするのでもいいし、精神的体力的に無理のない範囲で考えてみてはどうでしょう。どんな形でもいいので、誰かとつながっているということは何かの励みになることも多いですよ。
持ち家に関してはリバースモーゲージの必要はないですが、相続する親族もいないようなら最終的に遺贈するということを考えておいたほうがいいかもしれません。
さらに家計の中で一つアドバイスするなら、健康に過ごすために食費をもう少し使ってもいいのではないかと思います。多少支出が増えても貯蓄が底をつく心配はないですから、健康のためにお金を使うのも大事なことですよ。
それと病気になった時の医療費の心配があるのであれば、「限度額適用認定証」をもらっておくといいですね。それがあれば多額の医療費がかかった時にいったん支払ってから高額療養費を還付してもらうのでなく、限度額までしか払わなくて済むのでちょっと安心できるのではないでしょうか。
ご心配しているよりもドルフィンさんの置かれている状況は悪くないので、あまり悲観的にならずにこれからの時間を元気に過ごしてほしいと思います。
<All About マネー>
64歳独身、月10万円の年金で暮らさなければならず、貯蓄が底をつくのが心配