内閣官房の孤独・孤立対策室において、日本における孤独・孤立の実態を把握するための初の大規模調査(約2万人対象)が実施されました。その分析が掲載されていますので紹介します。
全体的には、未婚および離別・死別などの独身のほうが孤独を感じやすく、女性より男性のほうが孤独を感じやすい。さらに、年齢的には、30~50代の中年層が孤独を感じやすいという傾向。もっとも孤独を感じやすいのは、男性では50代で配偶者と死別した層、女性では30代で離婚した層でした。
しかし、単純にこれだけを見て、「やっぱり結婚したほうが孤独じゃないんだな」と結論づけてはいけません。そもそも「孤独が問題だ」と大声で騒ぐわりに、性別や年齢、配偶状況にかかわらず「孤独を感じる」という割合は過半数にも達していないわけです。高齢者の孤独という話題もありましたが、むしろ高齢になるほど孤独感は感じない傾向もあります。ある意味、現役世代で人との交流機会が多いはずの年代のほうが孤独感は高いということになります。
そして、忘れてはいけない視点としては「孤独を感じることが決して万人にとって悪いことではない」ということです。言い換えれば「孤独を感じる」ことと、その「孤独を苦痛に感じる」こととは別です。
2020年に1都3県20~50代の未既婚男女(n15644)に対して、「孤独を苦痛と感じる」割合について調査したことがあります。それによれば、配偶関係別には以下の通りでした。
未婚男性 6.3%
未婚女性 1.9%
既婚男性 12.5%
既婚女性 12.1%
未婚男女においては「孤独が苦痛」なのは数%のレベルであり、既婚男女においても1割強にすぎないのです。つまり、未婚男女が4割近く孤独を感じるとはいっても、それを苦痛と思うのはその10分の1程度にすぎず、むしろ大多数は「孤独は感じているけれども、それは苦痛ではない」というのが正確な状況といえるでしょう。
もちろん、だからといって「すべての孤独は問題ではない」などと暴論を言うつもりはありません。が、一口に孤独といっても、それを苦に感じる人もいれば、むしろ孤独を楽しめる人もいるわけで、そうした人それぞれの置かれた環境や性格を無視して、ひとくくりに「孤独は悪だ」というほうが暴論なのではないでしょうか。
男女共通で孤独感を増幅させているのは、「病気・けがなどの心身トラブル」「DVや虐待など家族間のトラブル」「金銭的トラブル」などですが、男性側で特に多いのが「いじめやハラスメントなど人間関係のトラブル」と「生活困窮・貧困などの経済トラブル」です。女性側でも経済トラブルがもっとも孤独感を増幅させた要因となっています。
今まで、感覚的に「家族や友達など話し相手がいない」とか「コミュニケーションする相手がいない」ことだけが、孤独感の元凶のように語られていましたが、この初めての孤独に対する大規模調査から浮かび上がってきたのは、「孤独とは経済問題なのだ」という発見です。
要するに、「お金が足りないから孤独感を感じてしまう」のです。裏返すと、経済的な欠落感がなくなれば孤独感は解消されるかもしれないという新たな解決方法も見えてきます。必要なのは、人間の友達じゃなく、お金という友達だったのでは、と。
そういうと「お金があっても孤独に悩む人がいる」「友達や家族はお金では買えない」「なんでもお金で解決できる問題じゃない」という人も出てくるかもしれませんが、それはある程度お金に余裕がある人の論理ではないでしょうか。
お金がないことで様々な経済的な影響があり、その結果孤独感を感じてしまうとのことです。
もちろん一概には言えないと思いますがお金があることでゆとりが生まれるというのも事実としてはあります。
<PRESIDENT Online>
「結婚どころか友達もできない」年収300万円未満の男性を孤独に追い込む”決定的要因”