脱・ぼっちのススメ

青春時代、仲間たちと思い思いに語り合ったのも今は昔。50代、人生の終盤戦に臨もうとする男たちに「友だちがいない」のは、今やデフォルトのようだ。いざ、友だちをつくろうとして簡単にできるなら苦労しない。友だちゼロの弊害から逃れて健やかに生きるにはどうしたらいいのだろうか。独身研究家としてソロ社会を研究する荒川和久氏に聞いた。

「友だちができなくなる原因は、長年の社会人生活で、会社名や役職などの肩書で付き合う癖が染みついてしまい、自分も相手も『〇〇会社の〇〇さん』という所属先でしか人間を判断できなくなっているから。名刺交換をしないと人間関係がつくれず、所属なしでの人付き合いの仕方がわからなくなっているのです」

荒川氏は「友だちをつくるよりも“孤独耐性”をつけることが重要」と説く。

「孤独耐性とは、言い換えると自分の内面を充実させるということ。友だちがいなくて寂しいという人は、自分の中が空虚で、人に囲まれていることでしか自己肯定感が得られず、自己存在理由がわからない状態にあります。その満たされない気持ちを埋めようとして友だちを求めているのです。また、定年退職した人が陥りがちなのが、妻だけに依存してしまうこと。依存された妻からすれば迷惑な話で、最悪の場合、熟年離婚することに。高齢離婚男性の自殺率は非常に高い。それほど唯一の依存先に見放されることが耐えられないのです。長生きすればするほど周りの人は死んで誰もいなくなりますから、50代のうちに自分の内面を充実させる術を身につけたいですね」

「どこかに所属して人に囲まれていれば安心という状態は、まやかしでしかありません。空虚な自分にならないためには、集団での所属ではなく、個人の繋がりを意識するのが大事。部下A君といる自分、取引先Bさんといる自分など、出会った人の数だけ自分は生まれている。この“八百万の自分”という考え方が自分を満たすもとになります。そう考えると、所属先や利害関係ではなく、一人ひとりが大切だと感じ、感謝と思いやりを持つことで人間関係も変わってくる。友だちがいなくて寂しいという人は、小さな出会いの機会を見過ごしているんですよ」

行動としては、人と話すことが効果的だという。

「コンビニの店員や、散歩して顔を合わせた人、スナックのママでも誰でもいい。とにかく話す回数を増やすことで心は満たされるものです。話し相手が欲しくてクレーマーになる人がいますが、そうならないようにポジティブな要因で人に話しかけられるよう訓練しておきたいですね。よく友だちづくりのアドバイスで、趣味のサークルなど会社・家以外のサードプレイスをつくるべきといわれますが、それは結果論だと思う。出かけた先で人と話して、気が合ったのでまた会う約束をした。これがサードプレイスになる。居場所を用意することではなく、認識や行動を変えるのが先なのです。この順番を意識するといいのでは」

だが、話すのが苦手という人はどうすればいいのか。

「そんな人には一人旅をおすすめしています。旅先でグーグルマップなどは使わずに人に道を尋ねてみてください。旅の恥は掻き捨てといいますが、案外しゃべれるものです。旅先の居酒屋で客と楽しく話したことが忘れられなくて、地元に戻っても居酒屋へ通って人付き合いが生まれたりと、好循環になることも。それも難しいという人は、せめて歌を歌うといいですよ。できれば踊り付きで。要は声を出すことがストレス発散になる。ストレスは万病のもと。できることから始めてみましょう」

独身の方の悩みの一つに誰にも頼ることができない。孤独で生きる覚悟というものがあります。わかってはいてもなかなか行動にできるものではないかもしれませんが、自分の人生を変えることができるのは自分だけです。

<月刊SPA!>
「話すのが苦手という人でもストレス発散できる」独身研究家が語る、脱・ぼっちのススメ

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