世耕氏が座長を務める参院自民党の「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」は4月6日付で、子育て世帯を含む困窮世帯への1人10万円の給付などを求める緊急提言をまとめた。新型コロナの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻を受けた物価の高騰などを受け、困窮する世帯への支援が必要だとする内容だ。
昨年末にも18歳以下への10万円給付が実施されているが、子育て支援のNPOなどにヒアリングしたという世耕氏は会見で「(前回の給付の)効果が切れてきていて、夏までにもう一度、支給が必要だという痛切な声を聞いた」と強調した。ただ、わざわざ「夏まで」と言うところに、思惑が透けて見える。大手紙政治部記者が言う。
「夏までに支援が必要だと強調していることからも、7月に予定されている参院選で10万円給付を成果として掲げる狙いがあるのは確実でしょう。バラ撒き給付を繰り返し求めている連立相手である公明党の心証もよくなり、相互推薦を巡ってギクシャクした関係の修復のプラスにもなると考えられます。ただ、全国民一律ではない給付については国民の分断を招くという批判がこれまでも多方面から出ている。しかもタイミングとしては見え見えの選挙対策ですから、反発も大きそうです」
都内在住の30代独身男性は、今回の一報を受け、「またか、という感じです……」とため息をつく。
「少子化が国としての大問題だというのもわかるし、子育てにはいろいろとお金がかかるのは赤ちゃんが生まれた同世代の友人の話を聞いてもわかります。ただ、独身者は各種控除もないし、健康保険料や年金保険料は扶養する家族がいてもいなくても負担は基本的に同じ。正直、納得できない気持ちがあります。この国は“家族がいること前提”の制度ばかりで、独身者のことはすべて後回しなんだなと感じてしまいます」
“分断”が起きかねないのは、子供がいるかいないかという線引きだけではないだろう。前回の18歳以下の給付では、対象が主たる生計者の年収960万円(扶養家族が配偶者と子供2人の場合)までなどと制限された。今回の対象範囲については参院自民の提言では明示されていないが、収入などで線引きがされるとなると、それも不安のタネとなる。
都内在住で小学生の娘がいる40代女性は「うちは夫の年収が1000万円あるので前回は給付対象にならなかったけど、学校では“10万円もらったら何に使うか”という話題で盛り上がっているなか、娘はその輪に入れなかったそうです。都心に住んでいて私学進学などを考えるなら、年収1000万円でも余裕がある暮らしじゃないのに、またも娘が肩身の狭い思いをするのかと思うと……」と不安を口にする。
参院自民が支援を求めた「子育て世帯を含む困窮世帯」というのが、どのような対象を含むものとなるのかで、様々な議論が広がりそうだ。やり方次第では、選挙対策のバラ撒き批判が再燃することは間違いないだろう。
この国は“家族がいること前提”の制度ばかりで、独身者のことはすべて後回し。
まさにその通り。でも私はそれも仕方のないことかなと思います。財源も無限にあるわけではないですし、優先順位は必然とつくものです。人口を増やさなければいけない、減少数を下げたい日本としては家族がいることに優先度が高くなるのだろうなと。
独身の人は国を期待せずに自分たちでどうにか未来を作っていかなければならない時代が来ていると思います。
<NEWSポストセブン>
参院自民「生活困窮の子育て世帯に10万円」提言 露骨な選挙対策に独身者が「またか…」