大独身時代の到来

かつてあたり前だった結婚も、いまや若者には「重荷」でしかない。2040年、人口の半分が独身者になり、そのほとんどを高齢者が占める―「大独身時代」を迎える日本を襲う、悲劇の連鎖とは。

「見た目がよくカネもある」人しか結婚できない

結婚へのハードルが上がっているのは、厳しい台所事情のせいだけではない。男も女も「人生をしくじりたくない」と思うあまり、相手にあまりにも高い要求を課すようになっていることも、もうひとつの要因だ。

「男は度胸、女は愛嬌」。かつてなら、夫に求められるのは収入で、妻に求められるのは容姿や包容力と相場が決まっていた。ところがいまでは、男も女も関係なく「見た目がよくカネもある」ことが結婚のための条件になってしまった。独身研究家の荒川和久氏が話す。

「’21年の出生動向基本調査によれば、女性が結婚相手に求める条件として、『経済力』は92%と例年通り高い水準になっているうえで、『容姿』が過去最高の81%となったのです。つまり現代の男性は、経済力だけでなく容姿まで求められるようになっているのです」

昨今、婚活市場では結婚相手に望む「現実的な収入」として、年収500万円と回答する人が多い。しかし、これは実際には、3人に1人しかいない高所得者なのだ。

結婚が消えれば「地方」が消える

このまま結婚できない若者が増えていけば、’40年には日本の人口の半分を独身者が占めると推計されている。20年後の日本は、身寄りのない孤独な高齢者で溢れかえる。結婚というシステムの死によって、医療・福祉・社会インフラが連鎖的に麻痺、崩壊してゆく―。それこそが、待ち受ける「大独身時代」の日本の姿だ。

「これから結婚できるのは、高学歴、大都市在住、大企業勤務の人だけになる。反対に低学歴、地方在住、中小企業勤務、非正規雇用の人たちはますます結婚できなくなる。彼らを待ち受ける未来は悲惨です。対策を練る政治家や官僚は恵まれた環境で暮らす層ばかりですから、そういった人たちに向けた高等教育、結婚支援は視野に入っていないのです。

東京に出なければ成功のチャンスがないので、地方からは若く、優秀な人たちが消えていく。すると、入学者が集まらない地方都市からは大学が消える。いまの18歳人口が約110万人で、0歳人口が78万人。20年後に現在と同レベルの進学率を維持し、約6割が大学に進学したとしても、大学数はおよそ3分の1まで減り、さらに若者が地方を去っていく悪循環に陥るでしょう。

今後はある程度の規模の地方都市でさえ、医療などのサービスが受けられなくなり、『限界集落』と化していくかもしれません」(前出・山田氏)

ひとり身で面倒を見る家族がおらず、公的なサポートを受けられない―そんな独身者たちを待ち受けるのが、孤独死である。

「日本の福祉システムは、家族がいる前提でなんとか回っている状態です。だから、生涯未婚者に対するサポートが崩壊するのは目に見えています。昔ながらの地縁に基づいたコミュニティも消滅しつつありますし、血縁があっても関わりが希薄になっていれば、身寄りのない状態で死亡する可能性が高くなります。すでに遺体が長期間放置されるケースが増えています」(前出・荒川氏)

介護サービスも「ぜいたく」品に

であれば、現役時代にせっせと貯めた老後資金で訪問介護を受けたり、老人ホームに入ればいいではないか、と思うかもしれない。

しかし、いまのような手厚い介護がこの先も受けられるというのは、幻想だ。

「将来は恋愛や結婚と同様に介護サービスも高所得者しか享受できない”ぜいたく”品になっていくでしょう。

未婚の高齢者が増えていくわけですが、介護の担い手は少子化でどんどん減っていきます。移民にも頼れません。なぜなら、この国で介護事業に従事するのは割に合わない。オーストラリアでは介護資格を持っていれば、日本の3倍以上の給料をもらえるのですから」(前出・山田氏)

孤独な人々が激増すれば、世の中は荒み、不安定になってゆくのが道理だ。老親が認知症などの要介護状態になれば、仕事との両立は難しく、経済的にも困窮していく。介護殺人に走って「親子共倒れ」になるケースが続出する恐れがある。

’16年11月、80代の母親を50代で独身の息子が絞殺するという事件も実際に起きている。彼はうつ状態で、取り調べには「介護に疲れた。限界だった」と供述している。

ひとりひとりが自立して、他人に頼らず強く生きる―。そんなスローガンのもとで日本人は「結婚」という古臭い制度に見切りをつけた。だが、その先にある未来は、どうやらあまり明るいものではなさそうだ。

<週間現代>
結婚できるのは高学歴・大都市在住・大企業勤務だけ…『大独身時代』到来で日本に待ち受ける「ヤバすぎる未来」〈地方都市崩壊〉〈孤独死急増〉

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