恋愛弱者

出生者数が過去最少を更新し、少子化が問題となっている今。そもそも結婚すること自体が難しいと話す人も多い。「結婚できないのは社会のせい」と語る婚活連敗中の男女にその理由を聞いた。

婚活難航中の男女が「社会のせい」と主張する理由

’22年に内閣府が発表した「少子化社会対策白書」によると、男性のおよそ4人に1人、女性は6人に1人が生涯を未婚のまま終えるという。結婚適齢期であるはずの30~34歳に絞っても、男性の未婚率は47.1%、女性は34.6%。男女ともに生涯未婚率が4%以下だった’70年代と比較すると雲泥の差である。

その中には、選択的未婚者だけでなく「結婚したくてもできない」男女が存在する。

「僕が結婚できない理由は、格差社会のせいだと思う」
そう嘆くのは、埼玉県のアパートで一人暮らしをしている田中祐さん(仮名・42歳)だ。現在の職業は料理配達のアルバイト。これまで一度も交際経験がないという。

「もともと引っ込み思案で女性と話すのが苦手でした。その上、新卒で就いたブラック企業をうつで辞めてしまい、時給1000円前後のバイトを転々としていたので、生活するだけで精いっぱい。彼女どころではありません」

「結局、女性が一番好きなのはカネを持っている男」

それでも結婚願望はあったという田中さん。38歳のときに勇気を出して、バイト仲間と街コンに繰り出すようになったのだが……。

「40歳手前で非正規雇用という負い目があるのでしょうね。うまく会話ができなかった」
一度、マッチングアプリでマッチングした女性とデートで意気投合したこともあるが、翌日彼女のSNSを漁ると田中さんの悪口が書かれており、より女性不信を募らせた。

「結局、女性が一番好きなのはカネを持っている男。今の僕の稼ぎでは妻は養えないし、結婚資金の捻出もできない。一度正社員のレールから外れてしまうと、格差の底に沈んで這い上がれず、未婚ルートまっしぐらじゃないですか」

’20年の国勢調査によると、正社員男性の生涯未婚率が19.6%なのに対し、非正規雇用になると60.4%に爆増。非正規で働く男性への風当たりは確かに強いように見える。

女性が婚期を逃す社会の雇用システム

では、女性側で婚活連敗中の事情はどうか。

「今の時代、マッチングアプリやSNSが恋愛の主戦場。でも、年齢や年収など“数字がものをいう世界”なので、結婚適齢期を逃すと相手が見つかりません」

そう話すのは、都内の実家で暮らす町田理恵さん(仮名・36歳)。

「2年前にTwitterで婚活アカウントを作って彼氏を募集したのですが、来るのは結婚相談所のDMばかり。試しにモニター登録してみたら、60代の男性ばかり紹介されて……。高齢者を釣るためのおとり候補として入会させられたんです。その後、マッチングアプリを使って100人以上とデートしましたが、コミュニケーションに難がある人ばかりでした」

結婚はもはや「贅沢品」?

婚活で苦労している町田さんが若いうちに結婚しなかったのには理由がある。

「28歳のときに親の介護で時短勤務になり、給与が激減したんです。でも、専業主婦の母がモラハラ気味の父に苦労しているのを見て育ったので、『自分が稼げるようになるまでは結婚できない』と思い、ズルズルと今に至ります。稼ぐ力がないと、家庭の中で立場が弱くなると思い込んでいたんです。

若いうちに結婚したら社会復帰は難しいし、仕事に打ち込めば結婚適齢期を逃してしまう。女が幸せな結婚をするのに、この社会はあまりにも厳しすぎます」

こんな社会に物申したいのは、町田さんだけではない。
「奨学金という“借金”を背負っているので、結婚できない。学費が高い社会は間違っている」(36歳・女性)
「大手企業は時間外労働の上限規制があるが、中小企業はまだ激務薄給。休日は疲れて婚活どころではない。格差社会が悪い!」(46歳・男性)
「家事が苦手なので結婚は無理。性別役割分業意識の強い日本はおかしい」(34歳・女性)

今の社会では、結婚はもはや贅沢品なのか。

恋愛弱者が結婚できなくなった本当の理由

人口の95%以上が結婚できた「皆婚時代」も今は昔。なぜ、未婚率はここまで上昇したのか。独身研究家の荒川和久氏は「そもそも、日本に恋愛強者は3割程度しかいない」と断言する。

「恋愛強者とは、端的に言うと『コミュニケーション力』の高い人のこと。人間が好きで他人に興味を持てる人、他者に合わせた言動ができる人が恋愛へと発展していくのです。一方、残り7割は受け身恋愛弱者。失敗を恐れて、なかなか行動に踏み切れず、だから経験値も積めない人たち。ただ、恋愛弱者でも男性は経済力、女性は若さがあれば結婚しやすくなりますが」

つまり、モテの基準とされている「経済力」や「年齢」は恋愛弱者を武装させるツールにはなりうるが、恋愛や結婚に向いているか否かを本質的に表す指標ではないということ。この恋愛強者3割、弱者7割との率は昔から変わらないと荒川氏は言う。

ではなぜ昔は皆が結婚できたのか。

「それは、社会に“結婚のお膳立てシステム”があったから。特に、’60年代半ばからは職場結婚が主流となり、腰かけOLや寿退社という言葉があったように、部下の仲を取り持ち、結婚式で仲人をしたがる上司も多く、恋愛弱者が結婚できる構造でした」

強者が退場することなくモテ続けている現状

一方、職場のコンプライアンスが厳しくなり、“お膳立てシステム”が衰退した現代では、7割の恋愛弱者は自力でサバイブするしかない。

「今主流のマッチングアプリは恋愛弱者には不利なツールです。かつての職場結婚であれば、徐々に関係性を深めていくことができましたが、マッチングアプリは純粋な戦闘力が試されます。現状、3割の恋愛強者が市場を食い荒らしているだけ。

マッチングアプリに限らず、通常は恋愛強者3割が結婚したら、残ったうちの3割が強者へと押し上がります。しかし、昔ほど結婚への圧が強くないこともあり、強者が退場することなくモテ続けているのです」

恋愛弱者が結婚しにくい社会構造こそが、この未婚率の最大の要因といえそうだ。

<月刊SPA!>
恋愛弱者が結婚できなくなった「本当の理由」。男性の4人に1人、女性の6人に1人が生涯未婚

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