生涯独身とは

生涯独身とは人生を通して未婚を貫く人のこと。政府等の統計では50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合を指して「生涯未婚率(50歳時未婚率)」と呼んでおり、その割合は年々増加している。今回は生涯独身の増加に伴う背景と課題や、それが企業活動に与える影響などについて過去記事から振り返る。

増え続ける日本人の生涯独身率

「生涯未婚率(50歳時未婚率)」は、50歳時の未婚割合のことを指す。「45~49歳」と「50~54歳」未婚率の平均値から算出される。2022年6月に内閣府から発表された「少子化社会対策白書」によれば生涯未婚率は年々増加しており、1970年には男性1.7%、女性3.3%だったのに対して、2020年には男性28.3%、女性17.8%まで増加している。

また21年に実施された国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」では、独身の男女のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた人の割合は、18~34歳の男性で81.4%、女性で84.3%となった。前回調査ではそれぞれ85.7%と89.3%で、男女いずれも減少傾向にある。

生涯独身を選ぶかどうかは個人の自由選択だが、未婚率は少子化との関係が深い。また生涯独身の人が増えれば国民のライフスタイルも変化する。この記事では生涯独身が増える背景や課題に加え、生涯独身がもたらす新たなビジネスチャンスについて過去記事から紹介する。

もう他人事ではない 「3大ミゼラブル」

生涯独身の増加は超々高齢化社会の3大問題である孤独死、認知症、老人犯罪(加害・被害両方)のうち、特に孤独死との関係が深い。核家族化や生涯独身を選ぶ人の増加で孤独死は今後ますます深刻化すると予想され、遺品整理ビジネスが拡大している。また、賃貸住宅の管理会社や大家向けに、入居者が亡くなったときの葬儀や片付け、修繕などの費用を補償する保険も誕生している。

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50歳男性の生涯未婚率が爆増 非正規はついに6割超え、健康も悪化

生涯未婚率は年々増加しているが、特に増えているのが非正規雇用の未婚率だ。総務省が20年国勢調査を元に45~49歳と50~54歳の未婚率を分析したところ、正社員の男性は19.6%なのに対し、非正規(派遣、パート、アルバイト)社員では男性60.4%と6割を超えた。男性非正規社員の未婚率は15年の国勢調査では50.7%だったので、約10ポイント上昇したことになる。

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花王の調査で浮かんだ「家族」より「自分」の傾向

生涯独身が増加する中、既婚者において仕事や家族よりも「自分」を優先する意識が高まっている。花王が06年から実施している「生活者の暮らしに関わる意識と行動」の調査によると、「お互いに干渉しない家族がいい」という項目では、「そう思う」「ややそう思う」と答えた回答は、06年と16年では、既婚女性で53%から63%に、既婚男性で49%から59%にそれぞれ上昇した

国立社会保障・人口問題研究所は35年の日本では、男性の3人に1人が、女性の4人に1人が生涯独身で過ごすとの予測データを公表している。「個」への流れは明らかだが、それが孤立や社会不安につながらないよう、個人、企業、地域は従来の「家族」を超えた新しいつながりを築く時期に来ている。

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一人旅人気、「おじさん」が牽引役 未婚率上昇が広げる市場

生涯独身者の増加により人々の消費行動も変化している。「じゃらん」の調査では国内旅行に占める一人旅の割合が10年(09年度から18年度)で12.9%から18.0%に増加。特に35~49歳男性と50~79歳男性の伸び率が大きいという。

こうした変化に旅行会社も対応し始めている。日本旅行は「男一人旅」と銘打ったウェブサイトで国内温泉旅行や、マチュピチュなどの世界遺産をめぐる旅など、男性に人気のツアーに力を入れ始めている。

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突き進む「ソロ社会」 “結婚式”も葬式も1人で

生涯独身者が増える「ソロ社会」ならではのサービスが「ソロウエディングプラン」だ。東京都世田谷区のフォトスタジオ「アンシャンテ東京」が提供している。ヘアメイクを経て、写真を撮影。思い出の1枚を残す。利用者の多くは未婚の女性で、平均初婚年齢の30歳を超えた30代以上が多いという。

結婚する人が減れば、「何婚」であろうが結婚式自体が廃れかねない。それだけに、結婚をしてもしなくても本人が希望すればいつでも利用できる「ソロウエディング」サービスは、ブライダル産業の希望の一つになっていく可能性がある。

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おひとりさま女性に学ぶ、上手な「老い方」

生涯独身率が高まる中、「おひとりさま」人生を実践してきた女性の著書が人気を集めている。篠田桃紅氏の『一〇三歳になってわかったこと』や、笹本恒子氏の『100歳の幸福論。』がそれだ。両氏の著作には「ひとりで人生を楽しむ」知恵が詰まっている。生涯独身の篠田氏、2回の結婚で離死別を経験した笹本氏。2人の著作からは「経済的にも、精神的にも、ひとり凛と生きる姿勢を教えられる」という。

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「国民8割に孤独感 みんな孤独予備軍」 小倉担当相の危機意識

晩婚化や未婚化によって単身者や独身者、単身高齢者が増えることで、人々の孤独感や孤立感が高まっていることに政府は危機感を募らせる。22年8月に孤独・孤立対策担当大臣に就任した小倉将信衆議院議員は国民の孤独や孤立が「自ら命を絶つ方の数が増えている原因の1つ」としている。それらを高めている構造要因を変えるため、「政府として腰を据えて取り組まないといけない」と語る。

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最後に

生涯独身者の増加は、他人との関わりに対する人々の意識の変化と深く関係している。こうした変化は一部の企業にとって新たなビジネスチャンスとなるが、国の将来にとっては深刻な課題とも考えられる。人生100年時代に向けて今後、人々の意識がどう変化し、社会や経済にどのような影響を与えるか、大きな問題として注視する必要があるだろう。

<日経ビジネス>
生涯独身とは? 未婚率上昇の背景・課題と新ビジネスへの動き

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