生活保護受給者は減少傾向にありますが、高齢者では逆に増加しています。世帯別で見ると、2022年3月時点で65歳以上の高齢者世帯が生活保護受給世帯の56%を占める状況です。
中には、老齢年金を受給するようになると生活保護がどうなるかが気になる人もいるでしょう。
今回の記事では、老齢年金が月額5万円以下なら生活保護を受け取れるのかについて解説しますので、老後の生活設計を考えるときの参考にして下さい。
1.生活保護とは
生活保護は、収入だけでは国が定める保護基準(最低生活費)に満たない場合、申請により受け取れる公的扶助です。
居住する市区町村に申請すると、資産や収入、家族状況などの確認があり、生活保護が認められると「保護費」が支給されます。
収入や最低生活費は世帯単位で計算します。最低生活費は、住んでいる地域や家族状況、持ち家状況などで異なります。
厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」によると、食費や光熱費などの日常生活に必要な費用に対する保護費(生活扶助)は、次の通りです。
生活扶助基準額の例(2022年4月1日現在)
生活扶助以外にも、必要に応じて住宅扶助(アパートなどの家賃)や教育扶助(義務教育を受けるために必要な学用品費)、医療扶助、出産扶助などの保護費があります。
高齢者単身世帯で持ち家があり受け取れる保護費が生活扶助のみの場合、東京都区部の最低生活費は月7万7980円です。
収入がなければ保護費は月7万7980円、月3万の収入があれば保護費は月4万7980円です。
・保護費=最低生活費-収入
2.老齢年金を受け取ると生活保護はどうなる?
老齢年金と生活保護は同時に受け取ることができます。
ただし、老齢年金も保護費を計算するときの収入に含まれるため、最低生活費と年金額、年金以外の収入によっては生活保護が受けられないケースもあります。
東京都区部で生活扶助を受ける高齢者単身世帯と高齢者夫婦世帯について、老齢年金を5万円受け取ると生活保護が受け取れるかどうかを見てみましょう。
年金以外に収入はないものとしてシミュレーションします。
2.1 高齢者単身世帯(扶助額基準額7万7980円)
高齢者の年金額が月5万円ならば、保護費は次の通りです。
・保護費=7万7980円-5万円=2万7980円
上記のケースでは月5万円の年金を受け取っても生活保護は受けられます。ただし、年金と生活保護の合計金額は7万7980円で、年金のない人の保護費と同額です。
2.2 高齢者夫婦世帯(扶助額基準額12万1480円)
高齢者夫婦それぞれが月5万円の年金を受け取る場合、保護費は次の通りです。保護費は世帯単位で計算します。
・保護費=12万1480円-10万円=2万1480円
夫婦それぞれが5万円の年金を受け取っても生活保護は受けられますが、年金を受けていなくても総受取額は変わりません。
生活保護を受け取っている人に老齢年金の受給権が発生した場合、年金を受け取っても総受取額が変わらなくても老齢年金の受給手続きは必要です。
所定の年金を受け取った上で、最低生活費に満たない額を保護費として受け取ることになります。
3.老齢年金を受け取っても生活保護は受けられる
生活保護の保護費は次の通り計算します。
・保護費=最低生活費-収入
収入には老齢年金の受給額が含まれるため、これまで生活保護を受けていた人も老齢年金の受給権が発生すると生活保護が受けられなくなる可能性があります。
最低生活費は住んでいる地域や家族状況、持ち家状況などで異なりますが、年金を含む収入が最低生活費を上回らなければ生活保護は支給されます。
ただし、年金などの収入が増えても保護費が減るため、総受取額は変わりません。