老後の生き方

50代女性の就業率は7割超え、転職経験者は8割を超えています。彼女たちは、現代において最もアクティブな世代の一つといえるでしょう。しかし、その働く理由は、必ずしも「お金のため」だけではないようです。獅子にひれ氏の著書『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、データをもとに50代女性を取り巻く環境とこれからの生き方についてみていきます。

働くのは当たり前、8割が転職経験あり…50代女性を取り巻く環境

「『自分らしく』できたらいいけれど」と思ってはみるものの、50代女性の日々は仕事や家庭生活に忙しく、自分のことはどうしても後回しになりがちです。そもそも女性は結婚・出産・育児などライフイベントの影響を受けやすく、自分を優先しづらい時期もあります。

しかし、この20~30年の間にも社会は大きく変化し、その荒波にもまれながらも、仕事においても、生活においても、たくましくしなやかに乗り越えてきた経験や喜びなどの多彩な経験をもつ、人生経験豊かな年代でもあります。

いまの50代女性にとって働くことは当たり前のことであり、また、働く目的と自分の生き方をうまく重ねながら柔軟に進化できるのも特徴といえるのではないでしょうか。ハルメク生きかた上手研究所の「50~70代女性の仕事・ボランティアに関する調査」によると、次のような調査結果が出ています。

・過去仕事経験率:98.0% ※50代女性のみは100%
・現在の就業率:48.1% ※50代女性のみは74.7%
・現在もしくは過去就業したことのある人の転職経験:76.6% ※50代女性のみは82.8%
・転職平均回数2.7回 ※50代女性のみは3.4回
・現在のボランティア実施率:50.9% ※50代女性のみは50.5%
出典 :「ハルメク生きかた上手研究所調べ」

65歳を超えても働きたいと思っている人の割合は86.7%あり、仕事をする理由として上位に挙がったのは「社会との関わりを得たいから」「人とのコミュニケーションを得たいから」「仕事を通じて自分が役立っていると実感できるから」という結果に。

一方で「老後の資金を確保したいから」「日々の生活費を得たいから」は低位で、お金を稼ぐことよりも社会とのつながりを理由に挙げている割合が高い結果のようです。

50代以上の女性の3人に1人が、「新しい仕事がしたい」と考えている

また、回答者のうち現在も仕事をしている人の「新しい仕事への就業意向」は36.1%あり、働く50代以降の女性の3人に1人が、新しい仕事へのチャレンジ意欲があることがうかがえました。

仕事をする理由と同じく、ボランティア実施上位の理由が「社会に対して貢献したいと思うため」「社会との関わりを得たいから」「活動を通じて自分が役立っていると実感できるから」という結果を受け、ハルメク生きかた上手研究所所長の梅津順江(うめづゆきえ)さんは“年を重ねるとより一層、『自分の喜び』と『人・社会の喜び』が重なってくるということなのかもしれません。”と回答しています。また“酸いも甘いも含めた豊かな人間関係や社会経験をしてきた世代だからこそ、新たな人や社会とのつながりや学びにも前向きなのかもしれません。”とコメントしています。

忙しい日々のなかにも、キャリアをしっかり積んできたこと、将来を見据えて仕事と向き合い、仕事以外の活動にも積極的な同世代の姿に勇気づけられます。

出典:ハルメクholdings「【仕事・ボランティアに関する意識と実態調査2024】 50代~70代の就業率の割合は48.1%」

50代女性は「約3割」がおひとりさま、約6人に1人が未婚

人生の選択肢が増え、多様化する女性の生き方に関して次のようなデータがあります。

男女共同参画局「男女共同参画白書令和4年版」によると、50歳時点で「未婚」「離別」「死別」などの理由により配偶者がいない人の割合は、令和2(2020)年時点では約3割という結果に。私自身もその1人に入るのですが、実感として3人に1人を多く感じるのは、私が昭和世代の人だからでしょうか。ただ、友人や知人を思い浮かべてみると、たしかに私のまわりはそれくらいの割合のような気がします。

また、女性の50歳時の「未婚」の割合を見てみると、昭和45(1970)年時点では3.33%であったのに対し、50年後の令和2(2020)年では17.81%に上昇。50歳女性の約6人に1人は結婚をしていません。男性のほうがより深刻で、50歳の男性の約4人に1人は結婚経験がないのが実態のようです。

背景として、女性が働きやすい社会になっていくと同時に、経済的な自立ができるようになったことも大きいと感じます。

昭和61(1986)年に「男女雇用機会均等法」が施行、男性と女性が同じように働けるようになりました。平成4(1992)年には「育児休業法」が施行され、子育てしながら仕事を続けられる環境が整ってきました。私も産休や育休を使って働き続け、人並みの暮らしをしてきたと思います。

否が応でもおばあちゃんになる頃には「おひとりさま」

世の中は現在も加速度的に変化し続け、結婚や家族のスタイルもさまざまです。私がまだ子どもだった昭和の時代は、祖父母との3世代同居も見られました。

現在ではひとり世帯が増え、結婚せずに独身でいる人、結婚後に離婚する人、離婚後に再婚する人、結婚というかたちを取らずに家族をもつ人、親と暮らす人、配偶者や親を看取ったあとにひとり暮らしをする人、など多様化しています。

平均寿命ではなく、死亡年齢最頻値で見ると、令和2(2020)年時点で、女性は93歳、男性は88歳になっていて、健康かどうかはさておき、いまや女性の半数は90歳以上まで生きる時代というわけです。少し長い目で見ると、女性の場合は後半の人生をひとりで暮らしていく時間が長くあることが明白です。

私がまだ20代だった当時は、大人になれば結婚するのが当たり前、という時代だったように思います。ですが現在は、女性がひとりで生きていくのも当たり前の世の中になってきたと感じると同時に、否が応でもおばあちゃんになる頃にはひとりで生きる時代だと、時代の変化を実感します。

「おひとりさま」であること、「おひとりさま」になることを、元気なときは楽観的に構えられても、私が経験したように健康面に不安が出ると、いろいろなことが前向きに考えにくくなってしまい、とても楽観的にはいられないと思うのです。

人生の後半では、現在「おひとりさま」はもちろん、いずれ「おひとりさま」になっていく多くの女性は、意識しはじめたときから少しずつ自分の「これから」を考えはじめること、やれることをやっておくことを私はおすすめしたいと思います。

<資産形成ゴールドオンライン>
50代女性の“3割”が独身、半数は寿命90歳超え…想像以上に長い「おひとりさま人生」。彼女たちが「老後資金」のためではなく、働き続ける本当の理由