老後生活に備える手段として効果的なのが、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)です。いずれも運用益が非課税になる税制優遇措置があり、効率よく資産形成できる制度として注目されています。
ただし、NISAやiDeCoで投資を始める前には、まず生活防衛資金を確保しなければなりません。今回は、平均よりも年収や貯金が少ない人が、どのように老後に備えるべきかを解説します。
40代の平均年収と平均貯金額
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、令和5年における30代の金融資産保有額の平均は599万円、40代は811万円でした(金融資産を保有していない世帯を含む)。
また、国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、令和5年における35~39歳の平均年収は466万円、40~44歳の平均年収は501万円でした。
今回の相談者の方は、年収と貯金額ともに平均値を下回っています。特に、現在は貯金が30万円しかなく、生活防衛資金としては不十分でしょう。そのため、現在は投資を始める前に「収入を増やす」「支出を減らす」という2つのアプローチを通じて、家計を改善させる必要性が高そうです。
生活防衛資金を用意してからNISAを活用しよう
「老後が不安だからNISAを始めたい」という考えは、間違いではありません。しかし、NISAは投資をして得られた利益が非課税になる制度であり、リスクを取って運用する必要があります。
リスクを取るということは、つまり元本割れが発生する可能性も織り込まなければなりません。十分な生活防衛資金がないなかで投資を始めた結果、損をしてしまうと生活にも悪影響が出てしまうでしょう。
そのため、NISAを始める前に生活防衛資金を貯めましょう。目安としては、最低でも生活費の6ヶ月分は用意したいところです。例えば、基礎生活費が毎月20万円の場合、最低でも120万円は生活防衛資金として用意する必要があります。
「収入を増やす」という面では、転職をして収入を増やしたり、副業をして収入源を増やしたりする方法が考えられるでしょう。ただし、希望する転職先が見つかっても、就職できるとはかぎりません。また、副業をする身体的・時間的余裕がないケースも十分に考えられます。
そのため、即効性がある「支出を減らす」という取り組みにも着手しましょう。具体的には、固定費を削減したり価値が感じられない支出を減らしたりする方法が有効です。
家計管理をしていないのであれば、まず家計管理を徹底しましょう。家計簿アプリを活用し、銀行口座やクレジットカードなどをひも付ければ、自動的に家計簿を作成してくれるため便利です。
家計簿アプリを活用すれば、「毎月、何にいくら使ったのか」を正確に把握できます。固定費を中心に無駄な支出を省けば、貯金のスピードが早まり、生活防衛資金をスムーズに貯められるでしょう。十分な生活防衛資金を用意できたら、リスク許容度の範囲内でNISAを活用することをおすすめします。
まとめ
NISAは投資をする際には有効活用すべき制度ですが、リスクが伴います。そのため、「NISAを始めたい」と考えていても、まずは最低でも6ヶ月分の生活防衛資金を貯めましょう。
貯金を増やすスピードを早めるためには、「収入を増やす」「支出を減らす」という2つのアプローチに取り組むことが効果的です。転職や副業のチャンスはないか、きちんと家計管理ができているかを確認し、着実に老後に向けた資産形成を進めていきましょう。
<ファイナンシャルフィールド>
40歳独身年収300万円貯金30万円。老後を見据えて「NISA」だけでも始めるべきでしょうか?