「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められているでしょうか? 厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』などとともにみていきます。
親の老後が心配…「一人っ子男性の悩み」
東京都内に住む40代独身・一人っ子男性のAさん。近年、彼の悩みの種は両親の老後問題です。両親は共に70代後半で、健康状態は悪くないものの、年齢的な衰えを感じることが増えたといいます。特に問題となっているのは、両親に十分な貯蓄がないことです。Aさんは、自身の生活と両親の介護の負担を天秤にかけながら、日々悩んでいます。
「両親が貯蓄をしてこなかったのは、今さら責めても仕方がないことですが、これからどうしていくかが大きな課題です。自分ひとりで全てを支えるプレッシャーは重いです」
両親は年金だけで生活しています。厚生労働省の『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、厚生年金保険(第1号)の受給者は3,598万人で、その平均年金月額は14万4,982円です。
Aさんの両親には二人合わせて約22万円の収入があります。しかし、毎月の生活費はぎりぎりです。医療費や突発的な支出があるたびにAさんが補填しており、彼自身の貯金も心細くなっています。
「両親が住んでいる古い一軒家の維持費や医療費などがかさむとその都度、自分が援助しなければならず、将来に向けた貯蓄が難しくなっています」
両親の安全と快適な生活を考え、老人ホームへの入居を検討したこともあります。しかし、その費用の高さに頭を抱えてしまったとのこと。老人ホームには、入居一時金として数百万円から1,000万円以上を必要とするところもあり、さらに月々の利用料も10万から20万円以上かかる場合があります。
「老人ホームに入ってもらえば安心できると思ったのですが、費用を聞いて愕然としました。貯蓄のない両親にそのような費用を賄うことは不可能ですし、自分一人の収入でそれをカバーするのも現実的ではありません」
またAさんが抱える負担をさらに重くしているのは、「一人っ子」であることです。兄弟姉妹がいれば、相談したり分担したりすることが可能ですが、一人っ子の場合、全ての決定と責任を背負うことになります。
「一人っ子なので、全て自分で解決しなければならないという孤独感があります。両親を支えたい気持ちはありますが、自分自身の将来も見据えなければなりません」
Aさんは語る「自分の老後を考えると、不安があります…」
Aさんは現在、公的支援や介護サービスの活用を検討中です。例えば、介護保険を利用すれば訪問介護やデイサービスなどが利用可能です。また、自治体によっては、介護費用の一部を補助する制度が用意されている場合もあります。
「特養は費用が抑えられる分、入居待ちが非常に長いです。在宅介護サービスも便利ですが、自分が仕事をしている間は親を完全に任せきることは難しく、結局、自分で対応する部分が多いと感じます」
Aさん自身も40代半ばを迎え、自分の老後についても不安を抱いています。独身で子どもがいないため、両親のように支えてくれる家族がいない可能性が高いからです。
「両親の状況がそのまま自分の将来に重なるのではないかと思うと、不安が募ります。今の両親を支えるのに精一杯で、自分のための貯蓄ができない現状がつらいです」
Aさんのように、一人っ子で独身の男性が抱える介護問題は、現代日本が直面している課題の縮図といえます。親の老後をどう支えるか、そして自分自身の老後をどう準備するかという二重の問題がのしかかっています。
公的支援や介護サービスの充実が求められる一方で、個人としても将来に備えた計画や貯蓄が欠かせません。しかし、これらを両立させることは現実には容易ではありません。社会全体で高齢者支援の仕組みを見直し、家族の負担を軽減するための具体的な対策が急務となっています。
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40代独身・一人っ子男性「両親が貯蓄をしてこなかったのは、今さら仕方がないことですが…」老人ホームを検討し、愕然としたワケ