独身女性の生き方

あえて結婚を選ばずシングルでいる女性が世界的に増加傾向にある。経済的自立と価値観の多様化を背景に、女性たちが従来の結婚観にとらわれない新たな人生の選択肢を手に入れつつある一方、男性の価値観との乖離も浮き彫りになっている。独身女性を取り巻く社会の変化と、彼女たちが模索する新しいパートナーシップの形、結婚に依存しない人間関係のあり方について、カナダ版『ELLE』が考察。

今年初め、モデルのエミリー・ラタコウスキーは婚約指輪を2つの“離婚”指輪に作り変えたことを明らかにした。それは象徴的な行動だった。彼女はそれを売ったり、過去の人生の遺物のように宝石箱にしまっておくのではなく、指輪のダイヤモンドを再生させ、新しい意味を与えたのだ。

宝石の新しい使い道を見つけるだけでなく、彼女は離婚をめぐる物語を変えることにも貢献したいと考えていた。「関係を終わらせることはしばしば素晴らしい、勇気ある行為であるという視点があってほしい」と彼女は米紙ニューヨーク・タイムズに語った。

女性が別れを決意する瞬間

これは、 『This American Ex-Wife』の著者リズ・レンツが、12年間の結婚生活を経て2017年に離婚したときに実行したことだ。彼女の限界は、暴力や浮気とは関係なく訪れた。ある夜彼女が、遅くに出張から帰宅したところ、床にはゴミ袋が落ちていた。破れて中身が散乱しているのを見て、彼女はもう耐えきれなくなったのだ。

何年も家事労働をすべてこなし助けを無視されてきた彼女はこのまま結婚生活を続ければ、これから先も一生床に散らばったゴミを片付けなければならないことに気づいた。家族を台無しにしているという外部の声(彼女には2人の子供がいる)や、母親としての罪悪感という内なる声、潜在的な社会的恥辱、経済的困難の可能性など、さまざまな心配はあったが、彼女は自分の幸せのために戦う価値があると決心したのだ。 「もし私が神聖な誓いを破らず、異性間の結婚という壁を突き抜けて向こう側にたどり着かなかったのなら、今頃、幸せで楽しい人生を送ることはできなかったでしょう」

増加する独身女性たち

独身は今日、増加傾向にあり、好ましいステータスと見られるようになってきている。「この傾向は世界中で見られ、北米に限りません」とサイモンフレーザー大学の心理学准教授、ユシカ・ギルメは言う。別居や離婚に対する社会的受容の高まりをはじめ理由はさまざまだが、独身を支持する声は女性の方がより大きいようだ。

経済的自立が女性の結婚への依存度を減らしている

この現象の最も大きな理由は、女性がかつてないほど経済的に自立し自由になり、もはや役に立たなくなった状況から抜け出すのに有利な立場になったことだ。そして、経済的依存がなくなったことで、「女性が恋愛関係を結ぶ動機は以前よりも構造的に少なくなっています」とトロント大学の心理学教授ジェフ・マクドナルドは言う。「つい最近まで、経済的な見通しが立つことは結婚の大きな魅力の一つでした」

結婚は人生の唯一の筋道ってホント?

カップルであること、そして最終的には結婚することは、ずっと昔から私たちが従うように押し付けられてきた異性愛の規範だった。「文化的には、結婚や子どもを含む成人の儀式に参加するまでは、完全な大人ではないとされてきました」とレンツ。特に女性にとって、それは私たちに示される唯一の物語だった。「結婚や子供で終わらない女性の物語をいくつ思い浮かべることができますか?」と、『No One Tells You This』の著者であるグリニス・マクニコルは尋ねる。「私たちは自分自身を評価するための別の方法の例をほとんど示されていないため、その価値観から抜け出すのは非常に困難なのです」

多くの女性が大人になるためにこの定められた道をたどり、そして多くの場合、彼女たちが信じこまされてきたパートナーシップの考えは、実際とは異なることに気が付く。ギルメは、より多くの女性が独身でいることを選択する理由について「そこには平等主義的な要素がある」と語る。

女性のリベラル化が進む一方、男性は変化していない

フェミニスト革命は、女性にすべてを手に入れることができるという印象を与えた。しかし、本当にそうなのだろうか? 「残念ながら、社会が実際にそのような方法で女性を支援するために立ち上がっているとは思いません」と彼女。「その証拠に女性がよりリベラルになる一方、男性の政治的イデオロギーは実際には変化していないという政治的ギャップが存在しています」

これは、男性が家事の負担に関して性別に基づいた考えを持ち続けていることを意味する。「一方、女性はそこから進化してきました」とギルメ。エムラタは、家庭内で自分が経済的な支えになっているだけでなく、子育ての主な担い手でもあると気づいたときに目が覚めた。

自粛生活で明らかになった男女の不平等

パンデミックが起こり、こうした不平等が明るみに出た。「私たちはみな、対等なパートナーであるはずの夫たちと家に閉じ込められていました」とレンツは言う。「そして、自分たちは全く平等な関係でないことに気づいたのです。約束されていたことはすべてうまく行っていなかったのです」。女性たちがもううんざりしているのも不思議ではないだろう。

「このままでは何も変わらない」と高齢女性たちも気づき始めた

熟年離婚の増加も示唆に富む。「誰もがそうした女性たちに『頑張って乗り越えれば、子どもが巣立ったらまた素晴らしい関係になるよ』と言います」とレンツ。「しかし彼女たちはそこで自分たちがまだ同じ男性と結婚していることに気づくのです。かつてのクソ男は今もクソ男なのです」

あえて一生独身を貫く人も

女性の中には、結婚や子どもを意図的に選択しない人もいる。独身で子どももいない、ちょうど50歳になったマクニコルは、自分の人生にとても満足しているという。「安定した結婚」をしている人たちに囲まれていても、彼女は結婚したいとは思っていない。「そういったことにまったく魅力を感じません」と彼女。

フリーランスのライターとして、彼女は自由を満喫し、親しい友人という形のサポート体制を築いている。彼女の最新作『I’m Mostly Here to Enjoy Myself』は、2021年の夏に経験した、束縛されない数週間のパリ生活について綴ったものだ。「私は、複数の場所でさまざまな生活を送り、人間関係を保てることが気に入っています」と彼女は言う。「そして、これまでとはまったく違う新しい方法で、本質的に自分の時間と空間をコントロールできることも」

異性愛関係より友情関係の方がベター?

いずれも、女性には交際やつながりが必要ないということを言いたいのではない。マクドナルドは、独身の女性は独身の男性よりも幸せだと言う。女性は感情的なサポートを提供し、社会的ネットワークを維持するという特徴から「異性愛関係では、男性の方が女性よりも恩恵を受けるという説得力のある議論があります」と彼は指摘している。

今日、代わりに女性はパートナーシップがどのようなものであるかを再考している。「私たちは、関係を定義するものについて本当の意味での再検討を目撃しているのであり、それはおそらく友情へとシフトしています」とマクニコル。その結果、家族やコミュニティが伝統的な構造の外部で構築されているのだ。

人間関係のあり方は自分で選ぶ時代に

’80年代のコメディドラマ「ゴールデン・ガールズ」は50歳以上の4人の女性が一緒に家を共有し、事実上の支え合う家族を作るという、愛すべき例を示してくれた。「人間関係は人生に意義と目的をもたらします」とギルメ。「今はもっと柔軟になって、自分の望みに従って冒険を選ぶことができます。それはロマンチックなパートナーかもしれませんし、『ゴールデン・ガールズ』かもしれないのです」

マクニコルは将来的にそのような関係を期待している。「(ゴールデン・ガールたちのように)マイアミに引っ越すかどうかは分からないけど、確かにそれは夢のような話ですね」

<ELLE>
結婚にウンザリ? より多くの女性が独身を選ぶようになった理由

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