「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められているでしょうか? 事例とともに老後生活について考えていきます。
年収800万円男性「そろそろ限界かもしれない」
「2025年問題」。いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となり、医療や介護などの負担が増大する懸念を指します。彼らの子どもたちは、今、親世代に対してどういった感情を抱えているのでしょうか。
Cさん(42歳・男性)。両親ともに71歳、まさに2025年問題直面の世代といえます。Cさんの年収は、年に2回のボーナスを含め、800万円。結婚歴はなく、現在まで独身です。
「自分の生活費だけ賄えればいいので、日々の生活には困っていませんが、両親が心配なことは確かです。一人っ子なので、親の世話ができるのは自分しかいないんですよね。従兄弟や叔父とは全然連絡をとっていなくて、あてになりませんし……。貯金は1,500万円程度あります。あと投資信託が今500万円くらいかな。月々の配当金もあるので、『自分だけ』に限っていえば、裕福なほうなんじゃないですかね」
「……親の話が絡むと、まったく別です。親は貯蓄なんて全然していなくて、住宅ローン返済済みの一軒家に住んでいるんですが、いつ倒れるかわかったものじゃない。そろそろ限界かもしれない」
「心配しているんです。ものすごく。自分はお金もあるから、『介護施設入ろうよ。お金の心配はいらないから』と言ったんですが、烈火のごとく怒ってしまって……。老人ホームというものに、相当抵抗があるみたいです」
「ただ、このまま家に住まわせておくには危ないんですよ。たまに帰省すると、玄関のドアが開けっ放しだったり、酷いときはコンロの火がつけっぱなしだったりするので」
「最近は、救急車を呼ぶことも増えました。骨折や急な熱、嘔吐などがあると、親から電話がかかってくるんですね。心配だからそりゃ飛んでいきます。医療費はそこまで負担ではないですが、問題は、緊急事態が発生するたびに仕事を早退したり、休んだりしているということです。本当にクビになってもおかしくないと思いますが、家族のことも放っておけませんし……」
介護問題は、日本全体で深刻な問題と化しています。厚生労働省の『2022年 国民生活基礎調査の概況』によると、在宅介護にかける時間は「ほとんど終日」が19.0%、「半日程度」が11.1%、2~3時間程度が10.9%です。また、要介護4では41.2%が「ほとんど終日」、要介護5では63.1%が「ほとんど終日」と回答しています。
Cさんは、「さすがに介護だけにこの先の人生を費やしていくことはできない」と語ります。
「やっぱり、どんな手を使ってでも老人ホームに入居させるしかないんでしょうか。火事でも何でも、事件が起きてからじゃ遅いとは重々承知しています。休みの日には情報収集しているんですが……」
入居が難しい施設も…老人ホームをどう選ぶか
老人ホームと一括りにいっても、その種類は様々。介護付有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅、地域密着型のグループホームを運営する上村岩男氏は、下記のような説明をしています。
(1)有料老人ホーム
(2)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
(3)認知症高齢者グループホーム(グループホーム)
(4)特別養護老人ホーム(特養)
(5)軽費老人ホーム
(6)介護老人保健施設(老健)
(7)介護医療院等
となります。このうち、一般的に利用されている供給ベッド数が多いのは、(1)有料老人ホームと、(2)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、(3)認知症高齢者グループホーム(グループホーム)、(4)特別養護老人ホーム等になります。
ただ、これらのうち、(4)特別養護老人ホーム(特養)は現状では待機者数が多く、また、介護度が3以上を原則としていることから、(1)(2)(3)に比べると入居しづらい状況があります。
そのため、介護施設を検討する際には、入居する側の介護度や認知症の有無なども検討の重要なファクターとなりますが、まずは、(1)有料老人ホームと、(2)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、(3)認知症高齢者グループホーム(グループホーム)が入居可能性の高い選択肢となるはずです。”書籍『人生の最後を「感動」で締めくくる! 介護施設選び5つのポイント』
寿命が伸びるなかで膨れあがる老後生活費、その一方で減額続きの年金、増えることのない給料、どんどん高くなる税金と社会保険料……このように表面的な環境だけ見れば、まさにお先真っ暗な日本。
定年まで勤めあげれば安定した老後が約束されていた時代は、完全に終わったといえましょう。豊かな人生を享受するための「学び」が求められています。
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40代独身・一人っ子男性「親は貯蓄なし」「老人ホームに入ってもらいたいが…」頭を抱えるワケ