「将来を考えた時、家を買っておいた方がいいかどうか迷っている」「こんな自分でも家が買えるのだろうか」…40歳前後のいわゆるアラフォー世代の独身女性から、そんな住宅購入にまつわる相談をたびたび受けます。「この先結婚するかもしれない」「でもこのまま独身で過ごすことも考えておきたい」…将来のイメージが定まりにくい中、どうすればよいのか少なからずの方々が悩まれているようです。
住宅購入は家を自分の資産にできるというよさはありますが、人生の中のかなり大きな買い物であることは間違いなく、ライフプラン、マネープランにも影響が出てくる一大イベントです。衝動買いしてしまった!というようなことがないように、押さえておきたいポイントを確認しておきましょう。
◆相談者プロフィール
・39歳女性、独身、会社員
・年収:500万円
・預貯金:250万円
・家賃:月8万円(賃貸マンション)
◆相談内容
先日、独身の友達に会った時に「新築マンションを思いきって買ったの!」と言われました。「とても快適で家で過ごすのが楽しくなったし、気分も上がって日々のストレスが減った気がする」と聞いて、それから急に、自分も家を買いたい気持ちが高まってきました。
よく考えたら、毎月8万円の家賃を今後も払い続けるのがもったいない気もして、この家賃を住宅ローンに置きかえたら、私も家を買えるのではないかと思っています。
これまでは、結婚も考えていたので家を買うのは家庭を持ってからと思っていたのですが、今のところ結婚の予定もなく、このまま独身で過ごすのも悪くないなと考え始めたところです。
今の年収や預貯金の状況でも、買えそうなマンションがあれば知りたいです。
独身女性のマンション購入が増えている
SUUMOリサーチセンターの「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、契約世帯主をライフステージ別で見た時に、最も多いのは「子どもあり世帯」で全体の36.4%を占めます。しかしこの割合は、2001年の調査開始時(47.6%)からは11.2ポイント減少しています。
一方で、「シングル世帯」の割合は2001年の調査開始時以来最も高く18.2%に。シングル男性が1.1ポイント増加して7.3%になったのに対して、シングル女性は4.4ポイント増加して10.9%になりました。
過去と比べて、結婚しない女性が増えてきているという背景もありますが、独身女性で家を買う人が増えてきている傾向がうかがえます。
まずは賃貸と購入の違いを確認!
さて、相談者さんはマンションを買うにあたって、「今の毎月の家賃を住宅ローンの支払いに置きかえれば大丈夫」と考えているようですが、住宅購入に関する支出は毎月の住宅ローン返済だけではありません。
諸費用として登記費用や住宅ローン保証料、仲介手数料など住宅価格以外にかかる費用や、固定費として税金や火災保険料、管理費など継続してかかる費用もあります。
賃貸と購入の違いについて、負担する費用やライフスタイルの視点からメリット・デメリットを整理してみましょう。
【賃貸】
▽メリット
・住み替えの自由度が高い
・故障による設備交換や修理、外観リフォーム等の費用負担が不要
▽デメリット
・高齢になると物件を借りにくくなる
・リフォームや設備交換の自由度が低い
・家賃の支払いが住み続ける間(一生涯)続く
【購入】
▽メリット
・自分の資産になる
・ローン完済後は住居費負担が軽減
・リフォームや設備交換の自由度が高い
▽デメリット
・住み替えの自由度が低い
・ローン完済後も固定資産税の負担が続く(マンションの場合は管理費、駐車場代なども)
・故障による設備交換や修理の費用負担が生じる
資金面だけでなくライフプランも含めて考えたい
相談者さんのように、生涯独身で過ごす可能性もあると考えられている場合は、資金面でのメリット・デメリットから検討するだけでなく、老後の暮らしも見据えて考える必要があります。
賃貸の場合は、老後の収入に見合った家に住み替えることが気軽にできますが、高齢になると親や兄弟姉妹がすでに他界していて保証人を立てられず、新たな家の契約ができないケースもあります。保証会社による保証を受けて入居できる場合もありますが、全ての物件が対象になるわけではありません。
将来、このまま賃貸で住み続ける場合は、老後の家賃と住み替えについてのプランをしっかりと考えておきたいですね。
購入の場合は、家が自分の資産になることが老後の大きな安心のひとつになります。例えば、家を売却してその資金を高齢者施設入居の費用に充てるという考え方もあるでしょう。その場合は利便性や環境など条件がよく、売却しやすい物件を選びたいところです。
また、自宅を担保に生活資金を借り入れできる「リバースモーゲージ」という制度もあります。借入人に万一のことがあった時には、住んでいた自宅の不動産を処分して借入金を返済する仕組みです。
相談者さんのケースで検証…いくらのマンションなら購入できる?
▽家計に見合った住宅ローン返済額とは?
まず、現在の家賃(8万円/月)と同額のローン返済で考えるのは危険です。なぜならば、マンション購入後にかかる固定支出として、ローン返済の他に固定資産税・都市計画税のような税金、火災保険料、管理費、修繕積立金などがあるからです。また、今より広い住居となれば、水道光熱費も増えるかもしれません。
筆者の体験談ですが、新築マンション購入時の管理費・修繕積立金は合計2万0890円でしたが、18年経った今、2万9900円となり、約1万円アップしています。このように、年々金額が上がっていくケースも少なくありません。
【毎月の住宅ローン返済額の考え方】
毎月のローン返済額 < 毎月の家賃+住宅資金用として毎月貯蓄している額
(※参考:NPO法人日本FP協会)
現在、住宅資金用として毎月貯蓄をしている場合は、毎月の家賃に貯蓄を合わせた額に対してローン返済額が上回らないようなプランをおすすめします。要するに、住宅資金として使うことができる預貯金が別途確保できている場合は、現在の家賃と同額の住宅ローンを組んでも、その他の固定支出は預貯金から補填できるという考え方です。
▽住居費は年収の25%までを目安に
一般的に、住宅資金に充てる金額は年収の25%程度までと言われています。相談者さんの場合は年収500万円で計算すると約10万4000円/月になりますが、筆者としては年収の15%~20%(約6万2500円~8万3000円)が無理なく生活できる目安と考えています。ちょうど今の家賃よりやや少なめか同等の水準ですね。
もちろん貯蓄額や日々の収支、今後のキャリアプラン等によっても考え方は変わりますが、現時点での貯蓄額250万円から緊急時の生活防衛資金として確保しておきたい金額(生活費の半年分)を差し引き、残りの約100万円を仮に住宅資金に充てられるとしても、購入時の諸費用でほぼ消えてしまうことも想像できます。
もし、親からの資金援助を受けられるのであれば上手に活用したいですが、いずれにしても無理のない返済プランを検討するということは非常に大切です。
▽勘違いに注意!借り入れできる金額と返済していける金額は必ずしも一致しない
住宅ローンは、窓口の金融機関、返済期間や返済方法、金利の種類などにより、あらゆるプランがありますが、ここでは一例として、フラット35(全期間固定金利)を利用した場合の借入可能額をもとに確認してみましょう。
【前提条件】
年収500万円(税込み)、返済期間35年、返済金利1.76%
※金利はフラット35(2023年4月)の最頻数値を利用
上記条件から計算すると、相談者さんの借入可能額は4570万円になります。
借入可能額とは、住宅購入資金のうち自己資金では足りない部分で金融機関から借りることができる金額です。
こんなに借りることができるの?と思われるかもしれませんが、ここで注意したいのが、借入可能額と実際に無理なく返済していける金額は、必ずしもイコールではないということです。
では視点を変えて、仮に最大の借入可能額4570万円を借りた場合、月々の返済額はいくらになるでしょうか。なんと14万6000円です。返済していくには現実的にかなり厳しい金額です。
▽無理なく返済していけるプランは?
そこで前述のとおり、今の家賃より少ないもしくは同等の無理のない返済金額で住宅ローンを考えるとすると、どれくらいの金額を借りることができるでしょうか。
毎月7万円のローン返済であれば2193万円、毎月8万円だと2507万円になります。
物件を選ぶ際、上記の借入金額と準備できる頭金(住宅購入の際に最初に現金で支払うお金)を合計した金額を購入価格の目安として考えるとよいでしょう。頭金がほとんど準備できそうにない場合は、2500万円くらいまでの物件を探すことになりますが、何らかの形で少しでも頭金を準備できるのであれば、もう少し高い価格の物件も選択肢に入れられるでしょう。また、頭金を一定準備することで住宅ローンの返済金利優遇を受けられるケースもあります。
なお、住宅ローンの返済金利は、金融機関や金利の種類(固定か変動か)、住宅ローンを組む時期によっても異なります。この返済金利の水準により、月々のローン返済額が同じであっても借入れできる金額は変わってきます。
自分の希望する住宅購入を実現するために、どのようなプランが最適なのか、様々な条件のもとで比較検討するようにしてください。
これからの時代は、キャリアを積んで一定の収入を得る女性が増えてくるにつれて、相談者さんのように「自分の家を持ちたい」と考える独身女性も増えると感じています。
繰り返しになりますが、住宅購入は人生における大きな買い物ですから、色々な視点を持って、まずは自分にとって賃貸と購入のどちらがよりよい選択なのか?というところから考えてみてください。
そして、購入しようと決めた場合は「自分が買うことができる物件を探す」という視点も必要ですが、筆者としては「自分の希望する住宅購入にあたってどのようなマネープランを組めばよいか?」という視点もぜひ持っていただきたいです。
<まいどなニュース>
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