母子家庭の実情

止まらない物価高で生活苦に陥る人たちが急増するなか、特に厳しい生活を余儀なくされているのが母子世帯。その実態を紐解いていきましょう。

全国にひとり親世帯は72万世帯、その9割が母子世帯

2020年に行われた『国勢調査』によると、全国のひとり親世帯は72万1,290世帯。そのうち「母子世帯」は64万6,809世帯、「父子世帯」は7万4,481世帯。

ひとり親となった理由別にみていくと、母子世帯は「未婚」が8万2,704世帯、死別」が4万2,842世帯、「離別」が52万1,263世帯。一方で父子世帯は「未婚」が3,363世帯、「死別」が1万5,950世帯、「離別」が5万5,168世帯となっています。

母子世帯について細かくみていきます。

子どもの人数別にみていくと、子どもが1人の世帯は35万4,344世帯で全体の55%。子どもが2人の世帯は22万0,498世帯で全チアの34%。子どもが3人以上の世帯は7万1,967世帯で全体の11%です。

最年少の子どもの年齢別にみていくと、「12~14歳」「15~17歳」が多く、ともに2割弱。子どもがある程度大きくなってから離別に踏み切るケースが多いからだと考えられます。

【最年少の子どもの年齢別「母子世帯数」】
0歳:7,666世帯(1.1%)
1~2歳:28,455世帯(4.3%)
3~5歳:73,579世帯(11.3%)
6~8歳:97,028世帯(15.0%)
9~11歳:115,428世帯(17.8%)
12~14歳:127,778世帯(19.7%)
15~17歳:128,783世帯(19.9%)
18~19歳:68,092世帯(10.5%)
出所:総務省統計局『2020年国勢調査』より算出

都道府県別にみていくと、「東京都」が最も母子世帯が多く、5万3,043世帯。続く「大阪府」は4万8,627世帯。「神奈川県」「北海道」「福岡県」と続きます(関連記事:『都道府県「母子世帯率」ランキング…2020年国勢調査より』)。

一方、総世帯数に占める母子世帯の割合が最も高いのは「沖縄県」で2.2%。50世帯に1世帯以上が母子世帯です。以下「宮崎県」「鹿児島県」「高知県」「和歌山県」と続きます。一方で母子世帯の割合が最も低いのは「東京都」で0.73%。以下「神奈川県」「富山県」「千葉県」「埼玉県」と続きます。

【都道府県「母子世帯率」上位5、下位5】
1位「沖縄県」2.22%
2位「宮崎県」1.85%
3位「鹿児島県」1.75%
4位「高知県」1.65%
5位「和歌山県」1.64%
ーーーーーーーーーーーーー
43位「埼玉県」1.02%
44位「千葉県」0.96%
45位「富山県」0.96%
46位「神奈川県」0.90%
47位「東京都」0.73%
出所:総務省統計局『2020年国勢調査』より算出

平均手取り15万円…非正規が多い母子世帯

母子世帯を語る際、一緒に語られることが多いのが「貧困」。なぜ、母子世帯が困窮するかはその就業形態にあります。
64.6万の母子世帯のうち、就業者は53.1万世帯で、会社勤めは50.2世帯。そのうち正社員は26.2万世帯、派遣社員は2.3万世帯、パート・アルバイトが20.7万世帯。完全な失業者も2万8,316世帯います。

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、女性正社員の平均給与(所定内給与)は平均月27万0,600万円。手取りにすると月21万円ほどで、年収は421万9,100円です。一方、女性非正規の平均給与は月19万5,400円。手取りにすると15万円、年収は262万9,500円です。またパート・アルバイトの1ヵ月の月給は平均9万9,532円*。1人で生きていくのもやっとです。
*厚生労働省『毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)』

出産を機に会社を辞めたり、働き方を変えたりする女性は多く、ひとり親となったときに正社員を目指すものの難しく、仕方なく非正規を選択するケースが多くあります。

――1日の生活費は200円。どう生きていけばいいのか

そんな母子世帯がクローズアップされ、一時話題になりましたが、決して大げさではない現状があります。そんな母子をサポートする公的機関等の支援はいろいろあります。

まず、ひとり親のみならず、0歳から中学校卒業までの子どもを養育している人に支給される「児童手当」。また離別によるひとり親世帯の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童の福祉の増進を図ることを目的として支給される「児童扶養手当」。 18歳に達する日以降の最初の3月31日までにある子ども(障害児の場合は20歳未満)を監護している母、または監護しかつ生計を同じくする父、もしくは父母に代わってその児童を養育している祖父母等に支給されます。

手当は全部支給なら月4万3,070円。子どもの人数により加算があり、子ども2人目で月1万0,170円、子ども3人目以降は1人につき6,100円。ただし所得制限があり、2人世帯の場合、全部支給で160万円、一部支給で365万円となっています。

いざという時は「公的貸付制度」も。自治体をはじめとする公的機関やそれに準ずる機関が実施している貸し付けで、原則的に返済が必要であるものの、無利子や低利子であったり、返済に関して一般の金融機関よりも柔軟に対応してくれたりします。代表的な「母子福祉資金」や「生活福祉資金貸付制度」などさまざまなものがあり、返済負担が最少になるような仕組みが取られています。

どのような支援が受けられるのか、母子世帯でも事情はさまざまなので、まずは市区町村の窓口に相談するのが第一歩。それにも関わらず、意外と支援を受けていない母子世帯も多いといいます。生活に余裕がないなか、次第に周囲から孤立していく……そのようなケースも珍しくないのです。母子世帯にまず必要なのは、孤立させない周囲の目かもしれません。

<資産形成ゴールドオンライン>
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