「生涯未婚率の増加」がニュースになる昨今、一生結婚しないかもしれない可能性を考慮している人は、以前よりもずっと増えている。
今から42年前の1980年、生涯未婚率(50歳時点での未婚割合)は男性2.6%、女性4.5%だった。つまり50歳時点で未婚の男性は38.5人に1人。女性は22.2人に1人だったわけだ。これが2020年になると、男性は3.5人に1人、女性は5.6人に1人が50歳時点で未婚ということになる。
生涯未婚で過ごすとなると、気になるのはお金の問題。貯金や資産運用、老後の備えなど、独身者はどうお金と向き合うべきか。
■日本の税制は独身者に厳しい
本来、独身者と家族持ちとでは、お金についても老後対策についても、「気をつけるべきポイント」が違います。税金や社会保険も違うし、老後に必要なお金、自分が病気や介護になったときの備えはもちろん、相続や親の介護などへの向き合い方も異なります。(P4)
『ひとりで楽しく生きるための お金大全 「もしかして結婚しないかも?」と思ったらやっておきたい50のこと』(板倉京著、ダイヤモンド社)はこんな観点から、独身者向けにお金の知識を授けてくれる。
そもそも、単身者はお金について明確に「不利」だ。
税金一つとっても、日本の税制は家族持ちに有利に設計されている。
年収700万円の独身者と、年収700万円の世帯主+扶養の範囲内(年収130万円以内)で働く配偶者のいる家族を比較すると、当然手取り額は後者の方が多くなるが、その差は130万円以上になる。支払う税金の額に差が出るからである。
また年収1000万円の独身者と、年収600万円の世帯主と年収400万円の配偶者のいる家族を比較すると、双方とも世帯年収は1000万円で同じだが、手取りは年間50万円ほどの差がついてしまう。もちろん、手取りが多いのは後者である。
手取り年収を比較すると、独身者はコスパが悪いのだ。
■独身者を待ち受ける老後のお金問題
一方で、独身者には教育費や子育て費用がかからないというメリットもある。手取りがいくら残るかといった点では不利だが、「自由に使えるお金」という面では有利だろう。
ただ、だからといって自由気ままに暮らしていると、そのツケは老後に回ってくる。「年金」である。
独身者が自分の分しか支給されないのに対して、配偶者がいればもらえる年金は二人分となる。専業主婦(夫)の世帯で、夫婦のどちらかが年金保険料を払っていなかった家庭でも、国民年金は支給される。独身者と夫婦世帯では年間で100万円以上も支給額に差がつくこともある。
共働きであっても「年金で悠々自適」はなかなか厳しい昨今だが、老後のお金事情は独身者にはさらに厳しいのである。
これらの事情を踏まえて、今独身者は何をすべきか。
独身者に向けた節約・節税、貯金、資産運用まで、本書では独身者が一生お金で苦労しないための知恵を授けてくれる。
一人で過ごすことが気に入っている人にとって、独身生活は苦にはならないが、お金に窮するのは苦しい。楽しく独身生活をまっとうするためにも、本書は一読の価値があるだろう。
<新刊JP>
生涯独身者を待ち受ける厳しいお金の問題