多様化する令和の結婚観。法律婚ではなく、事実婚を選択する人も増えている。事実婚は、法律婚と比べ、パートナー関係の自由度が高いものとなる反面、法的なバックアップが受けられないというデメリットがある。改めて、“結婚”とは何か。法律婚・事実婚の良い点、悪い点はどこにあるのか。弁護士の監修を交えながら考察する。
結婚してよかった理由は、誰かが一緒にいてくれる安心感
生涯未婚率が年々上昇し、「結婚するのが当たり前」の時代から「結婚は自由」という価値観に変容した。この時代に結婚(法律婚)した人たちは、その後、どう思っているのだろうか。
2021年10月26~31日、タメニーが運営する結婚相談所「パートナーエージェント」が20~49歳の既婚男女2380人を対象にした調査によると、「結婚の良いところ」として、男性で最も多かった回答は「誰かが一緒にいてくれる安心感」(43.4%)、2位は「話し相手がいること」(42.8%)、3位は「信頼できる人がいること」(40.1%)であった。
一方、女性で最も多かったのは「頼れる人がいること」(53.2%)、2位は「誰かが一緒にいてくれる安心感」(52.7%)、3位は「話し相手がいること」(45.3%)だった。
男女ともに、「結婚の良い点」として “相手そのものの存在”を挙げている。しかし、この結果だけを見ると、「それって結婚しなくてもパートナーがいれば得られる感覚なのでは?」という感想を持つ人も多いだろう。
【弁護士に聞いた】結婚することに意味はある? 「法律婚」と「事実婚」
近年、法律婚をせずに、事実婚を選択するカップルが、メディアなどに取り上げられるようになった。内閣府男女共同参画局が実施した「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査(令和3年度)」によると、調査回答者のうち「配偶者(事実婚・内縁)がいる」と回答した人は2.3%。
事実婚と法律婚は、法的にどのような違いがあるのか。男女問題に詳しい尾崎聖弥弁護士に聞いた。
◆婚姻届を出していても、結婚関係が認められないケースも?
尾崎弁護士「結婚関係にある2人が婚姻届を出せば法律婚、婚姻届を出さなければ事実婚となります。一般的な結婚は、法律婚を指すことが多いですが、事実婚も含まれます。法律上、結婚とは、社会生活上夫婦と認められる関係のこと。結婚式の有無、生活の状況、周囲の認識など、いろいろな要素を検討して裁判所が判断します。
つまり、婚姻届を出していたとしても、社会生活上夫婦と認められる関係がないならば、”偽装結婚”として結婚関係が認められません。逆に婚姻届を出していなかったとしても、社会生活上夫婦と認められる関係にあれば、事実婚という結婚関係が認められるのです」
多くの人がイメージする結婚は法律婚だが、法律上は事実婚も結婚関係だといえるようだ。事実婚と法律婚、それぞれの違いを詳しく解説してもらった。
◆法律婚は「名字」をそろえなければならない
尾崎弁護士(以下、同)「法律婚と事実婚の大きな違いの一つは、法律婚の場合は名字を夫か妻どちらかのものにそろえなければならないことです。逆に言うと、事実婚の場合は名字をそろえたくてもそろえることはできません」
◆法律婚は「離婚」するのが大変
「二つ目の大きな違いは離婚です。法律婚の場合は、夫婦のどちらかが離婚に合意しなければ、裁判をしなくてはならず、裁判をしたとしても法律上の離婚理由がなければ離婚できません。事実婚の場合は、そのような制約はありません」
◆事実婚は「法定相続」はできない
「法律婚でも事実婚でも、裁判上、婚姻費用の分担や、離婚した際の財産分与は認められます。しかし夫婦のどちらかが亡くなった場合、法律婚の場合は法定相続ができますが、事実婚はできません」
◆事実婚は「認知」などの手続きが必要
「最後に子どもについてです。実際に出産するのは女性ですので、法律婚でも事実婚でも、出産したその瞬間から、女性はその子どもの法律上の母となります。しかし法律上の父についてはそうではありません。法律婚の場合には、妻が出産すれば、何もしなくてもその夫が法律上の父となりますが、事実婚の場合には、夫が法律上の父となるためには、認知などの手続きが必要です。また、法律婚の場合は父と母が2人とも親権者となる一方、事実婚の場合には、どちらか1人しか親権者になることはできません」
“契約でしばられない“がゆえのデメリットも存在する
近年、事実婚をした女性芸能人の報道を見て、自立した格好いい選択だという声が挙がる一方、名字を変えられないなどの理由で、事実婚を選ぶしかないという声もある。
事実婚は、法律に縛られることはない。しかし、“しばられない”がゆえのデメリットも多数存在する。
法律婚、事実婚、それぞれのメリット・デメリットをよく考え、自分に合った「結婚の形」を選択しよう。
<AllAbout NEWS>
事実婚が急増、多様化する令和のパートナーシップ。「結婚」の法的なメリットとデメリットを改めて考えた