2021年の婚姻件数が戦後最少を更新するなど、「結婚離れ」が進んでいる。かつては男女とも9割超が1度は経験する人生の節目のイベントだったが、男性のほぼ4人に1人、女性の6人に1人が「生涯未婚」とされる時代を迎えている。
ジューンブライド(6月の結婚、6月の花嫁)――。結婚式を考えている人なら、1度は耳にしたことがある言葉かもしれない。「6月に結婚した花嫁は幸せになれる」との、欧州の言い伝えに由来するとされる。ローマ神話で結婚をつかさどる女神ジュノーの月にちなんだとの説などが知られている。
ロマンチックな響きが印象的だが、実際には、日本では6月の結婚はそう多くはないそうだ。梅雨と重なるせいらしい。人気が集中するのは気候のよい9~11月、3~5月という。
もっとも、日本では結婚自体が減っている。厚生労働省が公表した21年の人口動態統計(概数)によると、婚姻件数は戦後最少の約50万件だった。ピークは団塊世代(1947~49年生まれ)が25歳前後となった1972年で、半分以下の水準だ。少子化による若年層の減少だけでは説明できない急減ぶりだ。
「日本人の結婚に対する価値観は、この40年間で大きく変化した」。リクルートブライダル総研の落合歩所長は語る。
国立社会保障・人口問題研究所によると、50歳までに一度も結婚しない人の割合を表した「生涯未婚率」は、1980年に男性が2・6%、女性が4・5%。それが2020年には男性がほぼ4人に1人の25・7%、女性が16・4%にまで上昇した。
仕事でのキャリアアップなど、結婚よりも、自分の時間を大事にしたいといった価値観が広まったという。さらに、かつては地域や職場の世話好きな人が縁談を持ってきたが、今や「おせっかい」扱いされかねない。
「婚活」という言葉に象徴されるように、「結婚に意欲を持ち、自分から機会をつかみにいかなければ後押しは得にくい」(落合氏)という。こうした意識の変化が、少子化による若年層の減少と相まって婚姻数の急減につながった。
ただ、海外の先進国などとの比較では、別の側面も見えてくる。OECD(経済協力開発機構)加盟の7か国を対象とした5年ごとの意識調査で、18年度に「結婚したほうがよい」とした割合は日本が50・9%だった。
前回調査よりも11・6ポイント低下したが、米国(52・7%)に次いで高く、英国(47・4%)、韓国(46・1%)、ドイツ(45・9%)、フランス(41・5%)などを上回った。逆に「結婚しない方がよい」は日本が35・4%で、7か国中最も低かった。日本人の結婚への関心は依然として高いともいえる。
直近の婚姻数の動向は長期にわたる減少傾向に、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた結果だ。結婚式の延期や中止、結婚自体を取りやめる人が相次いだ。外出や会食の自粛で、結婚につながる出会いや、交際の機会が失われた影響はしばらく続くとみられている。