独身研究家の荒川氏のコラムです。
日本は間もなく「多死社会」に突入します。死亡者年間150万人以上が50年以上も継続する見込みです。150万人のうちの9割以上が75歳以上の高齢者の死亡です。これは、すでに超高齢国家となり日本の人口構成の大きな比率を占める75歳以上の後期高齢者群が、まとめて寿命を迎えるタイミングに入るからです。
男女ともに配偶者と死別した人の死亡中央値がもっとも高く、平均寿命を超えます。一方で、男性では未婚の死亡年齢がもっとも若く、67.2歳で未婚男性の半分は亡くなっていることになります。これはほぼ平均寿命平均と同一値の有配偶男性より14年以上も早い。離別男性も平均寿命を大きく下回り、72.9歳です。未婚でも離別でも独身という状態にある男性は短命であることが分かります。
反対に、女性では有配偶女性の死亡中央値が78.6歳と一番低く、女性の平均寿命を大きく下回ります。むしろ、女性の場合、未婚で81.6歳、離別でも80.9歳と、独身のほうが長生きです。ここからは「一人では生きていけない男・一人だと長生きする女」という構造も見えてきます。この傾向は決して2020年だけの特殊な事例ではなく、配偶関係別死亡統計のある1980年代から一緒です。
多少の違いはあっても、50歳以上でさえ未婚男性がもっとも短命です。半数が68歳くらいで死亡しています。ということは、未婚男性の半分は65歳から年金を受け取ったとしても、ほぼ3年程度しか受け取れない計算です。
独身が短命であるという理由は、生活習慣によるところが大きいと思われます。
有配偶女性の死亡中央値が低くなるのは、有配偶である期間が男性より短いため、総数の母数が小さくなるために起きた計算上の問題です。大抵の妻は夫より長生きです。つまり、多くの有配偶女性はそのまま死別女性へと移行します。実際、実数では有配偶のまま死亡する女性の数は少ない。50~64歳での人口千対死亡率で見れば、有配偶の男性は3.1人、女性は1.9人です。つまり、結婚しているから女性が短命になるというわけではありません。
「孤独に強い」のは男性というイメージがあるかもしれませんが、逆です。実際、一人や孤独を快適だと感じる割合は圧倒的に女性のほうが多いことが分かっています。私のラボで2020年に調査した結果によれば、「孤独を楽しめる」と回答した割合は、未既婚ともに女性のほうが男性より1.3倍も「孤独耐性」が高いのです(1都3県20~50代未既婚男女約1万5000人を対象)。1.3倍とは未婚男女の死亡中央値年齢の差とも一致します。
一人であることが寂しい、つらい、苦しいとばかり思っている人は永遠に「一人を楽しめない」どころか、周りに人がいてもその苦しみから逃れることもできなくなるものです。そして、多分「一人を楽しめない」者から、人間は死んでいくのではないでしょうか。
なんとなく男性と女性の違いは感覚としてもわかります。
こういった統計結果が出てる以上、独りでいることを楽しめるように準備し、生活習慣を見直していくことが必要そうですね。
<PERSIDENT Online>
「一人だと短命になる男、一人だと長生きする女」年金すら受け取れない独身男性の虚しい人生