日本の格差社会化がよくいわれますが、そのひとつに所得格差があります。
所得格差というと男女の違いがよく取り沙汰されますが、格差が生まれる背景には、性別だけではなく、仕事の内容によっても、企業の違いによっても、地域によっても、正規なのか非正規なのかという就業形態によっても違います。
さらに労働時間の差によっても所得実額は変わるものであり、本来はそうした細かい分類の区別をしたうえでデータをみるべきであって、単純に男女の区別だけで判断できるものではありません。
「金がないから結婚できない」は本当?
ここでは、あまり語られることのない「配偶関係による所得格差」についてみてみたいと思います。
婚活の話題でよく言われるように「年収いくら以上が条件」というものがあります。実際、婚活の現場においては、年収いくら以上という足切りがあるとも聞きます。年収別の生涯未婚率を紐解けば、男性の場合は、年収が低ければ低いほど未婚率が高くなるという強い正の相関があることも事実です。
男女差だけでなく配偶関係格差も
男性に関しては、見事なほど既婚者と未婚者の違いが明確です。特に男性の40歳以上では1.5倍以上の年収格差があります。所得の男女格差というより、配偶関係格差、もっと細かくいえば既婚男性とそれ以外との格差という形といえるのではないでしょうか。
「結婚できる男性は年収が高いから」という結婚の因果とからめて推論しがちですが、むしろ「結婚した男性は稼がざるを得なくなる」という見方もできると考えられます。
単に、男女だけの所得や、配偶関係だけの別で所得を見てしまうと、「女性より男性のほうが多い」「未婚より既婚のほうが多い。というより既婚男性だけが多い」というような見え方になってしまいますが、男女ペアにした場合のシミュレーションでもわかる通り、それほど大きな違いはないわけです。
むしろ、夫婦の場合は、妻が出産や育児などで稼げない場合、夫が同年代の未婚より頑張って稼いでいるだけのことなのかもしれません。それは結果としてそうなっているだけで、年収が高いから結婚できたという因果には必ずしもなりません。
男女全体総数で比較した時に男女個人の所得格差が出るのは、こうした既婚男女の部分が大きいわけです。しかし、既婚男女間において開きがあるとはいえ、個々の夫婦が合意と信頼の下それぞれの役割を分業しているのであれば、それは尊重すべきことでもあり、何も全員が同じ労働時間、同じ所得を得なければいけないと強制すべきものでもないでしょう。
「デート経験なし4割」というものだけが話題になってあまり取り沙汰されていませんが、あの令和4年版『男女共同参画白書』の中には、配偶者控除や第3号被保険者制度などの社会保障制度の見直しが明記されています。
白書の言葉をそのまま用いれば「税制、社会保障制度、企業の配偶者手当といった制度・慣行が、女性を専業主婦、または妻は働くとしても家計の補助というモデルの枠内にとどめている一因ではないか」と、配偶者控除や第3号被保険者制度があるから女性が働かないのだ、といわんばかりの内容です。加えて、民間企業の家族手当にまで文句をつけるという大きなお世話まで感じられます。
確かに、103万円や130万円など控除の恩恵を受けるために就業制限している例もあるでしょう。しかし、これらの控除や家族手当まで廃止されるとなると手取りが減って困る世帯もあると思います。
専業主婦世帯が必ずしも夫の一馬力だけで悠々自適に暮らせる世帯ばかりではありません。事情により働けない人もいるでしょう。しかし、この白書に漂う空気感を一言でいえば「もはや全員働け」という意図がくみ取れます。
<東洋経済ONLINE>
未婚と既婚の「所得差」こんなにも違う驚きの実態