老後に向けた資産形成

人生100年時代につきまとう老後不安。特に単身世帯にとって、公的年金だけで生活を維持できるかは切実な問題です。しかし、なかには「国を頼りにしない」と決意し、盤石な資産を築き上げる人々も。ある女性の見事な資産形成術を見ていきます。

45歳からの逆算で掴んだ安心感

都内のIT企業でマネージャー職を務める佐藤美智子さん(52歳・仮名)。手取り月収は約40万円。現在の運用資産は約4,500万円に達しています。彼女の資産形成が劇的に加速したのは、45歳のときに訪れた人生の転機がきっかけでした。

「40代前半までの貯金は約800万円。平均的な独身会社員だと思っていました。ところが、当時お付き合いしていた方と別れ、生涯独身を覚悟したとき、ふと将来の年金額を試算してみたんです。結果は手取りで月15万円前後。今の生活水準を維持するのは到底無理だと感じました」

佐藤さんは、年金制度が崩壊するとは思っていませんでしたが、「年金だけに依存する怖さ」を痛感したといいます。

「だったら、年金がなくても生きていける設計を自分で作ろう。そう決めたんです」

まず着手したのは、住まいの確保でした。

「家賃を払い続けるのは、老後の不安を先送りしているだけ。45歳のとき、都心の資産価値が落ちにくいエリアで4,500万円の中古マンションを購入しました。当時は低金利で、変動金利0.4%台のローンを組めたのが大きかったですね」

周囲からは「独身で4,500万円の借金はリスクだ」と言われましたが、佐藤さんの考えは違いました。

「住宅ローンはリスクではなく、住居費を長期でコントロールするための道具。ローン控除もフル活用し、現役時代の住居費を固定できたことで、将来の資金計画が明確になりました」

住まいを整えた佐藤さんは、余剰資金を米国株の高配当・増配銘柄やETFへ投入し始めます。

「狙ったのは派手な値上がりではなく、将来、年金の代わりに入ってくるお金です。利回りは年4〜6%を想定し、現在は年間約150万円(税引前)の配当収入を得ています。この収入があるだけで、最悪でも生活は破綻しないという安心感が生まれました」

佐藤さんのゴールは65歳。目標は資産1億円規模、月35万円のキャッシュフローです。

「65歳からは自宅を月20万円前後で賃貸に出し、自分は実家や郊外へ移る予定です。家賃収入と配当。年金はおまけくらいに考えておいて、『年金なんていりません』と言い切れる状態で歳を取りたいんです」

50代からの逃げ切り戦略

佐藤さんが45歳から着手し、52歳の現在も継続している「住宅ローン×有価証券運用」という手法。

総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると、65歳以上の単身無職世帯の平均的な実収入は134,116円。対して支出は消費支出が149,286円、税金や保険料を含む非消費支出は12,647円で、合計161,933円。毎月27,817円の不足が発生しています。

この調査の支出データにおける「住居費」は持ち家を前提とした平均12,000円程度。賃貸住まいの単身者が現役時代の生活水準(月25〜30万円程度)を維持しようとすれば、年金だけでは毎月15万円以上の持ち出しが必要となります。

また、国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の『世帯将来推計』によれば、2050年の日本全体の単独世帯(ひとり暮らし世帯)は全世帯の約44.3%と予測されています。そのうち65歳以上の高齢者一人暮らし世帯数は約1,083万世帯に増え、全体の約20%前後を占める見込みです。

そんな「おひとり様」にとって、最大のリスクは長生きによる「資産の枯渇」。佐藤さんのように、50代という信用力が残る時期に無理のない範囲で住居資産を確保し、並行して長期分散の株式運用を行うことは、単身者の資産寿命を延ばす有効な選択肢のひとつです。

日本証券業協会の調査(2023年)でも、iDeCoやNISAを活用した長期的な資産形成は、将来に備える手段として幅広い世代で注目されています。そのうえで、立地や資金計画などの条件を満たす場合には、株式などの金融資産に加えて不動産からの家賃収入を組み合わせることで、インフレへの備えやキャッシュフローの分散につながる可能性があります。

「決断したのが45歳だったから、今の余裕があります」と語る佐藤さん。残された時間を最大限に活用する戦略は、先行きの見えない時代を生きる現役世代に、一つの明確な指針を示しています。

<資産形成ゴールドオンライン>
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