日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。
長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。
そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。
実にもったいないことだと思います。
では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。
医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。
*本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。
中高年の家庭に潜む危機
中高年は、家庭内にさまざまな問題が生じる時期でもあります。
家族がいてもいなくても、困難な状況を迎えますが、最近ではシングルの中高年も増えています。その場合のメリットとデメリットは次の通りです。
メリット
・自由。
・家族に煩わされることがない。
・時間とお金を自由に使える。
・住む場所や室内も自分の好きにできる。
デメリット
・孤独。
・喜びや悲しみを分かち合えない。
・病気や困ったときに頼る相手がいない。
・死ぬときに看取る人がいない。
中高年では身体が弱り、病気になる危険性も高いので、完全な独り暮らしは何かと不安になるでしょう。シングルでも頼れる友だちや身内がいれば、デメリットも軽減されます。
家族がいる場合は、まず夫婦間の関係が火種となります。
仲のいい夫婦は別として、愛情が冷め切っていたり、長年の不満が積もっていたり、さらに恨みにまで深まっていたりすると、いっしょに暮らすのが苦痛になり、熟年離婚に至ることもまれではありません。中高年では精神も疲れていますから、離婚協議でも寛容になれなかったり、決断がつかなかったり、折り合いがつけられなかったりして、不愉快な泥沼状態が続きます。
離婚が成立しても、待っているのはシングルの暮らしで、温かい家庭が作れるわけではありません。離婚にまでならなくても、長い倦怠期を迎えていると、会話も少なく、興味も別々で、喜びも悲しみも分かち合うなどという状況は、とても望めないということになります。
<現代新書>
中高年になると多くの人が「家庭内の危機」を迎える…いっぽうで「独身中高年」になったら、こんな「メリット」「デメリット」が