結婚に対する価値観が変化し、「一生、おひとり様」は増加の一途を辿っています。そこで不安になるのが老後。介護や孤独死などを考えると、老後の備えは万全にしておきたいところです。しかし「未婚男性に老後の備えは必要なし」という声も。みていきましょう。
増え続ける、高齢の独身男性…大卒の平均的なサラリーマンなら年金だけで生きていける
昨今、さまざまな価値観が大きく変わりました。結婚に対する価値観も、そのひとつかもしれません。2020年に行われた国勢調査によると、男性の生涯未婚率は28.25%、女性の生涯未婚率は17.25%。ここでいう未婚率は、50歳の時点で結婚歴がない人の割合。「50歳以降に初婚を迎える人はごくわずか」という傾向のもと、生涯未婚率と表現しています。婚姻数は2022年は、前年より微減となる50万組。戦後、婚姻数は1972年、109万組をピークに減少、1980年代後半から2000年にかけて増えるも、その後は減少の一途を辿っています。
未婚率の上昇にはさまざまな理由があるといわれています。昔は、「結婚したら立派な社会人」という価値観が強く、周囲からも強く結婚を勧められました。いまもその傾向はあるものの「結婚だけが人生じゃない」という考え方が広まり、“あえて結婚しない”という選択をする人も。もちろん「結婚したくてもできない」ということも社会問題になっていることも周知の事実です。
一生、結婚しないとされた、50歳の独身サラリーマン。大卒の場合、月収(所定内給与額)は50.6万円、賞与込みの年収は837.2万円。大企業(従業員1,000人以上規模)であれば、月収で57.1万円、年収で988.0万円にもなります。
これだけの収入があれば、自由気ままな独身生活を送っていることでしょう。結婚したら自由がなくなる、色々と面倒なことがつきまとう……あえて結婚しない人も多そうです。
ただし、自由気ままな独身生活の果てには、やはり身寄りのないことに対する不安も。いまどき60歳で定年を迎えた後、再雇用で65歳くらいまで働き年金生活に入る、というケースが多数派。収入が年金だけとなったときに、ちゃんと暮らしていけるのか……。
大学卒業以来、平均的な給与を手にし、65歳まで働くと仮定すると、65歳で手にする厚生年金は単純計算で11.5万円ほどとなり、国民年金は満額支給だとすると、1ヵ月で17万~18万円ほどが支給されます。手取りにすると、14.5万円~16万円ほど。ちょうど単身高齢者の1ヵ月の生活費を考えると、トントンになる水準です。
【65歳以上の単身男性の1ヵ月の生活費】
消費支出:148,918円
(内訳)
食料:40,938円
住居:14,242円
光熱・水道:14,748円
家具・家事用品:4,631円
被服及び履物:2,146円
保健医療:8,124円
交通・通信:19,409円
教養娯楽:16,287円
その他の消費支出:28,393円
出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)より
独身おじさんに「老後の備えは意味がない」というワケ
大卒で平均的な給与を手にしていたなら、年金だけで生活はできそう。しかし年を重ねていくうちに、「支援・介護が必要になっても、身近に頼る人がいない」「孤独死など、万が一のことが起きても、誰も気づいてくれない孤独死して誰にも気づいてもらえない」といった、介護や孤独死に対する不安が大きくなるでしょう。
そんな不安を解決する方法のひとつが、老人ホームへの入居。自立型老人ホームであれば、介護が必要のない高齢者が入居できる施設。食事などの生活支援サービスが受けられ、イメージとしては高齢者に限定したサービスアパートメント。見守りサービスがあれば、孤独死の心配もありません。
介護が必要になったら退去する必要がありますが、通常、連携する施設があり、連携もスムーズ。ネックになるのがコスト。入居金は0~数億円、月額費用は10万~40万円ほど。ほかの老人ホームに比べると高めではあるものの、単身者の老後の不安が解消できると考えると、安いものかもしれません。
そんな老後を見据えて、では50歳から資産形成を本格化しようとする、未婚の独身サラリーマン。しかし「そんなこと、無駄だからやめておけ」という外野の声が。
――だって、独り身だったら、そんなに長生きしないし
どういうことでしょう。厚生労働省『人口動態調査』(2021年)によると、男性の寿命の中央値は82歳。配偶関係でみていくと、配偶者ありは同じく82歳。一方で配偶者なしの未婚者は67歳と、圧倒的に若いのが特長です。つまり、「単身者の半数は67歳を前に死んでしまう」ということ。これでは、確かに「老後に備えなさい」という世の中の論調は、ただ悲しく聞こえてくるに違いありません。
――えっ、老後の備えって、私たちには無意味ということ!?
未婚男性の主な死因をみていくと、最も多いのが「悪性新生物」で23.1%。有配偶者の男性の死因トップも「悪性新生物」ですが、未婚男性よりも10ポイント以上も高くなっています。その要因として考えられるのが、有配偶者のほうが寿命が長いから。一般的に「悪性新生物」は高齢になるほど罹患率は上がり、必然的に「悪性新生物」で亡くなる人は増加するのです。一方で、未婚男性の死因で有配偶者よりも多いのが「自殺」。未婚男性の死因の6.8%を占め、有配偶者よりも5ポイント以上も高くなっています。自死に追い込まれる理由はさまざまですが、そんな状況に追い込まれる人が、未婚者のほうが多いというのは間違いのない事実です。
未婚男性の寿命の中央値は67歳。この数値を根拠に「老後の備えは無意味」というのはあまりに早計。未婚者の半数は67歳を超えて生きていくわけですから、備えなしで老後に突入はあまりに危険です。未婚者であっても、用意周到な老後の備え以外に、老後不安を解消する術はないといえるでしょう。
<資産形成ゴールドオンライン>
「老後の備えなんて無駄じゃん!」月収57万円・50歳の独身サラリーマンが「自暴自棄」になった理由