2023年1月20日に厚生労働省が公表した2023年度の年金額は、物価上昇を受けて3年ぶりの増額(約2%)となりました。
一生涯受け取れる公的年金は老後生活の柱ではありますが、年金財政の悪化による受給減が不安なところです。
老後を独身で過ごす場合、誰にも頼らずにすむだけの経済的な準備が必要です。早いうちから受け取る年金額や現在の家計支出から、老後の家計を想定して資金準備を始めましょう。
今回は最新データから年金の平均受給額と単身者の老後生活の収支を紹介します。
1.独身で老後を過ごす人をデータで見る
最近では、老後を1人で生活する人が増加傾向にあります。以下は内閣府の「令和4年版高齢社会白書」から、65歳以上人口に占める1人暮らしの人の割合の推移です。2030年と2040年のデータは推計値です。
【65歳以上人口に占める1人暮らしの人の割合】
男女ともに2000年から単身者の割合が大きく増え、将来的にも増えていくことが想定されます。
2040年の推計値では男性が全体の5分の1、女性は4分の1が1人暮らしになる見込みです。
また、同じく内閣府より公表された「令和4年版少子化社会対策白書」によると、50歳時の未婚割合も近年急上昇しています。
【50歳時の未婚割合の推移】
男女ともに50歳時点の未婚割合が増加していることがわかりますが、近年は特に女性の未婚割合の伸びが顕著です。
50歳時点で独身の人がその後もずっと1人とはかぎりません。しかし、一般的に50歳になるとキャリアや家族状況に一定の目処が立つと考えられます。
50歳時に独身で結婚の予定がない場合、1人暮らしの老後について対策を立てる必要があるでしょう。
2.65歳以降「厚生年金と国民年金」の平均受給額はいくら?
老後1人暮らしの資金について考える場合、生活の柱となる年金の受給額を見積もる必要があります。
厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、2021年の65歳以上の男女別の厚生年金(国民年金含む)の平均年金月額は以下のとおりです。
2.1 厚生年金(国民年金含む)の平均年金月額
男性:16万9006円
女性:10万9261円
※国民年金の金額を含む
女性の厚生年金の月額は男性より5万円以上少なく、計画的な老後対策が必要といえます。
また、2021年の国民年金の男女別の平均年金月額は以下のとおりです。
2.2 国民年金の平均年金月額
男性:5万9013円
女性:5万4346円
2022年度の国民年金の満額(保険料を480カ月支払った場合の年金額)は、6万4816円です。男女ともに実際の年金額は満額より少なくなっています。
いずれにしても国民年金だけで老後生活をまかなうのは難しいため、自営業・フリーランスなどはより万全な老後対策が必要です。
より具体的な金額を知るには、ねんきん定期便やねんきんネットを活用しましょう。
3.貯蓄はいくら必要?老後の生活費用
老後の年金収入に対して生活費はいくらかかるでしょうか。
総務省の2021年「家計調査(家計収支編)」によると、65歳以上の高齢単身無職世帯の消費支出の平均額は13万2476円、非消費支出は1万2271円です。消費支出とは食費や水道光熱費などで、非消費支出とは税金や社会保険料です。
この支出合計の14万4747円と年金収入の差額が、毎月の家計の赤字または黒字となります。
年金月額と毎月の支出の差額(収支月額)と赤字の場合の25年分をまとめると、以下のようになります。
【年金月額と毎月の支出の差額(収支月額)】
厚生年金をもらう男性の場合、生活するだけなら年金でまかなえそうです。
厚生年金をもらう女性、国民年金の男女は毎月年金だけでは大きな赤字が発生します。その不足分は最低限準備しておきたいところです。
毎月の支出には個人差があるので、人によっては赤字がより少ない人も多い人もいるでしょう。現在の生活費をベースに老後にどんな生活を送りたいかを考え、より現実的な支出を考えましょう。
また、この金額は生活費の不足分です。自宅のリフォームや高齢者施設の入居を予定している場合、その支出分も準備する必要があります。
3.1 介護施設に入る場合の費用は?
1人暮しの高齢者が要介護状態になった場合、施設で介護を受けることが多いでしょう。生命保険文化センターの調査によると、施設に入った場合の介護費用の平均は月額12万2000円です。
高齢者の介護施設には以下のような種類があります。
特別養護老人ホーム:要介護高齢者のための生活施設
養護老人ホーム:環境的、経済的に困窮した高齢者の施設
軽費老人ホーム:低所得高齢者のための住居
有料老人ホーム:高齢者のための住居
サービス付き高齢者向け住宅:高齢者のための住居
認知症高齢者グループホーム:認知症高齢者のための共同生活住居
民間の高齢者施設には自立している人を受け入れるタイプもあり、自分が受けたいサービスなどから施設を選ぶ必要があります。
老後に生活したい地域の施設を調べ、費用などを確認しておくとよいでしょう。
4.ひとりの老後が見えてきたら早めの準備を
老後を1人だけで過ごすつもりの人は、男女ともに年々増加しています。
健康なうちは気楽に過ごせる1人暮らしも、年齢を重ねるにしたがって孤独や健康面の不安が大きくなるかもしれません。その場合でもせめて経済面の不安がなければ、1人でも心強くいられるのではないでしょうか。
50歳以降に独身でその後も結婚の予定がない人は、ひとりの老後を見据えて経済的な準備を始めましょう。