独身の年金事情

2023年1月20日、厚生労働省より「2023年度の年金額の例」が公表されました。
こちらによると、夫婦2人分の標準的な厚生年金(国民年金を含む)は22万4482円です。
しかし、独身で老後を迎える方も少なくありません。夫婦2人分でなくとも、1人で20万円以上の厚生年金を受け取るためには、いくらの年収が必要なのでしょうか。
実際に受給している方の割合とともに見ていきましょう。

1. 2023年度「モデル夫婦」の年金は20万円以上に

厚生労働省は、1月20日に2023年度の年金額を公表しました。

出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」

国民年金(老齢基礎年金):6万6250円(1人分)
厚生年金:22万4482円(夫婦2人分※)
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

国民年金の満額は、6万4816円が6万6250円に増えることにより、1434円のプラスになります。
ただし、2023年度の既裁定者(68 歳以上の方)の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額 6万6050円(対前年度比+1234円)です。

また、厚生年金の金額は21万9593円から4889円増えます。
持ち家か賃貸かなどにもよりますが、「20万円以上」の年金収入があれば、ひとまず老後は安心に思える方がいるかもしれません。

では、1人で20万円以上の年金を受け取っている方はどれくらいいるのでしょうか。

2. 1人で20万円以上の厚生年金を受け取る割合(男女別)

厚生労働省が2022年12月に公表した「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給権者は男性で1082万8213人、女性で535万2232人でした。
このうち、20万円以上の厚生年金(国民年金を含む)を受給する割合を算出します。

出所:厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

2.1 厚生年金を月20万円以上受給する男性

厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金を20万円以上受給する男性の割合を確認します。
~1万円未満 7万366人
1万円以上~2万円未満:1万4136人
2万円以上~3万円未満:5875人
3万円以上~4万円未満:1万580人
4万円以上~5万円未満:3万1646人
5万円以上~6万円未満:7万694人
6万円以上~7万円未満:17万8892人
7万円以上~8万円未満:26万5042人
8万円以上~9万円未満:25万7224人
9万円以上~10万円未満:28万4196人
10万円以上~11万円未満:35万8936人
11万円以上~12万円未満:44万6960人
12万円以上~13万円未満:52万9551人
13万円以上~14万円未満:62万4724人
14万円以上~15万円未満:72万5289人
15万円以上~16万円未満:81万5769人
16万円以上~17万円未満:90万3637人
17万円以上~18万円未満:96万5471人
18万円以上~19万円未満:95万3315人
19万円以上~20万円未満:88万9人
20万円以上~21万円未満:75万1043人
21万円以上~22万円未満:57万7586人
22万円以上~23万円未満:39万8787人
23万円以上~24万円未満:26万7701人
24万円以上~25万円未満:17万8056人
25万円以上~26万円未満:11万2141人
26万円以上~27万円未満:6万7929人
27万円以上~28万円未満:3万9296人
28万円以上~29万円未満:1万9670人
29万円以上~30万円未満:9237人
30万円以上~:1万4455人
以上から、男性の場合、厚生年金を20万円以上受給しているのは22.5%であることがわかります。

2.2 厚生年金を月20万円以上受給する女性

続いて同資料より、女性も確認します。
~1万円未満 2万9276人
1万円以上~2万円未満:6963人
2万円以上~3万円未満:5万519人
3万円以上~4万円未満:8万9784人
4万円以上~5万円未満:7万9430人
5万円以上~6万円未満:9万3183人
6万円以上~7万円未満:23万7418人
7万円以上~8万円未満:44万2558人
8万円以上~9万円未満:68万666人
9万円以上~10万円未満:85万1331人
10万円以上~11万円未満:77万7047人
11万円以上~12万円未満:59万523人
12万円以上~13万円未満:41万5686人
13万円以上~14万円未満:29万4029人
14万円以上~15万円未満:21万3811人
15万円以上~16万円未満:15万5836人
16万円以上~17万円未満:11万2272人
17万円以上~18万円未満:7万6925人
18万円以上~19万円未満:5万2191人
19万円以上~20万円未満:3万7091人
20万円以上~21万円未満:2万4351人
21万円以上~22万円未満:1万6322人
22万円以上~23万円未満:1万444人
23万円以上~24万円未満:6549人
24万円以上~25万円未満:3719人
25万円以上~26万円未満:2081人
26万円以上~27万円未満:1047人
27万円以上~28万円未満:488人
28万円以上~29万円未満:196人
29万円以上~30万円未満:135人
30万円以上~:361人

女性に限定すると、厚生年金を20万円以上受給する人は1.23%だけのようです。
ここまで男女差が出るのは、厚生年金が現役時代の報酬や加入期間によって決まることに要因があります。
女性は結婚や出産、介護を機に離職することも多く、男性のように正社員として働き続けるのは難しいのが現状です。
そのため、年金の受給額にも影響が出たと考えられます。

3.独身でも厚生年金を20万円以上にするには年収いくら必要か

標準的な夫婦の場合、2023年度の2人分の年金額は22万4482円であると公表されました。
1人で20万円以上を受給する割合は、男性で22.5%、女性で1.23%とのことですが、いくらの年収があれば可能なのか見ていきましょう。
厚生年金の受給額は、次のように計算します。

出所:日本年金機構「令和4年度版 老齢年金ガイド」

2003年3月以前:平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
2003年4月以降:平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
加入した年代によって計算方法が変わるため、ここでは2003年4月以降、厚生年金に38年間(456月)加入したケースで計算します。

国民年金(老齢基礎年金)を満額として78万円もらうと仮定すると、厚生年金では13万5000円、年額162万円ということになります。
平均標準報酬額×5.481/1000×456=162万円
となるため、平均標準報酬額は約64万8000円となりました。

日本年金機構の「厚生年金保険料額表」によると、報酬月額63万5000円以上の方は、等級32である「標準報酬月額」65万円に該当します。
38年間の報酬月額が63万5000円以上(年収で762万円)であれば、厚生年金を月平均20万円見込めるということになります。
厚生年金の加入期間が長ければ、報酬の目安はもう少し引き下げられます。
ただし、厚生年金を算出する標準報酬月額には上限があるため、一定ラインを超えるとそれ以上が望めなくなります。

つまり、若いときから年収762万円近くを稼いでいないと、後からリカバリーするのは難しいということです。
厚生年金として月20万円以上を受給するのは、やはり簡単でないことがわかります。

4.収入が減る老後に向けた対策を

十分な厚生年金をもらえている方は、現役時代の年収が高かったということです。
誰にとっても、老後の収入は減るリスクが高いといえるでしょう。
老後に向けて、足りない分の資産を貯蓄として準備することや、働き続けるために健康維持に努めることなどが重要になります。
まずは年金目安額を知るために、ねんきんネットやねんきん定期便などを確認してみてはいかがでしょうか。

参考資料
厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
日本年金機構「厚生年金保険料額表」
日本年金機構「令和4年度版 老齢年金ガイド」
日本年金機構「令和4年度版 老齢年金ガイド」

<LIMO>
独身でも厚生年金を「月20万円以上」受け取りたい!年収はいくらが目安なのか

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です